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  • Aug 27, 2016
米国の若きムスリムから目が離せない。親世代から一転、彼らが見つけた「ミップスター」という生き方
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ミレニアルズといえばそのライフスタイルにおける「親世代との大きなギャップ」。
伝統を重んじ敬虔なムスリム(イスラム教徒)たちもその例外ではなかった。
3年前、2013年のとあるバズ動画で賛否両論を浴びて以来、注目され続けているのは米国に生きるイスラム系のミレニアルズたち。
たった一世代の隔たりでムスリムの生き方は大きく変わっている。

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いつまで「ヒジャブ=遅れてる」と思ってるの?

 昨今何かとアツい「ムスリム」。特にファッション、昨年はドルチェ&ガッバーナがムスリム女性のためのヒジャブコレクションを発表、ユニクロがモデスト・ファッションラインを東南アジアから欧米まで展開を広げたのも記憶に新しい。

ヒジャブ:ムスリム女性たちの頭を覆う布のこと。

 その動きよりも少しばかり早く自分らで「ムスリム表現」をはじめていた若きコミュニティ、Mipsterz(ミップスター)。Muslim(ムスリム)でありHipster(ヒップスター)の自身をそう表したミレニアルズからはじまった。2012年のこと。

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MuslimとHipsterでMipsterz

 3年前のとあるビデオとは、ヒジャブを纏うムスリム女子たちがスケボーを乗り回し足を大胆に組んでアイスクリームを食べる「え、これリアルなムスリムの女の子たち?」なシーン中心に撮られた『Somewhere in America(サムウェア・イン・アメリカ)』。公開と同時にバズった。日本でもウェブで紹介された記事がいくつか出ていたので知っている人も少なくないだろう。

 
「ビデオに出てる人はみんな正真正銘のムスリム女子たちだよ。そろそろ、ムスリム女子=ヒジャブ被ってる=遅れてるって考えは、僕らの世代から変わってもよくない?」

 ミップスターってそもそも何? アメリカの若きムスリムたちはどう変わってきているの? 
ミップスターのファウンダーであり、話題になったビデオのディレクターも務めたAbbas Rattani(アバス・ラター二)と、女性のミップスター、Mariam Dwedar(マリアム・ドウェダー)の二人が今回、ミップスターを代表して疑問に答えてくれた。

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Abbas Rattani
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Mariam Dwedar

HEAPS(以下、H):そもそも、ミップスターってなんなんでしょう? おしゃれなファション・ピーポーというような取り上げられ方も日本ではありますが。

Mipsterz(以下、M):ミップスターは何にでもなれる。アイデンティティであり、コミュニティであり一つのアイデアであり文化であり。ファッションスタイルであることも間違いないね。

M:うん。ただ、コミュニティだけど実際に集まって定期的に何かしているわけじゃないの。

H:というと、オンラインコミュニティ、という感じ?

M:うーん、そうなんだけど、何ていうか「ミップスターという生き方がある」、つまりムスリムだけどクールな生き方ができる、そして自分にもそれができると考えている人はミップスターで、全員がそれに属していると言えるという…。

H:コミュニティというよりはなんだか人種のようにも捉えられますね。

M:そうかも。そんなに仰々しいものではないんだけどね(笑)。新しい生き方として、そういった多くの人が存在する、だからコミュニティと呼べるって感じかな。

H:じゃあ自分で「俺・私はミップスター!」と思っていれば誰もがそのコミュニティに属していると言える、ということでいいんでしょうか?

M:イエス。でも、自分のこと「ミップスターです!」と聞かれてもいないのに言うのはちょっとアレだけど。

H:なぜ?

M:Hipster(ヒップスター)ルールその1、「ヒップスターは自分のことをヒップスターと言わない」。

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H:なるほど(笑)。ミップスターであるための大前提としてムスリム、つまりイスラム教徒であるというのは必要ですよね?

M:いいや。それもない。たとえばアジア人の、そうだな日本人が自分をミップスターだと思ったらミップスターだよ。ムスリム・ファッションに憧れてヒジャブをおしゃれに取り入れて「ミップスター」といえばミップスター。本当に、誰でもなれるんだ。

H:ムスリムでなくてもいいとは驚きました。じゃあ現時点でコミュニティの規模は、という次に用意していた質問は不要ですね。

M:そうだね(笑)。僕らの認識していないところにも間違いなくいるってことだからね。

H:ここまでの広がりを見せたきっかけは2013年の11月に公開された「Somewhere in Amrica」ですよね。超バズった。あらゆるメディアに取り上げられ、ニュースでも生中継討論が勃発したり。とにかく注目されました。

M:まさかあんなにバズるとは思わなかったよ。だって、僕がこれまで公開してきた動画って全然、ダメだったから(笑)

H:しかし、というかあれだけバズったのもありますし宗教も絡みセンシティブなトピックですし。当たり前ですが、賛否両論。ネガティブな意見も相当あった。

M:イエス。

H:どんな批判が多かったでしょうか?

