編集部が選ぶ今月のZINE3冊。テーマは〈スマ〜トフォン〉おじいちゃんのいるグループチャット、エッチなセルフィーの御作法、他

グループチャットで、メッセージの度にわざわざ「わしが送り主じゃ!」と大きな声で申告するおじいちゃん。みんなのスマホライフは色とりどりです。
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「クラフトジン」なんて言葉を先日耳にした。ジンなんて手作りのクラフトに決まってるだろ、なんでもかんでもクラフトってつけりゃ…なんて思ったら、お酒のジン(Gin)のことでした。クラフトビールの流れで、素材や製法にこだわったジン。近年流行っているらしいですね。

お酒のジンはさておき、世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」。今月紹介するのは、みんなのスマホライフを綴じた3冊。起きたてから寝る前まで欠かせないアイテムのスマホ、使う利点も使わない利点も、あるんだな。

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とにかく受信音が大きくて。スマホをたのしむ“じぃばぁ”の観察記
Old People Texting


Image via Kristin Beck

「高齢者はケータイが苦手」は、とんだ勘違いかもしれない。だって若者同様、携帯電話のある生活をたのしむ彼らの様子を綴ったジンがあるんだもん。

じぃばぁ世代のメッセージのやりとり風景をユーモアを持って綴じたのは、フロリダにて夫と息子と暮らすフリーランスライター兼デザイナーのクリスティーンママ。ちなみにジンは1枚紙で仕上げてあるので、広げて壁に貼れば新聞風ポスターに早変わり。クリスティーンママが筆を執ったのは「ハリケーン・イルマが上陸した2年前の夏。自宅で嵐が去るのを待っているあいだ」。一緒に住むじぃばぁの、ケータイメッセ使いっぷりを観察をしていた。普段ケータイとは無縁そうな、じぃばぁたちのメッセージあるある2選が、これらしい。

うちのじぃばぁ、マナーモードにせず、音量を大にしたままスマホを置いてどっかいっちゃうもんだから、メッセージが来るたびに受信音が鳴り響く。すべてのメッセ、一つ残らず、大音量。

メッセくるたびに、ビクってなっちゃうやつですね。受信者である当の本人は、何処へ…。

同じ部屋にいるのにグループメッセージをし合う。そしてみんなのケータイに受信音が鳴ったあと、「いま送ったのはわしじゃ」と大きな声で謎に毎度の自己申告をする。

誰が送ったのか一目でわかるのが、グループチャットのいいところなのですがね…。デジタル、アナログ両方でダブル通知。じぃちゃん、抜かりない。自分たちなりのケータイ道を歩むじぃばぁ、なんだかいいなあ。若者世代が使える新しいケータイ使用法術が、このジンにあったりして。


欲しいかちゃんと確かめてから。美しき“イチモツ自撮り”の御作法
The Art of the Solicited Dick Pic Zine』


Image via Nicole Mazzeo

「“ディックセルフィー”を誰かに送りたいけど、どうしたらいいかわからない? ならこれを読めば丸わかりよ!」。丸わかりよ、の前にちょっと待って、ディックセルフィーってなんですか??? ディックとは、英語のスラングで「男のイチモツ」。ってことは、ディックセルフィー、“イチモツ自撮り”ってことでいいんですか???

はい。現代には「セクスティング」という、お互いの体の一部を自撮りしたり、と性的なメッセージや写真を送りあう文化がある。そのなかで男性が送るものといったら、自慢のディックセルフィー(イチモツ自撮り)。過去には、人気俳優ザック・エフロンやR&Bシンガーのクリス・ブラウン、NBAのグレッグ・オーデン選手のディックセルフィーが流失したことが話題になった。

