ノリにのる“米国の100均”。顧客は「年収1000万以上のミレニアルズ」新マーケットと100均ビジネスの可能性!

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みんな大好き100均。アレだけ買って帰ろうと思って来たのに、店を出たときには買い物袋いっぱいになってる、なんてこともあったり。
場所は変わって米国にも、いわゆる“100均”はある。ダラーストア(dollar store)とよばれる1ドルショップや、“ほぼ”99セント商品を売る近所の便利屋さんのことだ。

しかし。日本の「クリーンで買いやすくカスタマーフレンドリーな100均」とは異なり、おもちゃ箱をひっくり返したかのような陳列で、商品も数回使ったら壊れそうな粗悪なものも多かったり。お客も安さを求める低所得者層がメインだ。

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Photo by Dan Deluca

そのダラーストアに意外なファン層がついているという。それは、なんと「選びたい層」であるリッチなミレニアルズたち。

年収1000万円の若者が1ドルショップでお買い物

 2008年のリーマンショックにはじまり、ここ最近の不況続きで売り上げも毎年右肩上がりのダラーストア・ビジネス。
 あるリサーチ会社の調べによると、昨年末までにアメリカ国内にあったダラーストアはおよそ3万店で2020年までにもう3800店ほどが新しくオープン。今年の売り上げ総額は約2.7兆円にまでのぼると予想されている。

 それに一役買っているのが、新たな顧客であるミレニアルズたち。アメリカ大手ダラーストア「Dollar General(ダラー・ゼネラル)」によると、今年の第1四半期の収益のおよそ4分の1にあたる24パーセントがミレニアルズだそうだ。

 ダラー・ゼネラルと「Dollar Tree (ダラー・ツリー)」「 Family Dollar (ファミリー・ダラー)」の3社で、今年4月末までに買い物をしたミレニアルズたちのおよそ3割が、なんと“年収1000万円以上の”ミレニアルズ富裕層というからさらに驚き。
 リッチなミレニアルズの100均利用者数は、2012年から15年までの間に7.1パーセント上昇。他の小売店の3.6パーセントであることをみると、ダラーストアファンがリッチキッズの間で増えていることは一目瞭然だ。

Susan Montgomery  Shutterstock.com

メーカーじゃなくていい「消耗品」

 新しいものに目ざとく持ち物にはこだわり、さらに財布に余裕があるミレニアルズがなぜダラーストアに?  ある経済大学教授の見解は、ずばり「有名メーカー商品に対する価値観が前世代と変わってきていること」。

 洗剤だったらここのメーカー、トイレットペーパーはこのブランドなど、親世代がこだわった日用品を「消耗品なら何でもいいじゃん?」と思っているミレニアルズが増えたということだろう。
 とある年収1000万円以上のあるフリーランス・コピーライターは、ダラーストアでほとんどの日用品を揃えているのだとか。彼曰く、「ダラーストアの綿棒は、Q-Tips(綿棒の有名メーカー)と変わらないさ。半額以下の値段で買えるしね」。
 その代わりにと言っちゃなんだが、お気に入りのカフェで毎朝1杯のコーヒーにお金をかけ、メインに前菜、ドリンク(それにチップも)を入れたら軽く3000円は飛んでしまう流行りのレストランでブランチにディナー、旅行には惜しみなくお金を出す。

 年収1000万円以上の高給取りでも、大学時代の学生ローン返済がまだあるなど、稼いだお金を湯水のようには使えない。お金をかけなくてもいいものは安物でオッケー、でもこだわるところにはきっちりかけるいまの若者のライフスタイルにダラーストアがぴったり当てはまっている。

ダラーストアも、ローカル感がいい

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Photo by Susan Sermoneta

 日用品を安く済ませるなら、アメリカにもウォルマートやターゲットのような大型激安スーパーマーケットもある。週末家族で車で行き、まとめ買いするのがアメリカ人の節約ショッピングスタイル。このスタイルが、いまの若者にはあっていない。

 というのも、昨今の自転車ブームも手伝ってか、特にニューヨークのような地下鉄が発達している大都市で隣近所にふらりと買い物に出るときは大抵、徒歩か自転車。
 わざわざ週末に車を走らせ大量買いに行くよりは、外に出たついでにさっと寄って必要なものだけを買っていく。ご近所の角にあるダラーストアは、徒歩でサクサク、相棒は自転車なミレニアルズたちにとって「コンビニ」感覚なんだろう。

 さらに、特に筆者が住むニューヨークに多いのが、移民たちがやっているような小さなダラーストア。ローカル・コミュニティを大切にするミレニアルズにとって、大手チェーンダラーストアとは異ったこのご近所感満載のダラーストアが心地よいのかもしれない。

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Photo by Bernhard Benke

大手ダラーストアが乗り出した、ミレニアルズ向けブランド

 食品も取り扱うチェーン・ダラーストアの「ダラー・ゼネラル」が今年立ち上げるプライベートブランド「Heartland Harvest(ハートランド・ハーベスト)」。これは健康に気を使うミレニアルズをターゲットにした“健康志向の”ブランドらしいのだ。来月このブランドから15の商品が店頭に並ぶ予定(詳細はまだわかっていない)。化粧品や一般用医薬品などのビューティー/ヘルス部門に力を入れ品数を揃えていくと意気込んでいる。
 またダラー・ゼネラル、2025年までに店頭で売る卵を、放し飼いの鶏から生まれる薬剤に頼らない安全な「平飼い卵」にすることも発表。自分が口にする食べ物の生産過程が気になるミレニアルズを気遣ったアクションだ。

「所有より共有が好き」な彼らも生活必需品はさすがにすべて共有できないわけで。
 お金があったとしても毎日使う消耗品はブランドに気にせず、地元の行きつけダラーストアで調達するミレニアルズを味方にこれからも飛躍するであろうダラーストアビジネス。
 ミレニアルズたちがミレニアルズ向けに立ち上げる個性派100均なんてのも近いうちに登場するだろう。

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Cover Image by Wanderlante
Text by Risa Akita

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