注目される「正社員っぽいフリーランス」。フリーランスと正社員の中間〈パーマランス〉とはいったい何者なのか

それって、パートタイムや契約社員とは一体どー違うの?新しい君、パーマランスたちよ。

急増する「フリーランス」に、好きなことを副業にする「サイドハッスル」。ネットを通して単発の仕事を請け負う「ギグエコノミー」も、最近よく耳にする。10人いれば10つの働き方。いつになく働き方が流動的になるなかで、今度は「パーマランサー」と呼ばれる仕事人たちが出現していると聞いた。

フリーランスと正社員の中間?〈パーマランス〉という働き方

「フリーランスでもないけど、フルタイムの正社員ではない」。そんな曖昧で捉えがたいポジションが、近年増えている「パーマランサー」だ。それって、パートタイム? 契約社員とは違うの? ある定義によれば、パーマランサーは「一つの企業と関係を結びながらも、独立して仕事をする人(インディペンデントワーカー)」「正社員になる可能性のあるフルタイムのフリーランスポジション」。「『permanent(正社員)』と『feelancer(フリーランサー)』を掛け合わせた造語」。うーん、わかるようなわからないような。

 この説明ではどうだろう。「パーマランサーは形式上はフリーランサーだが、同じ企業に長期間勤務、あるいは一つのプロジェクトに毎週一定時間取り組んでいる」。なるほど、フリーランスだから他の仕事をする自由はあるが、メインに取り組むプロジェクトや勤務する特定の企業があるということ?

「パーマランサーはスタート時は短期スタッフとして雇われたが、その後契約に基づいて雇用され、週に24時間から40時間(3-5日)勤務する」。つまりは、短期雇用やフリーランスで仕事をもらった後、一つの会社と定期的に仕事をするようになり、正社員に近い労働時間をこなしている…というような解釈でいいだろうか。「パーマランサーは労働時間のほとんどを一つか二つの企業のプロジェクトに費やしているが、彼らにとってその企業は“雇用主”ではなく、あくまで“クライアント”である」。この解釈なら比較的わかりやすいかもしれない。

 定義が少し漠然としているが、このパーマランスという働き方が最近注目されているらしい。米ビジネス誌フォーブスは「『パーマランス』は“新しいセルフエンプロイメント(自己雇用)”のトレンドになる」という見出しで数ヶ月前に紹介。そしてお決まりの「先導しているのは、“ミレニアルズ”です」。ミレニアルズといえば、転職・パートタイム・フリーランス世代と呼ばれ、「自分が自分のボスになりたい」「オフィス通勤じゃなく遠隔で好きな時間に仕事をしたい」「安定した職よりやりがいのある仕事」といった声が多くあがる世代だ。
 ある調査(2017年)によれば、米国のミレニアルズ世代の74パーセントが「フリーランスに興味がある」と回答し、次世代のインディペンデントワーカー2,700万のうち42パーセントがミレニアルズという調査結果も(アメリカ合衆国労働省労働統計局、2018年)。数字だけでの証明ではなく、サイドジョブを探すオンラインプラットフォームも増えるなど、目にみえて労働に柔軟に応えるミレニアルズだ。フリーランスと正社員の中間〈パーマランス〉というポジションに興味を示してもなんら驚くことはない。

ライターやデザイナー職多し。MTVの大半も昔はパーマランサー?

 では実際、どんなパーマランサーがいるのだろう。米国のリンクトイン(ビジネス特化型SNS)には、「パーマランス」と断った上での求人が数件あった。たとえば、「ビジュアルデザイナー」「マーケティングスタッフ」「プロダクション会社での中級グラフィックデザイナー」など。雇用主はクリエイティブセールスチームやメディアエージェンシーなどで、条件には「最長2年です」や「長期雇用を求めます」「専用デスクがあたえられます」。

 また、“ライター”にもパーマランサーは多い。ある女性は、3年前からフリーランスライターとして2つの媒体で記事を執筆している。そしてここ1年は片方の媒体のオフィスに通い週25時間(1日8時間として週3日)勤務、“短期スタッフ以上、正社員以下”という塩梅だ。さらに、ある声優の男性パーマランサーは「ぼくのプロジェクトマネージャーはボスではなく“クライアント”」だそう。

 サイドジョブ、ギグエコノミーなどキャッチーなワードと並べられると、ついパーマランスもミレニアルズが作り出した「新しい働き方のトレンド?」と思ってしまうが、実は10年以上前からすでに“パーマランス”という言葉はあったようだ。上までの説明で「あ、自分ってパーマランサーだったのか」と当てはまった人も多いだろうと思う。

 2007年には、世界最大級の音楽&エンターテインメント専門チャンネル「MTV」が、フリーランサーに対しての健康保険プランを縮小すると発表すると、それに反対するMTVのフリーランサーたち(主に20代)が抗議デモを決行。この時、勤務時間は正社員(週50〜60時間)だが、正社員のような福利厚生は得られない彼らは、“パーマランサー”と呼ばれていた。実際、MTVで働いていた人は同社の75パーセントはパーマランサーだったと発言するなど、大手エンタメチャンネルもパーマランサーに支えられていたようだ。 

パーマランスは“使い捨て労働力”?保険なし有給なしで正社員の労働時間って

「パーマランスは、新しい“使い捨て労働力”」というセンセーショナルな見出しも見つけた。彼らがいうところによると、「パーマランサーたちには自由がない。正社員と変わらぬ勤務時間と仕事量、プロジェクトへのコミットメントを求められるが、正社員のように健康保険などの福利厚生もなし、有給もボーナスも病気欠勤日もなし。その上、雇用主が契約を切りたいときにはスパッと切られてしまう」。つまりクライアントである雇用主からみれば「パーマランサー=福利厚生の負担なしに得られる“正社員並みの労働力”」になってしまう恐れもあるということだ。

 パーマランスという働き方— 仕事をくれる“クライアント”が長期にわたって固定しているからフリーランスよりパーマランスの方がいい! いや、パーマランスは新しいタイプの搾取だ! など賛否両論あると思う。契約社員とどう違うのか、パーマランスの給料は正社員並みなのか、などまだまだ実態が掴めないもやもやパーマランス、実際に「パーマランサーです!」と名乗る者が周りに出没しないか目を光らせておこう。

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Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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