街を走行するものはコミュニケーションせよ。車と車、車と人を繋ぐ〈コネクテッドカー〉が目指す“事故ゼロのシティ”

車と車、車と歩行者がコミュニケーション。テクノロジーで繋がる〈コネクテッドカー〉で、街の安全を守る実験が開始された。
Share
Tweet

ニューヨークで歩行者を殺すのなんて朝飯前(It’s Too Easy to Kill Pedestrians in New York City)とは、数年前に地元週刊紙の一面を飾った衝撃のヘッドラインだ。そんな大袈裟な、と思うなかれ。米国全体では、交通事故死者数のうち13パーセントが歩行者なのに対し、ニューヨークでは52パーセントを超えていたという恐怖の事実があるのだから。

 ニューヨーク市が長年抱えてきた深刻な交通事故問題に歯止めをかけるべく、市長は2024年までに交通事故死者数ゼロを目指す「ビジョン・ゼロ」プログラムに着手している。昨年の交通事故死者数は、集計を開始した1910年以来の過去最小にとどまった。
 さらに同プロジェクトを加速させるべく、ニューヨーク市運輸局は昨年夏より新たな取り組みを開始。「NYCコネクテッドビークル・プロジェクト」、他の車や信号機とセンサー交信できる「コネクテッドカー」を利用したもので、市をあげてコネクテッドカーの導入を開始した。

「そもそも、コネクテッドカーってなに?」。通信システムを搭載してある車のことで、簡単にいうと「インターネットに繋がる車」。搭載されたセンサーなどの機器が、周囲の状況などさまざまな情報をキャッチし分析。車両の情報管理や運行管理などを通して、交通事故や渋滞の軽減を図る。

「コネクテッドカーって、前からあるよね?」。はい、おっしゃる通り。メルセデス・ベンツは、24時間の緊急通報または故障通報サービスを提供する「メルセデス・ミー・コネクト」を展開しているし、トヨタは歩行者とサイクリストの検知や、自動ブレーキを備える新型車を昨年発表、同社の“初代コネクテッドカー”として販売している。このようにコネクテッドカー自体は決して目新しくないのだが、人や車両がぎゅうぎゅう詰めの大都会の道路をプラットフォームに、市政主導の大規模な試運転プロジェクトが展開されるという部分が先進的なのだ(ニューヨーク州はコネテッドカーを行政ぐるみでテストすることを政府から許可された全米でも数少ない州のひとつ。他には、オハイオ州とコロラド州がある)。


(出典:NYC Connected Vehicle Project Official Website

 現在、ニューヨークの道には試作の機器を搭載した70台が走行中。「今年中に300ヶ所以上の交差点に、コネクテッドカーと通信する機器を設置予定。また、イエローキャブ6,000台、市営バス1,000台以上、市の清掃車500台、UPS(米国貨物運送会社)のトラック400台など、最大8,000台にこの機器を搭載する予定です」

 一気に規模化する計画の同プロジェクト、導入される通信機器は、約305メートル内であれば他機器との交信が可能で、他の車の動きを認知し通知してくれる。また、渋滞、事故、道路状況に応じて目標速度を推奨したり、走行車の車間速度を調整してくれる機能も導入。安全性だけでなく、交通渋滞の向上も目指すという優秀っぷりである。テクノロジーにより車同士が繋がり互いに“会話”しながら、街の車や市民の安全のために走る。

 将来的には、車同士のコミュニケーションだけでなく、信号機などを介して車と歩行者のコミュニケーションも可能にする目論見もある。歩行者の存在を車に知らせる機能を開発するほか、歩行者もスマホなどを介して、車と“会話”ができるらしい(詳細はまだ未定)。さらに、横断歩道を渡る視覚障害者をサポートするアプリも開発中だ。試験的に100人の視覚障害者にダウンロードしてもらい、横断歩道をより安全に渡ることができるかどうかを検証する。“繋がる”を意味するコネクテッド。テクノロジーを駆使した次世代の車は、街を移動するあらゆる人と繋がり、それぞれが“事故を回避し合う未来”へと繋ごうと加速する。

※※※
表記ではなく社会そのものをアップデートする必要があるという認識のもと、障害という表記を文中で使用しています。
また、障害とは一定の個人に由来するのではなく、あらゆる個人が存在し共存しようとする“社会”にあり、それをあらゆる個人らが歩み寄り変えていく必要がある、という考えを弊誌は持ちます。

—————
Eye Catch Illustration by Anna Sasaki
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

Share
Tweet
default
 
 
 
 
 

Latest

「可視化されていない時代の感覚を、僕らはどう言語化していくか」トライ&エラーを協働する企業と編集者、ソニー×若林恵

「そもそもね、僕らに“伝えたいことがあってはじめた”、というわけではないんですよ」。 企業の伝えたいことを、より魅力的に言語化して届けるために〈企業と編集者〉が組むことは、近年の常套。その関わり方を大きく飛び越えて「何が…
All articles loaded
No more articles to load