米国のはなしだが、「胸を張って育児をしている」父親は39パーセントらしい(ピュー研究所、2015年)。対する母親は51パーセントという結果から、父親の方が子育てに対して自信がないということがうかがえる。父親の育児に対する“自信のなさ”は、父親に向けた“子育て情報の少なさ”に比例するのではないか。そして、その情報を“心に響く”ように届けるメディアがないからではないか。
そこで、父親、とくに新米のミレニアルパパたちが読みたくなるようなコンテンツをつくろうと2015年に誕生したのが、育児情報サイト「ファーザリー(Fatherly)」。新米パパのためになる育児情報はもちろん、子育てにもってこいの商品紹介、父と子にまつわる世界のニュースや、父親が執筆したエッセイなど幅広いコンテンツで、「どうやっていい子育てすればいい?」の問いにヒントをあたえてくれるメディアだ。考案者は、自身も父親業をこなすサイモン・イサックスと、若い独身男性向けライフスタイルメディア「スリリスト(Thrillist)」創業メンバーのマイケル・ロスマン。サイモンは、「父親のためのおもしろいメディアがない」と嘆いていた張本人。そう感じるのは自分だけではないはずと「ミレニアル世代の父親に焦点を合わせたプラットホーム」をつくった。
The Best High-Tech Gear for New Parents https://t.co/yT9moFj16x
— Fatherly (@FatherlyHQ) 2019年1月16日
8 Things I’ve Learned About My Kids (And Myself) Since Living Alone https://t.co/9aTmslQbzw
— Fatherly (@FatherlyHQ) 2019年1月17日
もっとも、父親のための育児情報サイトはこれまでにも存在していた。たとえば25年以上運営し無料の電子書籍やウェブセミナーをダウンロードできる「ファーザーフッド(fatherhood)」や、子どもとの接し方に関するヒントを毎週メールしてくれる「ファーザーズ(fathers)」、日本でも30万人のパパが利用、パパにとって必要な妊娠・出産・育児の情報を提供してくれる無料アプリ「パパninaru(ニナル)」など。しかし、ファーザーフッドやファーザーズに限っては、アカデミックというか、ザ・学びっぽいというか。サイトのつくりも味気なく、文字だけでキャッチーさはない。言ってしまえば「テンションがあがらない」。ファーザリーがこれらと一線を画しているのは、サイモンも「ミレニアル世代の父親から大きな関心を得られるはず」と言い切れるそのコンテンツ内容にある。とにかく、カルチャー・ポップ寄りの切り口が独特なのだ。
たとえば…、
・「ウィスキーをつかって料理しよう」6つのレシピ集
・娘へのトイレトレーニングの教え方
・ゲイの父親がその胸の内を綴ったエッセイ
・離婚後のシングルファーザーが学んだこと
・子どもと早いうちから定期的に“性”について会話するのがいい理由
・ヒップホップにおける父親像を変えた「Jay Zの右腕」にインタビュー
・今年バズった「父ちゃん動画ベスト9」
といった、いままでなかったような目線での記事コンテンツに、
・「いますぐ良い夫になる方法」
・「変態扱いされることなく妻に性癖を伝える方法」
“夫”として、いち“男”としての妻への接し方を伝授するアドバイスも。
Every Day Is Groundhog Day As a Gay Dad https://t.co/wzEJLR84jR
— Fatherly (@FatherlyHQ) 2019年1月18日
Cooking With Whiskey: 6 Recipes That Use Bourbon, Scotch, and More https://t.co/tJZwQj3MKd
— Fatherly (@FatherlyHQ) 2019年1月18日
Valentine’s Day Ideas: 100 Small, Nice Things to Do for Your Wife https://t.co/fh4rtpV6EZ
— Fatherly (@FatherlyHQ) 2019年1月17日
個人的には「ジェイソン(37)が妻を亡くした後、自分は親としてやっていけると気づいたときの話」にホロリ…。
実用的かつちょっとエンタメ要素のある親近感と好奇心の湧くコンテンツが、従来の父親向けサイトに比べ人気を集める。また、サイトにいくとわかるが、我が子の年齢によって“父としてのアドバイス”が分類されている。“出産前の子づくり期(Trying & Expecting)”では「体外受精の費用の見積もり方」や「ベストな出生クリニックの見つけ方」と妻をサポートする情報が、“ティーンの思春期(Tween & Teen)”では、「冒険心をもった子どもに育てるにはどうしたらいいか」など、我が子の成長にともなう父親の成長に合わせたアドバイスがうれしい。
爆笑動画のインスタに、有名人パパがトークするポッドキャスト
約13万人がフォローするインスタは、爆笑・失笑・笑顔がこぼれること間違いなしの動画の洪水だ。兵役を終えた父と再会しハグするキッズの感動ムービーから、右手に我が子、左手にダンベルをもち筋トレするムキムキ父ちゃんのおもしろ動画など。毎回、内容にハマるキャプションも忘れず添えて投稿する。たいてい、いち動画につき1万以上の再生回数、と一種のテレビチャンネル化している。静止画も負けていないぞ。マーメイドのコスプレでプールサイドで娘とうつる愉快な父ちゃんや、娘にマニキュアをしてもらっている元レスラー俳優ザ・ロックなど、パンチ効きすぎ。
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爆笑動画も。辛いぜ、父ちゃん。
昨年から開始したポッドキャストでは、有名人パパをゲストに招待。これまでに、実力派シンガーのジョン・レジェンドや俳優のロバート・パトリック、14人の子どもがいる(!)NFLのアメフト選手アントニオ・クロマティが出演した。視聴回数100万回超えのユーチューブ・チャンネルでは、子を授かったばかりの俳優・コメディアンのエヴァンが「いかにして立派な父になるか」をドキュメントしたシリーズをはじめ、育児アドバイスシリーズや我が子の自慢シリーズなど、父ちゃんの琴線に触れるコンテンツが充実(ちなみに、以前取材した10歳のドラァグキッズ、デスモンドくんと父親をフィーチャーしているビデオも)。
これまでの教育的でどこかお堅い印象の情報サイトにはなかった、エンタメ・ポップ・キャッチーがキーワード。“これまでにない父親向けカルチャーメディア”として、世の父親をエンターテインさせている。
「イクメン」という言葉が世に浸透して、ずいぶんと経つ。ママをサポートするパパが増え、それにともない子育て中の働き方を考慮する企業が増えたおかげで、父親による子育ては流行から“日常”へと定着しつつある。となれば、パパにだって葛藤や悩みを解決、ときには笑いとやる気を提供してくれるファーザリーのような場が必要なわけだ。
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Eye catch image via Fatherly Official Website
Text by Yu Takamichi
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine