増える“フリーランス”のデリバリー。

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「誰か、ちょっとアレ買ってきて」を叶えるデリバリー屋

デリバリーという仕事。それはかつて、ピザ屋にはピザ屋の、そば屋にはそば屋の専属の「専属の運び屋」だった。だが、2012年創業「Postmates(ポストメイツ)」の出現により、“誰もが”空き時間にできる仕事になってきている。つまり、フリーランスのデリバリーが急増しているのだ。
一見、自由な働き方を助長し雇用創出をしているようにもみえる。だが「ちょっと昼飯、買ってきて」と気軽にお使いを頼む利用者と、「はい、よろこんで」と飛脚になる配達員の関係って…。あれ?使うものと使われるもの。なんだか悲しいヒエラルキーがみえてこないか。

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多忙な金持ちとナマケモノの金持ちは、500円払って他人にお使いを頼む時代

 さすが資本主義国家、米国。豊かな生活をサポートしてくれるサービスを「お金で購入」する人は多い。その人たちを「ナマケモノ」と嘲笑うか、それとも仕事をくれる「ご主人様!」とおだてるか…。

 Postという好きな時間に何でも届けてくれる便利なデリバリーサービスは、2012年にサンフランシスコで誕生し、瞬く間に全米各都市に広がった。現在のサービスを展開している配達地域は、発祥のサンフランシスコから、ニューヨーク、ワシントンDC、シアトルなど。人口密度が高く、高所得者が多い地域がターゲットで、ローカルな中小店舗と地域の消費者を結びつけた「1時間以内の即配サービス」がウリだ。
 利用者は、Postmatesの専用アプリをダウンロードし、スマートフォンから店を指定して注文をする。すると、配達員が該当の店まで商品を取りに行き、注文者の自宅やオフィスまで、およそ1時間以内に届けてくれる。GPSで配達員の現在地を知ることもできる。配達料は距離に応じて5〜18ドル(約600〜2,200円)の設定。 なお、配達員へのチップは任意である。

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働きたいときだけ働く、自由な高時給バイト。正社員の副業としても人気?

 ニューヨークで同社の提携先として目立っているのは飲食店。2015年春には、あのマクドナルドやチポートレ(メキシカンチェーン店)など、米国メガチェーン店との提携を発表し飛ぶ鳥を落とす勢いでビジネスを拡大させている。
 だが、それは「食事のデリバリーは贅沢である」という考えの私にとってはどうでもいいこと。もっぱら気になるのは、サービス内容よりも利用者よりも、配達員として働く人である。

 採用条件は18歳以上。学歴、(デリバリー)経験は一切不要。必要なのは、「米国政府発行のID」「銀行口座」「スマートフォン」「配達に使う車両(クルマ、自転車、スクーターなど)」だけ。日本だと、最低でも「原付バイクの免許」が必要なイメージだが、これが「自転車で良し」となると敷居はグッと下がる。
 ITを駆使し、スマートフォンのアプリによって配達依頼の指示がされるため、通常の“アルバイト”よりもフレキシブルな勤務をすることができる。働きたいときだけ働く、そんなわがままもまかり通ることから、学生やアーティスト、フリーランスを惹き付けている。また、「夜間だけ」「週末だけ」といった働き方も可能なので、正社員フルタイムワーカーの副業というケースも増えているとか。

 Postmates情報によると、配達料のうち、80%は配達員、20%はPostmatesの収入になる。また、今年行われた「TechCrunch」というイベントでの同社CEOの発言によるとまた、ピークの時間帯は、平均時給19ドル(約2,300円)前後、さらに経験者によっては時給25ドル(約3,000円)まで稼ぐことも可能だそうだ。
 もし、この数字が事実ならば(「平均時給が19ドルなんて大ウソだ!」という声もある)、この時給は他のパートタイムの仕事と比べるとかなり割高。カフェのバリスタやリテールショップの販売員(時給1,500円程度)より40〜50%も高いことになる。

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社畜になったら負けか。いや、社畜になれないからPostmates?

「自由な働き方を選んでいる」というと聞こえはいいが、「postmates」配達員を見ていると、残念ながら「自由を謳歌している」ようにはみえない。

 というのも、私が日々入り浸っている飲食店で、ここ一年の間に「postmates」配達員を見かける頻度が激増した。だが、なんというか「定職につけないから経験不問のこの仕事に尽きました」感が否めない。中でも英語を第一言語として話す有色人種が目立つ。
 経験不問とは、言い換えれば「素人で結構です」ということで、配達員の多くは、分かりやすくデリバリーの素人。一体、最初のオリエンテーションでどう教わったのかは知らないが、まず、入店すると、ぶっきらぼうに「“postmates”」と一言。配達員の多くは、何をピックアップしにきたのかも把握しておらず、スマホ画面を突き出し、オーダー内容を店員に確認させる、的外れな質問・注文が多く手間をかけさせる、など、少々鈍臭いのが特徴だ。さらに、いい大人なのに「仕事するのにその服装か?」という第一印象の悪さも共通項。ずり下がる腰パン、前身スエット姿、ヘッドフォンを外さないなど、その仕事に対する省エネモードには絶句。中には、中学生くらいの子どもに変わりにピックアップさせていた配達員も存在し、これには店長もさすが呆れPostmates本部に通報していた。

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GPSで見張られるその仕事って奴隷ジョブ…とはさすがに言いすぎか。

 これらの光景を目にしていると「postmates」という仕事に対する違和感は膨らむばかりだ。もちろん、配達員の全員がそんな悪質なわけではない。中にはプロフェッショナルと呼ぶに相応しい見上げた対応をみせる配達員もいる。が、それは極少数だ。しかも、できるメッセンジャーは、どんどんPostmatesを離れていると聞く。理由は「割りの悪さ」。食べ物というのは厄介で、オーダーミスや混んでいると予定時間に商品が用意されていないなど、自分ではどうしようもないところで予測不可能なトラブルがおきるのだそうだ。
  
 となると、やはり残るのは“素人デリバリー”たち。好きな格好で働ける「パーソナル・ショッパー」といえば格好もつくが、内情を知れば知る程、これってサービスを利用する側にとっての都合のいい「使いっ走り」じゃないかと思えてくる。悲しいかな、配達員たちの向上心のなさが、一層その立場を落としめ、メンタルの格差を広げているようにも見える。他人のために、長蛇の列にならび、商品を購入し、一刻も早く届けなければならないという使命。そこにプライドを持つか持たないか。紙一重だ。めんどくさいと思った瞬間にその仕事は奴隷ジョブ。とはさすがに言いすぎか。


Photos from the top
Mina Esteves
Emmanuel Rosaio

 

 

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