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  • Mar 10, 2017
ミルク業界、最注目ダークホースは「ラクダの乳」。1本2000円の“キャメルミルク”はなぜこんなに売れる?

ソイミルクにライスミルク、アーモンドミルクと…それにヘンプミルク。近年、乳成分を含まない牛乳の代替品としてさまざまな種類の◯◯ミルクが登場し、ミルクビジネスは大いに勢いづいている。

そんななか「ヒップスターの新しい飲み物」として、あるミルクが頭角を現してきた。価格は牛乳の約10倍(!)手軽に買えるわけでもないその正体は、乳成分をがっつり含む「ラクダの乳」。なぜ彼らはいま、わざわざ“キャメルミルク”を選ぶ?

1本約2000円。それでも売れる「ラクダ」のミルク

 牛乳よりも気持ちしょっぱめ。「砂漠で暮らす遊牧民はこれだけで1ヶ月耐えられる」と、健康食品の専門家たちから熱い視線を浴びるのが「ラクダの乳」だ。いま米国を軸に世界的にじわじわきてる。

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 ラクダを家畜化する中近東やアフリカでは、以前から比較的日用品として消費されていた“キャメルミルク”。 2000年以降からは先進国でもゆるりと注目を浴びはじめ、現在米国ではホールフーズ(オーガニック系スーパー)を含む150の小売業者とオンラインで販売。売れ行きを着実に伸ばしている。

 価格は1本約2000円とかなり高いが、よく売れる。
 国連食糧農業機関の報告によれば「ビタミンCの含有量は牛乳の約3倍。鉄分、不飽和脂肪酸、ビタミンB群も豊富」らしい。さらに、大半のキャメルミルクは、近代生活を拒否するアーミッシュが非遺伝子組み換え飼料で飼育したラクダから生産したものだという。
 豊富な栄養価、といっても、比較する栄養価の含有量がそもそも小さいので、はっきり言って牛乳と比較してもそこまでの推しポイントには感じない(それで価格10倍)。それよりもこの「丁寧に飼育されたラクダの貴重なミルク」がヘルスコンシャスな人、それから新しいモノ(特にクラフト)好きの人たちにウケているんじゃないか?と思う。

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 “希少価値のあるスーパードリンク”としての呼び声も高いキャメルミルク。いま米国内の流通を牛耳っているのが、カリフォルニア州に本拠を置く「Desert Farms(デザート・ファームズ)」社だ。
 3年前に北米初となるラクダの乳製品を発売したスタートアップで、現在は10万人以上の顧客を抱え、週に5000本以上のボトルを販売。以来、およそ150万ドル(約1億7100万円)の売り上げをたたき出す。いまやミルク界注目のエースなのだ。

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“乳成分を含む”牛乳の代替品として

「ちょうどその頃、アメリカ人がソイミルクやアーモンドミルクに注目しはじめた時期だったんだ」。会社立ち上げ当初をふり返えるのは、創業者のWalid Abdul Wahab(ワリード・アブドゥール・ワハブ)。サウジアラビアに生まれラクダの乳を飲んで育ち、アメリカでキャメルミルクビジネスを成功させた若干25歳だ。

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 牛乳よりヘルシーといわれるソイやアーモンドなど“牛乳の代替品”がすでに流行っていた頃、ワリードはあることを知る。それらミルクにはアレルギー症状・添加物・副作用などの健康リスクがある、ということだった。

 それなら、母国で飲み親しんだ「より健康的で栄養満点のキャメルミルク」を売り出したらどうか。“乳成分を含んだ”牛乳の代替品、という他の代替ミルクとはちょっと毛色の違う立ち位置を目指そう。地元のアーミッシュ農家協力のもとキャメルミルク事業に踏み切った。

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顧客の大半は「ヒップスター」と「自閉症の子を持つ親」

 健康リスクの説がある一方で、売り上げは右肩上がりだったソイやアーモンドなどの〇〇ミルク業界。ワリードは起業家としてどうビジネスを成長させたのか?

「一番大事なのは、市場と顧客を知ること」。米国で最も人口が多いカリフォルニア州に市場を置いたのは「大正解だった」。
 カリフォルニアといえば“彼ら”の生息地。流行に敏感・ヘルスコンシャスなヒップスターだ。販売開始後、キャメルミルクに食いついた彼らがこちらから頼まずともSNS上で拡散。おかげで余計な広告費をかけずにデジタルマーケティングに成功、これが「確実にブームのキッカケになった」と説く。

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 ファンはヒップスターだけでない。SNSには「キャメルミルクのおかげで、ミルクが飲めるようになった」とのフィードバック、またキャメルミルクには自己免疫疾患の治療効果があることから自閉症の子を持つ親の反響も多い。

ラクダはどこにでもいる、わけじゃあない

 今後は「チョコレートフレーバー・ミルクにアイスクリーム、ヨーグルトといった商品も販売予定さ。乳児用調合乳も開発中」。まだまだキャメルミルクを世界中に発信させたいと、声を弾ませる。

 ラクダの飼育は気候の影響を受けやすく困難らしい。それゆえ、米国内のラクダの数は牛の1万8000分の1、とごく少数で、「牛は1日に約30キロの牛乳を生産するけど、ラクダは約5キロだけ」。このため価格が下がることは当分ない。それでも人々が手を伸ばすのは、金額に見合った価値がそこにあるからだ。

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 乾燥地帯の少ない日本でもラクダの繁殖は難しい。「入手は無理か…」と思いきや「最近、日本にもキャメルミルクパウダー(オンラインでは売り切れ中)を大量に輸出してるんですよ!」。

 これは吉報。もしこのまま日本での普及がぐんと進めば、スタバで「キャメルミルク・ラテ、グランデで」なんて注文できる日は遠くないかも。

Desert Farms

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All images via Desert Farms
Text by Yu Takamichi, Edited by HEAPS