南ア、ベッドの上で作られた音楽が世界へ。自己表現の「ゴム音楽」とそのシーンを現地で探る2
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いま、南アフリカの音楽シーンが興味深い。いま注目すべきは、黒人専用の居住区から生まれて世界に広まりつつあるゴム音楽(▶︎前編はココから)。そのシーンを中心に、南アフリカの現在の音楽シーンを聞く。

話してくれたのは、音楽発祥のダーバンで音楽フェスティバル/国際音楽カンファレンス「KZN Music IMbizo(ミュージック・インビゾ)」をオーガナイズするSiphephelo Mbhele(シペペロ・ンベレ)と、そして、プロデューサーのDJ Nkoh (DJ・ンコー)、どちらも南アフリカの音楽シーンをよく知る人物だ。

Gqom 1 - pic by Thanda Kunene
Thanda Kunene/Courtesy of Imbizo festival

まず自己紹介をお願いします。

Siphephelo Mbhele(以下、S): 僕は、南アフリカのダーバンという都市で「KZN Music Imbizo」という音楽フェスティバルをオーガナイズしているよ。今年(2017)で9回目。
世界中から音楽関係者が集まり、音楽や映画を発表したり、音楽機器のデモンストレーションをしたり、意見交換会をしたり、プロデューサーの研究室があったり。様々な可能性を試しているんだ。

DJ Nkoh(以下、N):僕は、ダーバン出身のハウス・ミュージック・プロデューサー。ゴム音楽を早くから作りはじめて、2010年にはゲットーラフからゴム音楽のアルバム「Dj Nkoh- flying high」をリリース、13年には、3ステップ・ゴム音楽のプロデューサーの一人になった(当時は4ステップが主流だったが、いまではミックスされている)。

音楽イベントは、いわば南アフリカ版SXSWみたいなものですね。その南アフリカで、いまもっぱらの話題はゴム(Gqom)ですが。

S:ゴムは、ダーバンで生まれた音楽のジャンルで、ハウス・ミュージックにブロークン・ビートやカットされたボーカル、チャンティングが入っている。ハイテンポで、大体はベースラインがなくて。DIYで低予算のストリートサウンド、何にも似ていないパターンで作られた、騒々しいトライバル音楽のコレクション。ベースキック(ダフ音)音からもきている。

N:ゴム音楽は、新しいジャンルだね。音楽マーケットでは、「ハウスミュージック、激しい打撃音の音楽」と紹介されている。ドラム・アンド・ベースからきていると僕は思うけど。
ゴムは、ダーバンで2000年代初期にはじまったけど、DJにはほとんど認識されてなかったし、低級クラスの音楽だといって尊重もされていなかった。ゴム音楽をクラブでかけるDJは少なかったね、彼らはディープハウスや商業的なハウスばかりかけていた。ゴムは、タウンシップのタバーンとシェビーン(タウンシップにあるバーやパブ)でのみ愛されてたんだ。
その後、タバーンでプレイしていたDJたちによって、徐々にクラブに紹介された。2010年ぐらいからシーンは急成長し、2014~16年辺りに爆発した。

Gqom 4 - pic by Thanda Kunene
Thanda Kunene/Courtesy of Imbizo festival

ゴムは、何から影響されてスタートしたのでしょう。

S:主にテクノロジーに帰する。ほとんどのゴム音楽は、プロダクションを学んだ若者たちの深いループでできている。ソフトウェアへのアクセス権を通して、ファイルを共有するウェブサイトはスパークしてて。たくさんの人が自分で音楽を作れると信じている。

もう一つの重要な要因は、ダーバンの人はダンスが好きなこと。いろんなダンス音楽を見つけたかったら、ダーバンは完璧な所だよ。
ヨハネスバーグは、クワイト(アフリカの音とサンプリングを組み込んだハウスミュージック)音楽を90年代から2000年中盤にもたらしたんだけど、クワイト音楽が飽きられた頃、今度はダーバンがその音楽を復活させた。そして、「ダーバン・クワイト」と呼ばれたものが非常に商業的になっていく。誰もが作っていたものになったから「じゃあもっと別の音楽を」ってことで、タウンシップから成長してきた。それがゴム音楽。ほとんどの初期のゴム音楽は、主にエクスタシー(ドラッグ)についてで、タウンシップから出た町の薄汚い所でプレイされ、ミニバス・タクシーによっても広められていった。

N:ゴム音楽の影響は、ドラム・アンド・ベースやラウドな音楽が好きな(ディープハウスなどのソフト音楽を好まない)、タバーンのアンダーグラウンドなDJたちからはじまった。彼らがラウドな音楽をプレイし、徐々にクラブシーンに紹介されていった。でも、こういう音楽(タウンシップ・タバーン)を低級クラスの音楽だと嫌うクラブもあった。それがいまでは市民権を得て大人気になっている。

ゴムとクワイトの共通点は? どちらも南アフリカの音楽スタイルですよね。

S:そうだね。クワイトが出てきたときのように、最初ゴムにも悪い印象がついていた。ゴムも、クワイトのように“タウンシップキッズの実験で音楽遊び”だったし、流通は存在しなかった。今年、このへんは変わると思うけど。
すべての動きは、洋服、タウンシップのスラング、ダンス、そして主に楽しい時間(歌詞はたいていエクスタシーを含む)に関してで、ゴムは自己表現の必要性から出てきたんだ。

N:ゴムとクワイトは、どちらも南アフリカをルーツにしているし、似た所がある。昔のクワイトは、ミッドテンポで、2007、8年ぐらいには、ヨハネスバーグ・クワイトとダーバン・クワイトで境界があり、ダーバンクワイトがダンスフロアを占領していた。

ほとんどの人は、4ステップ・キック・ドラム・ゴムが好きだったから、3ステップ・ドラムを理解しなかったけど、同じ音とテンポを使うので、ゴムとクワイトは、同じグループに分類される。いまでは、ヒップホップとゴムをミックスした、トラップ・ゴムというのもある。

ゴムはどのように広まって行ったのでしょうか。

S:ゴムは、何人かのプロデューサー/ビートメイカーが、大きなレコードレーベルにサインしてから少しずつ評判を得てきた。もともとは、ミックス、マスターされてない、リッチなループをベッドルームで作ってた輩の音楽が、だよ。
レーベルのAfrotainment(アフロティンメント)を通して、何年もかけて全国に知れわたった曲も少しはあったかな。
そして2016年、この国の一番のヒット曲は、ゴムの『Wololo(ウォロロ)』だった。環境は変わり、ゴム音楽プロデューサーはベッドルームから抜け出し、いまでは、合唱音楽(聖歌隊)やヒップホップや他とコラボレーションしているよ。

N:商業的なDJは、クリーンなソフト音楽やディープハウスを好むので、ゴムを得意とするDJたちは、アンダーグラウンドのタウンシップのプロデューサーになる。彼らは、ハウスパーティやクラブでかける、新しいゴム音楽を作るのに忙しくしてるよ。

Gqom 5 - pic by Thanda Kunene
Thanda Kunene/Courtesy of Imbizo festival

少し前に話題になった、シャンガーン・エレクトロとは関係ないのですか?

S:南アフリカのタウンシップ(Soweto、ソウェト)で生まれたシャンガーン・エレクトロは、独自の発展を遂げたダンス音楽のスタイルで、地元のフォーク伝統を再現しているんだ。速いテンポで、ハードに、ハイパーに、電子的なニューウェーブ。パフォーマーは、コスチュームやマスクを被ったりすることもある。プロデューサーのNozinja(ノズィンジャ)によって世界的に広められたけど、ゴムとは直接関係していない。どちらも新しい動きだけどね。

ゴムDJの中で、南アフリカ以外の、海外でプレイした人はいますか?

S:DJ LAGは、海外でもたくさんプレイし評価を得ている。このDJ LAGとThe RudeBoyz(ルード・ボーイズ)にくわえてもう数人が、この4月にニューヨークでプレイするよ。レッドブルに呼ばれているんだ。
Spoek Mathambo(スポック・マサンボ)も、音楽を海外に広めるのに重要な役割を果たしている。僕は過去2年ぐらい、アフリカ中を旅をしたんだけど、南アフリカの音楽はいつも取りあげられていて、エチオピアからモロッコまで、ゴムはいつもそのプレイリストに入っていた。

ゴムでは、どのDJに注目すればいいですか? アップデートされたプレイリストがあれば教えてください。

S:チェックした方がいいDJは、Dj LAG、Dj Nkoh、Babes Wodumo (singer Wololo)、Madanone、RudeBoyz、Distruction Boyz (producers Wololo)、Sainty Baby、Nokzen、ManiqueSoul、といったところかな。

これから、ゴムはどうなっていくでしょうか。世界中から新しいトラックが出てくるのでしょうか。

S:プロダクションの質は向上し、バトルも実験的なレベルで向上する。アフリカ中がそうなるのが見えるし、新しいダンスがともなうだろうね。この動きには、たくさんの可能性があるし、メインストリームのディストリビューションを通して、簡単に世界中に広まるだろうと思うよ。

N:ゴムは止めらないジャンル。数年でダンスフロアをリードするだろう。すでに、特に新しい世代は古いクワイト音楽は退屈だと思っているから、クワイトはそのうち廃れていくだろうね。ゴムはすでに海外でも知られているし、みんな期待しているんじゃないかな。

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Photos by Thanda Kunene/Courtesy of Imbizo festival
Interview by Trond Tornes, Yoko Sawai
Translation and Text by Yoko Sawai

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