「ゴリラ・コーヒー」創始者の新たな挑戦。 サードウェーブの先、SuperCrown Coffee Roasters
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「もう15年近くも昔のことなんですね…」
NYCで最初のサードウェーブコーヒーといえば「GORILLA COFFEE(ゴリラコーヒー)」。そういわれていることを、私は最近知った。ゴリラコーヒーの創業はなんと2002年。産声をあげたのは、当時、NYCで最もエコ意識の高い人たちが集まっていたブルックリンのパークスロープだった。
あれから約14年が経った2016年1月、ゴリラコーヒーの創始者Darleen Scherer(ダーレーン・シェーラー)が、新しいコーヒーブランドを立ち上げたと話題になっている。
噂のロースターの名は「SuperCrown Coffee Roasters(スーパークラウン・コーヒー・ロースターズ。以下、スーパークラウン」。聞けば、彼女は「ゴリラコーヒーは15年1月に去ったの」という。一体、新ブランドにどんな思いを込めているのだろうか。

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毎週、違う味。コーヒーだって「旬のものを、旬の時期に」  
 彼女は、ゴリラコーヒーを去った理由について「私がこれからやっていきたいこと、とゴリラコーヒーの方向性が違ったから」と話す。

 新ロースター「スーパークラウン」は、 “From Been to Cup”と呼ばれる、生産から一杯のコーヒーになるまでのすべての工程で品質管理を行うというプロセスの透明性を価値とする「ロースターで、カフェで、リテールショップ」。形態だけ聞いていると、ゴリラコーヒーととの違いが見えてこないが、具体的にどう異なるのだろうか。

「ここは、カフェである前に、焙煎所。毎週、違った豆で、違った美味しいさを提供するロースターです」。週替わりランチならぬ、週替わりコーヒーを提供してくれるのだという。彼女をはじめとする、コーヒーの目利きによって選び抜かれた旬の豆を、煎りたて、挽きたてのベストコンディションで、年間で52種類を届ける「定期購買サービス」にも注力しているそうだ。家飲み派のニーズを汲み取った同サービスは、早くも注目を集めている。

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“ストーリー”と共に味わうコーヒー

「コーヒーも農作物や魚と同じで、旬の時期があります。言い方をかえれば、1年中いつでも収穫できるものではありません」

 たとえば、リンゴも、単に「サンふじ」が好きと言っても山梨と青森では、食べごろ・収穫時期がそれぞれ異なる。
「貯蔵している間にも、味は微妙に変わります。ですので、旬の時期に収穫できるものを、ベストコンディションで届ける、というのが我々のミッションです」。あくまでもコーヒー豆を最良の状態で顧客に届けることにこだわり、より多くの種類の、より良い体験を追い求め、提供することに価値を見いだしているのだという。

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 また、産地や生産者のこと、焙煎や淹れ方のこと…、「人間と同じように、コーヒーにも十人十色の味とストーリーがあり、どれも違ってどれも良い」とダーリーン。消費者だけでなく、生産者、焙煎所、バリスタと、世界中のコーヒー偏差値が上がっている今、「知られなていないのが、もったいない豆が沢山ある!」。そんな中「この豆が一番!」と盲信するのも、自然の産物に年中安定の供給を求めるのも「理にかなわないと思うの」。

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手淹れではなく、機械で淹れる

 もう一点、スーパークラウンの特徴として特筆すべきは「テクノロジー」である。従来の「こだわりのコーヒー」が意味するものに含まれていた「ゆっくり手淹れするプアオーバー」は、最新のドリップマシーン「Poursteady」で対応。

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水の量、スピードなどを豆に合わせて設定できる。

 かつて、Blue Bottle Coffeeの創業者が、日本で飲んだ手淹れのコーヒーに「茶道のようで、なんてセレモニアス(儀式、作法的)なんだ!」と衝撃を受け、あのゆっくりお湯を注ぐスタイルをシグネチャーにしたという逸話もあり、サードウェーブ界では「手淹れ」か「フレンチプレス」かの二大政党が勢力を握っている感があったが、スーパークラウンは、なんともあっさり「うちは最新機械で淹れます」宣言。

 目的はなんといっても「正確、ブレがないから」。これより「バリスタによって、味が違う」という一喜一憂はなく「毎回、最高のクオリティを均一に提供できます」とダーリーン。人の手による高品質のクラフトコーヒーを、最新の機械を駆使していかに効率良く提供するかを追求する彼女の姿勢。それは、クラフトマンシップとテクノロジーのバランス型とも言えるだろう。

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 米国では数年前から、「うちは、スタンプタウン一筋」などと、限られたブランドからのみ豆を仕入れるのではなく、いくつかのロースターから仕入れて、消費者に選択してもらうスタイル、Multiroaster Model(マルチロースター・モデル)のカフェが増えている。
 日替わりランチのように、月曜日はカウンターカルチャーの〇〇、水曜日はヴァーヴの△△、金曜日はスタンプタウンの××、日曜日は地元ロースターのコロンビア豆…、顧客が消費者が生産者と焙煎者を選らび、経験と知識豊かなバリスタにコーヒーを注文できるモデル。スーパークラウンは、この「消費者重視」の流れを汲みつつ、ロースターとしてできる新たな可能性へ挑戦するべく誕生した。ニューヨークのサードウェーブを切り開いてきたダーレーンの、新たな道を切り開く新たな挑戦に、期待が高まる。

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Photos by Kohei Kawashima, Tetora Poe
Text by Chiyo Yamauchi

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