ウォーホルを撃った女、ヴァレリー・ソラナス。MeToo時代に再訪する“過激派フェミニスト”の知らない側面

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今回紹介する展覧会はスウェーデン・マルメーにあるシグナル現代美術センターで開催中の『Our friend, Valerie Solanas』。現代アーティストであるエレン・カンター、キアラ・フマイ、アコーディオン奏者ポーリン・オリヴェロス、映像作家キャロル・ルソプロスに女優デルフィーヌ・セイリグという、さまざまな分野にまたがったアーティストたちが集まった理由はたった一つ、それはヴァレリー・ソラナス。世界で最も過激・急進派フェミニストといわれ、ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルを銃撃したことでその名を知らしめた彼女。「男性根絶協会」を自ら立ち上げ、どうやって男性性を世界から完全に排除するかを述べたマニフェストを作ったことから、『I SHOT ANDY WARHOL』という彼女の人生を描いた映画まで作られている。ただそのエキセントリックで過激な人生ばかりが注目され、ヴァレリーの女性としての強さと脆弱さ、政治学や美学など知られていないことはまだまだ多い。

たとえば、展覧会を構成するアーティストの一人、ポーリン・オリヴェロスはこう語る。「1960年代、ヴァレリーはアンディ・ウォーホルの命を奪おうと試み、かたやマリリン・モンローは自らの命を絶った。共に同じ時代を生きたこの二人の女性は不平等の罠にずっと囚われていたのだ。マリリンは女優としての才能を認めてほしかっただけで、ヴァレリーも彼女自身のクリエイティブな活動の支援を望んでいただけ。にも関わらず、世間はマリリンのことだけを認識し、ヴァレリーのことは誰も目に止めず、マニフェストを真剣に汲みとる人はいなかった」。オリヴェロスはそんな二人に思いを馳せてつくったインスタレーション作品、『To Valerie Solanas and Marilyn Monroe in Recognition of Their Desperation(絶望を認めたヴァレリー・ソラナスとマリリン・モンローへ)』を今回展示している。「#MeToo」から女性の人権運動が世界的に高まっているいまだからこそ、ヴァレリーの人生そのものやマニフェストの再解釈をしてみると、また違った側面が見えてくるかもしれない。



Installationsvy/installation view. Foto/Photo: Lotten Pålsson

Chiara Fumai, Chiara Fumai reads Valerie Solanas, 2013. Foto/Photo: Lotten Pålsson

Chiara Fumai, The Book of Evil Spirits, 2015. Foto/Photo: Lotten Pålsson

Installationsvy/installation view. Foto/Photo: Lotten Pålsson

Untitled (From Within a Budding Grove), 2008. Courtesy the Estate of Ellen Cantor and Galerie Isabella Bortolozzi, Berlin.

Untitled (From Within a Budding Grove), 2008. Courtesy the Estate of Ellen Cantor and Galerie Isabella Bortolozzi, Berlin.


Ellen Cantor, Chapter 1: Manuelo (the clown boy) from Circus Lives from Hell, 2004. Foto/Photo: Lotten Pålsson

Pauline Oliveros, To Valerie Solanas And Marilyn Monroe In Recognition Of Their Desperation, 1970. Foto/Photo: Lotten Pålsson

Pauline Oliveros, To Valerie Solanas And Marilyn Monroe In Recognition Of Their Desperation, 1970. Foto/Photo: Lotten Pålsson

Carole Roussopoulos & Delphine Seyrig, S.C.U.M. Manifesto 1967, 1976. Foto/Photo: Lotten Pålsson

Text by Haruka Shibata
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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