「つまらない広告なんていらない」。世界一強い広告をつくる男たち、Droga5の原点
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オバマを大統領に導いた動画の話をしておいて、彼らに触れずというわけにはいかない。その裏にいた立役者たちのことも同時に振り返りたい。
いま読んで再認識する、トップに君臨する者たちの原点。

***

広告クリエーティブの頂点、カンヌ国際広告祭。2011年、この3部門で グランプリを獲得するという快挙を達成したエージェンシーがある。
Droga5。いま世界で最も先進的と注目される広告クリエーティブエージェンシーの一つだ。
2006年の創設以来、その型破りなアイディアの数々でCreativity誌が選ぶ Agency of the Year受賞2回、2012年にはAdweek誌が選ぶ Agency of the Yearにも選出された。

瞬く間に広告クリエーティブ界の寵児へと上り詰めた彼らの、勝利の秘訣とは?
ニューヨークを拠点に世界を刺激しつづける彼らに追った。

droga5

 まずは、プロフィール。

DAVID DROGA(デビッド・ドロガ)
Founder, Creative Chairman at Droga5(写真左)

オーストラリア出身。シドニーのOMONでアートディレクターとして活躍、22歳でクリエーティブディレクター兼共同経営者に就任。その後、クリエーティブディレクターとしてSaatchiシンガポールオフィスに着任。ロンドンに移動後は、同社を世界のトップエージェンシーへ導く。
その経歴を経て、Publicisグループ初の全体 チーフクリエーティブ役員として迎えられる。
2006年、ニューヨークにてDroga5設立。
5人兄弟の末っ子で、社名「Droga5」は彼の母親が息子の洋服に刺繍していた名前から付けられた。カンヌ広告賞の最多受賞記録を持つ。

TED ROYER(テッド・ロイヤー)
Executive Creative Director at Droga5(写真右)

アメリカ・フィラデルフィア出身。広告学校を卒業後、Leonard/Monahanにてアートディレクターとして、初年度でThe One Showペンシル最多受賞記録を樹立。その後、Saatchiシンガポールオフィス、Ogilvy& Matherラテンアメリカ支部クリエーティブディレクター、Wieden + Kennedyを経て、Publicisへ移転。
同社のシドニーオフィスでクリエーティブディレクターを勤めた後、ニューヨークへ転籍。2007年、Droga5のエグゼクティブ・クリエーティブディレクターに就任。カンヌ広告賞受賞回数16回、その他広告賞の受賞歴はおよそ100回に及ぶ。
2011年Creativity誌が選ぶクリエーティブディレクター・トップ10入り。

2011年取材当時のプロフィール

はじまりは、ドロガと7人の仲間

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 2006年、Droga5はデビッド・ドロガとその仲間わずか7人により創設された。創設当時のクライアントは、ゼロ。
しかし、彼らには自信があった。なぜなら、立ち上げを決めたドロガに同調したのは、クリエーティブ界のエース達。数々の名だたるエージェンシーで活躍してきた彼らが次に求めていたのは、会社の事情にごまかされることのない、理想の広告クリエーティブを実現する場だった。自らカンヌ国際広告賞の個人最多受賞記録を持つスーパースターであるドロガからの誘いに、彼らのクリエーター魂がくすぐられたのは言うまでもない。

「ドロガは優秀なクリエーターであると同時に、優秀なビジネスマンでもあるんだ。彼がやる会社なら、喜んで参加したいと思っていたよ」と、2007年にエグゼクティブ・クリエーティブディレクターとして参加したテッド・ロイヤーは語る。こうしてDroga5は、クリエーティブエージェンシーとして最も大切な「人材の獲得」に成功したのだ。

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水道水、1ドルで買いません?

 結果は、すぐに現れた。Droga5は創設の翌年となる2007年、ユニセフがクライアントとなったTap project(タップ・プロジェクト)でいきなり世界中の話題を攫った。途上国の人々へ安全な水を届けるために、レストランで水道水を1ドル出して頼もう、と呼びかけたそのアイディアは、ニューヨークを中心に世界へと拡大。日常の何気ない行動を募金活動へと変換させたアイデアの鮮やかさに、世界中が喝采を送った。競争の激しい広告業界において、新興のエージェンシーには、一度の失敗が命とりになる。Droga5はこのキャンペーンを見事成功に導き、早くも新進気鋭のクリエーティブエージェンシーとしてのポジションを確立させた。

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エアフォースワンに、落書きせよ

 Droga5の特徴は、旧来のマスメディアを主とした広告手法 にとらわれない、斬新なコミュニケーションプランにある。たとえば2007年、大統領専用機であるエアフォースワンに一般人が 落書きをする動画がYouTubeに流れ、全米を騒がせた。実はこれ、Droga5が仕掛けたもので、エアフォースワンは偽物、隠し撮り風に見せかけたアパレルブランドの広告だった。
 マスメディアを使わず、当時新しいバイラル(口コミ)を利用した広告手法に世界は驚き、世間にバイラル広告ブームを巻き起こした。

デジタルの先へ

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 こうしたインターネットなどを駆使した広告手法を得意とする彼らの作品は、3分の2をデジタル広告が占める。

 人々が触れるメディアが多様化し、広告媒体としてのマスメディアの価値が低下する中、Droga5のようなデジタル広告に強いエージェンシーへの需要は高い。現在、そのクライントリストには大手保険会社のプルデンシャル、マイクロソフト、ユニリーバ、プーマと蒼々たる大企業が名を連ねている。

 彼らの収入源となるのは、企業のマーケティングフィーから得る約20%のマージン。2011年の売り上げはおよそ6,000万ドル(43億8,000万円/1ドル73円換算)と、前年の倍に成長した。

 2011年、Droga5はDe-Deというデジタルマーケティング会社を設立した。Design&Developというコンセプトから命名されたこの機関は、開発者とマーケッターの2チームで構成されている。開発者が提供する新技術を広告コンテンツへとカスタマイズし、クライアントのデジタルマーケティングに役立てる目的だ。テクノロジーと世の中をつなげる、というミッションに乗り出した彼らの嗅覚は、ここでも時代の先端に向いている。

「95%の広告は毒だ」

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 ドロガのその発言に代表されるように、彼らの目標は「他のエージェンシーをインスパイアすること」にあるという。

 たしかに世間には、メッセージを伝えることに注力するあまり、消費者に見放され、早送りの対象となる広告が溢れている。広告の送り手である彼らが、「つまらない広告な んてたくさん」と言い切れる理由は、そうでないものを作っているという自負があるからだ。

 Droga5が作ろうとしているのは、人々が積極的に見て、楽しみ、共有したくなる広告だ。興味がわく、話題になる、ということが世の中と広告をつなぎ止める鍵であることを、彼らは業界に伝えようとしている。  

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 アイディアをビジネスに変える野心と、クリエーティブを貫こうとする純粋さ。その両方を兼ね備えた彼らは、いまのところ敵なしだ。
「面白いものをつくる」というあまりにもシンプルなことに、真剣であること。広告主も消費者も味方につけた彼らの躍進は、まだまだ続く。

【2011年取材、2012年HEAPS iPad号に掲載】

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