編集部が選ぶ今月のZINE3冊。テーマは〈だって好きなんだ〉趣味から醒めない人たち。森の小屋、うさぎ、絵コンテ

好き!好き!好き! いつまでたっても夢から、いえ、趣味から醒めません。
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好きな理由など書かずに想いを綴ればよい。「だって好きだから」。世界一敷居の低い文芸で、ルールが存在しない世界一自由な文芸「ジン(ZINE)」はそれでよい。
他人から理解されなくたって構わない。静かに熱い想いが滲んでしまう、今月はそんな3冊を紹介する。ある日から今日までずっと好きでいた趣味。

***

山のなかのキャビン(小屋)に一目惚れ。
トム・ウェイツを聴きながら。4年間コツコツスケッチ。

Cabin Sketches


Image via Mark Foster

無趣味に頭を悩ます人が多いなか、些細なことを機に一生ものの趣味が見つかることだってある。この彼、マークさんもそう。「妻と散歩中にたまたま見つけた、小さくもすばらしいキャビンを見て描きたくなった」。カリフォルニアにあるサンバーナーディーノ山脈。そのふもとのグリーンバレー湖そばに凛と佇むキャビンの数々に魅せられ、スケッチをはじめた。キャビンとは、山やキャンプ場にある、小さな小屋のこと。コテージやロッジのようなものだ。

その後、自身のキャビンまで購入。今日までの4年間スケッチにのめり込んだ。紙とペンだけを握り、時々トム・ウェイツの名盤なんかを聴きながらのんびりスケッチしているらしい。
ジンには、厳選した10棟のキャビンのイラストが16ページにわたって並んでいる。周辺の景色もよく描かれている。どうだろう、この木の葉一枚いちまいまで丁寧に描かれる、趣味の骨頂、描画スキル。モノクロなところがまたいい味出してます。

過去20年スケートボード業界に身を置き、自身のブランドも運営する彼。スケッチし続けるのはスケボー仲間にキャビンの素晴らしさを押し売りしたいわけでも、副業として小遣い稼ぎしたいわけでもなく、ただ好きだから。「これからスケッチする予定のキャビンも、まだまだあるからね」



犬?猫? 断然うさぎ派!
うさぎの飼い主向け、うさちゃんの気持ち。

The Tiny Little Book of Bunny Behaviour

Image via Lyndsey Green

「うさぎが跳ねているとき、それは何を意味しているのか。はたまた強引に毛布を蹴り上げるとき、何を考えているのか。疑問に思ったことない?」。私はないですね…。でも、英国にて夫とうさぎと暮らす、うさぎ大好き奥様リンジーはそんなことばかり考えている。うさぎのことばかり考えている。

小生意気で遊び心満載の性格に心を奪われ「人々がうさぎの習慣をより理解できるように」と、さまざまなボディーランゲージが表す意味を6ページにまとめ上げた。うさぎは、習性を誤解され、間違った飼われ方をすることが多いらしいのだ。同じうさぎ好きにうさぎの正しい飼い方を広めたいとのピュアな想いから筆を執った。
「Loafing(ぐうたらしているとき)」「Tossing(ポイっと物を投げるとき)、「Flop(ばったり倒れているとき)」など、その行動が何を意味しているのか、手描きイラストととともに簡潔に伝授。大学在学中に培ったジン作りの技を活かし、A4用紙1枚で仕上げたジンは、裏返して広げればポスターとして壁にペタり。ふむ、愛に支えられたジン作り。深いうさぎ愛が伺える。

読書はキンドルとオンライン。
自作の絵コンテはアナログで綴じたい。

Storyboard

Image via Richard Wohlfeiler

テレビコマーシャルの企画説明や、映画の撮影解説に用いられる絵コンテ(英語でストーリーボードという)。重要なシーンのイラストとその説明を1枚のボードに書き込んだもののことだ。絵コンテの要領で、想像上の映画の重要なシーンを、24ページにおさめたのが、こちらのジン。作者はカリフォルニア在住、キャリア19年のジン作り玄人、リチャードさん。20年間勤めた大学の美術講師を定年退職引退し、現在はアーティスト活動に精を出す。

なんでもデジタル化のこのご時世に(自身も読書はほぼキンドルかオンラインとのこと)、惹かれたのがアナログな絵コンテ。イラストのインスピレーションは「映画監督の小津安二郎の映画作品から」だとか。たんにイラストと文章を綴るだけではつまらない。ファインアート紙に印刷し、アコーディオン式に折り畳んだ渾身の1冊に仕上げた。美術講師を引退したいまもこうして好きな制作に時間を費やす。これだけ趣味に夢中になれたら、定年後も毎日楽しく過ごせそうだなあ。



Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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