M:「宗教・文化を売り物にしている」という意見は多かった。あとは何の意図もなくただ作った動画、曲がダメ、とか。いろいろ。

H:いくつかコメント読みました。特に少し上の世代からは「伝統と敬虔な文化が消費される恐れもある」、と。それについてはどう思う?

M:その意見はしっかり受け止めているよ。ただ、僕らの世代感なのかな、そうやって大衆に消費される=認知される、そこで初めて僕らのイスラム圏のカルチャーが市民権を取れるという考え方もできるんだ。

M:未だにヒジャブを被っている=遅れているという考えが世間にあるもの。米国生まれ・米国育ちなのにヒジャブをしているだけで「英語がしゃべれない」と思い込まれたり。被るだけで話しかけてくる人が減る。

M:ヒジャブをかぶっていても、当たり前だけど僕らの人種にも高学歴な女性、所得の高い女性がいる。でも、世間からはそうは見えないんだよね。ヒジャブを被っていたら自動的に、閉鎖的で遅れていると思い込む。僕らの世代で、もうそういうのはそろそろなくなってもいいんじゃない? と思うよ。

H:一昨年ノーベル平和賞を受賞したマララさんもヒジャブを被っていますよね。

M:そうそう。しかも彼女はパキスタンだから別にヒジャブをかぶらなくてもいいんだ。彼女のチョイスなんだよ。

H:米国でも、自分のチョイスでヒジャブを被らない女性も少なくないですもんね。

M:そうなのよ。ヒジャブを被っているのが女性たちのチョイスだって思わない人もまだまだ多い。

H:先ほど「消費されてもいい」ということでしたが、ということは昨今のモデスト・ファッションにも肯定的?
「伝統的な文化がファッションとして消費される」という意見・懸念もあるかな、と。

M:もちろんそう懸念する人もいるわね。でも、全然いいと思う。ムスリムじゃない人たちがおしゃれだから!ってヒジャブしてもいいと思う。それは嬉しい。

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H:米国に移民してきた二人の親世代とは、やっぱり全然違いますか。

M:違う。米国の最初のムスリム移民である親世代は、肩身が狭く生きづらかったと思う。私がまだ学生だった数年前ですら違うわよ。9.11のあとは特にひどかった。街を歩くだけで暴言を吐かれて、後ろ指を刺された。その頃はまだヒジャブを被っていたし。言われのない批判は日常茶飯事だった。

H:だからこそ、この世代で変わるのはすごいと思います。だってまだ、第一子孫の世代じゃないですか。

米国のムスリム・アメリカンの総人口はおおよそ250万人(Pew Research Center調べ)。そしてその63パーセントが、77ヶ国から移民してきたイスラム系の最初の子孫たち。他の人種に比べると人口の平均年齢が圧倒的に低い。

M:やっぱり、インターネットの力はすごいよ。僕らがいろんな同世代のムスリムと繋がれているのは、ネットのおかげだもん。ビデオに出てくれたのもみんな友人繋がりで、ニューヨークとロスで撮影したんだけど西から東までまたいでの人集めだったけどまったく苦労しなかった。

M:次の子どもたちの世代は、もっとよくなると思う。小学生の頃ってネットって主流ではなかった。だから、自宅で使用して外の世界と繋がるというのはなかった、Facebookだってなかったしね。
アメリカの郊外で育つムスリムって、「学校でたった一人のムスリム」ということも少なくないの。だから、なかなか溶け込めなかったり自分のアイデンティティに誇りを持てなかったり、辛くなってしまったり。
次の世代の子どもたちはそんなことない。ネットで「自分のようなムスリムが米国にたくさんいるんだ」ってことを知ることができる。

M:最近は、僕らのちょっと上の、たとえば小・中学生の息子・娘のいるムスリムの人からもコメントをもらうようになったんだ。
「ミップスターのおかげで、息子が自分のことを『ムスリム・アメリカンでよかった!』って言うようになったんです」「大人になったらミップスターみたいにかっこいいムスリムになりたい!」とか、そんなコメントを色々。

H:嬉しいですね。今後、というか一貫して持ち続けている目標・コンセプトは?

M:僕らの世代が色々とフィーチャーされたり、ムスリムのためのファッションマーケットが拡大したり、ムスリムという生き方が社会に認知されること。ステレオタイプなく。いまはヒジャブ被ってジーンズにスニーカーなんて格好だと「何でムスリムなのにそんな格好してるの?」なんて見られちゃう。で、ミップスターなんですとかなんとかわざわざ弁解しなくて済むような環境を作っていきたいね。

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 最後につけくわえたのは、「シリアスにとらえ過ぎず、いかに自分たちのアイデンティティを楽しむかってことが大事」。ムスリムの生き方・カルチャーが広まるのなら、まずはファッションとして消費されてもいいんじゃない、という考え方も然り。このミレニアルズ特有の“抜け感”が、これまでにない変化を与えようとしているのは間違いない。
 今後、米国に生きるムスリムという生き方がいかに変わっていくのか楽しみだ。

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#MIPSTERZ
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Interview Photos & Text by Satoko Hirano

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