すでに米国の半数以上の州がマリファナを合法化し、さまざまスタートアップが登場し盛り上がるグリーンなビジネスシーン。アプリだプラットフォームだと現代人にフィットしたプロダクトが雨後の筍のごとく生まれるなかで、もう一つ、昔ながらのアナログなマリファナ・シーンも盛りかえしつつあるらしい。そのひとつが、マリファナの郵送だ。
郵便局で10トン押収されたマリファナ
2007年から2009年でマリファナの郵送が増加、USPS※で10トン以上のマリファナが押収された年もあるほど。マリファナ合法化が進んだ13〜15年にかけて落ち着いていたが、なぜか昨年2016年、再び伸びていた。
※USPS(北米の郵便局、アメリカ合衆国郵便公社)
それについてはっきりと状況説明できる理由はいまだないらしいが、「あらゆる州でマリファナが合法になり(医療用が28州、娯楽用が8州)、またビジネスシーンの盛り上がりによって質のいいマリファナにアクセスしやすくなった。そんななかでまだ合法でない州があるのだから、自分の州から送ってあげよう、と郵送を考えつく人間が増えたとしてもおかしくない」とUSPS※の検査官はコメントしている。
マリファナを送るのは違法だ。合法な州間でも州内でも、だ。これは、連邦法でマリファナを含むドラッグの郵送が禁止されていることに起因している。
合法化で認識ゆるむ?
検査官のコメントも釈然とせず、気になったのでマリファナに関する掲示板のスレッドなどを見てみた。
すると「息子に送ってあげようと思って」「超フレッシュだから友だちの誕生日に!」など、マリファナ郵送にはだいぶフランクな動機が並んでいるではないか。また、近年では、空港などの持ち物検査で「うっかりポケットにマリファナ入れっぱなしだった」ため、止められることもしばしばあるらしい。
このあたりから考えられるのは、こういった合法化によるマリファナの日常への浸透に後押しされ、これまでは、他州に送ってあげよう(こっそり)だったものが、「送ってあげよう(大丈夫でしょ)」という認識下で行う人が増えてきたのではないか? ということだ。合法の州だし、もしバレてもそこまで罪に問われないっしょ、と。あくまでも予測だが。
ところで、なんでわざわざUSPSなのか、というのが疑問だ。USPSはFBI管轄なので検査が厳しく、また見つかれば言わずもがな罪に問われる…。民間企業の方がゆるそうではないか。これについても調べてみると興味深い(?)理由があることが判明した。それは…
「FedExやDHCなど民間企業のサービスは使わずUSPSを使え。従業員が開けて盗むからな!」ということらしい。掲示板にもこのアドバイスは非常に多かった。驚くことに、特にフェデックスでは「マリファナの入ったパッケージを勝手に開けられて盗まれた」という報告が非常に多いんだそう。盗まれたところで訴えることもできないし…と泣き寝入り。
フェデックスなど民間企業の宅配サービスでは、従業員それぞれの判断パッケージを開けて調べることを許されている。その一方で、USPSは従業員が検査の認証なしに勝手に開けることができない。そのため、「せっかくのマリファナを盗まれる心配がない」という面では安心なんだと。
ところで、もしも捕まった場合の罪は? というと、連邦刑務所での1年の刑期、もしくは罰金25万ドル(約2750万円)までになることも。なんとなく軽い気持ちで送ってそんなに大金を払うはめになったらやり切れない。フェデックスでは間違っても送るなよ、というアドバイスの前に、合法の州でもダメだという認識をしっかりと広めた方がいいんじゃ…?と、筆者は思う。
さて、この郵送を利用してマリファナビジネスをしている人間がいると友人の友人から聞いたので、話を聞いてみようと思う。待て、次回(ちょっといつになるかはわかりませんが)!
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Text by Nonki Kawashima