ディックセルフィーがなにかわかったところで、ジン『The Art of the Solicited Dick Pic Zine(イチモツ自撮りの美学)』に話を戻りたい。正しいディックセルフィーの送り方をご丁寧に綴ったのが、作者のニコルちゃん。当時交際していたボーイフレンドに「送って!」とせがんだときのこと。イチモツ写真が送れられてきて「すごくうれしかった。一般的にイチモツ自撮りは、悪評に晒されているよね。それは、多くの人が送り方を間違っているから。送り主と受け取り主がお互い敬意を払ったうえであれば、イチモツ写真はとてもラブリーなことなのに残念だよね」。そんな気持ちがキッカケでジンを制作したのだとか。ちなみに彼女、ヒープスで昨年のいまごろ紹介した『10代の頃の自分に教えたかったセックスのこと』の作者でもあり、ティーンズに正しい性の知識をと、セックスに関するジンを5年間作り続けているジンメーカー。したがってこのジンは、なにも変態野郎を応援するものではなく、純粋に自分のナニを見せびらかしたい殿方に、イチモツ自撮りのルールを教えたハウツー本。ステップ1(送信先の相手から許可を得ること)からステップ9(送信)まで、文章のみでアツくレクチャーしている。

いくつかをかいつまんでみると、

・いい感じの照明を用意して撮影すべし。ごちゃごちゃした背景は避けること。

・送信ボタンをポチる前に受け取り主をしっかり確認するべし。誤って友だちに送信、なんて嫌でしょう?

・良いイチモツ自撮りは、自分の体を賞賛するという行為。受け取り主と送り主の性的なコネクションだわ。イチモツ自撮りという、性的表現をたのしむべし。

最も重要なのは、送り主、受け取り主、双方の“同意のうえ”でイチモツ自撮りをやりとりすること(相手がきっと送って欲しいだろうなぁ、よろこぶかも、という憶測は禁物)。「受け取り主は、送り主の許可なく勝手にどこかに共有しないこと。あと、もし受け取り主が写真を気に入ったならば、送り主にそれを伝えてあげて! ディックはエロくって、美しくて、セクシー。お互いに敬意を持ってたのしめたら素敵よね」。万が一、無断でイチモツ自撮りを送りつけてくる変態野郎がいたら、代わって痛快に返信してくれる“毒舌ボット”でとっちめることをお勧めする。


赤ちゃんと戯れたり編み物したり。スマホなし通勤
City Living Guide #4 – Commute Without Phone”


Image via Ink Sundae

「通勤中のバスや電車内って、乗客の9割がスマホに夢中な気がするんです」。心当たりある人、多いよね。はい、筆者もその1人。昨日のポストにいいねの数が少なかったり、電波が悪いといった些細な理由で、電車に揺られながら不要なストレスを感じちゃう。心身ともに不健康なスマホ中毒。そんな筆者とあなたに勧めたい1冊が『City Living Guide #4-Commute Without Phone(スマホなしで通勤しよう)』だ。都市生活における問題点に、ユーモアある切り口でアプローチする『シティ・リビング・ガイド』の第4号。「通勤中、スマホをいじる以外にもできることもいっぱいあるんだよ」と、忘れかけていた通勤時間の過ごし方を詰め込んだイラストジンとなっている。

いったんスマホをカバンにしまって。はて、なにをしよう? 窓の外に目をやり、過ぎ行く看板や駅名で動体視力を鍛えてみる? 隣の人の新聞を横目でみてみる? 目の前に座った人の過去を想像? ジンの作者で台湾のグラフィックデザイナーのインク・サンディーは、こう提案。「ベビーカーから顔をのぞかせた赤ちゃんにいないいないばぁ、できるよ」とか。「好きな人にマフラー編んであげられるよ」とか。やわらかいイラストタッチのおかげで、終始ほっこりした気持ちになれる。

「これまで目撃したなかで、斬新な過ごし方? バスのなかで書道を練習している女性を見かけたことがあるよ」。自他ともに認めるスマホ中毒者で、このジンはインクが自分自身に言い聞かせるためでもあるんだってさ。通勤中の数十分、たまには画面との睨めっこをやめてみるのもいいかもしれない。だって、ふと目をあげてみれば、「すばらしい世界がそこにあるんですから」。


Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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