日本を代表する現代美術のムーブメント、もの派。美術史の教科書にも載っており、人間と物質の在り方から芸術表現を引き出そうとした運動だとされている。今回紹介するのは、「ディア:ビーコン美術館」にて開催中、もの派のパイオニアともいえる李禹煥(リ・ウーファン)の展示、「Lee Ufan」だ。
1960年代末から70年代初めにかけて活発に活動した“もの派”のアーティストたちは、無加工の素材を空間に配置することで、その空間自体を作品へと昇華する。従来の美術の在り方に挑戦した彼らの作品は、いまなお色あせることなく、私たちに新鮮な驚きを与えてくれる。
ムーブメントの始祖である関根伸夫と並び、韓国に生まれ日本を拠点にする美術家、李禹煥は、もの派の理論化に貢献した。李禹煥の作品の多くはいたってシンプルだ。今回展示される彼の代表作は、クッションの上に置かれた石がスペースに点々と展示されていたり、直角に折り曲げられた鉄板が向かい合わせに配置されたりしているものだ。一見なにがなんだかわからない。これは果たして芸術作品なのか? しかし息をひそめてその空間に佇んでいると、その配置、もの同士の間にある見えない関係性、逆にものが置かれることなく余白として存在している空間の組み合わせによって不思議な緊張感が生まれてくることに気がつくだろう。
李禹煥の展示はいまだ人気が高く、近年ではグッゲンハイム美術館やヴェルサイユ宮殿でも展覧会が行われてきた。2010年には直島で、安藤忠雄による建築の李禹煥美術館が開館した。マンハッタンから車で一時間のディア:ビーコン美術館で、都会の喧騒から離れて李禹煥の“もの”とじっくり向き合うのは、理想的な週末の過ごし方といえるかもしれない。
Lee Ufan, Relatum (Iron Field), 1969/1994/2018, installation view, Art Basel Unlimited 2018. © Artists Rights Society (ARS), New York / ADAGP, Paris, Photo: Dawn Blackman, courtesy Pace Gallery
Lee Ufan, Relatum (formerly System), 1969, installation view: Tokyo Metropolitan Art Museum, 1971. ©
Artists Rights Society (ARS), New York / ADAGP, Paris. Courtesy the artist
Lee Ufan, Relatum (formerly Language © Artists Rights Society (ARS), New York / ADAGP, Paris.Courtesy the artist
Lee Ufan, Relatum, 1974. © Artists Rights Society (ARS), New York / ADAGP, Paris. Courtesy the artist
Text by Anna Sasaki
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine