• STYLE
  •      
  • Dec 1, 2015
人間業だけがつくる音楽、“クラフト・エレクトロニカ”
Pocket

彼らの音楽は、いわば“クラフト・エレクトロ二カ”だ。「クラフト」がつけば何でもありなのかという風潮を知ったうえでこの言葉を使いたい。「人間には物理的に不可能」なブレイクビーツが人の手によって「最高品質」で再現されてしまうのだから。要(かなめ)はJojo Mayer(ジョジョ・メイヤー)、2歳からドラムの道にひた浸かってきたその男。

IMG_4137

無謀な“思いつき”に取り憑かれた男

 チチチチ、という音が、彼が手首をほんのちょっと変えるだけで変わり続け、気づけば非常に複雑なリズムになっている。シロウト目にみても、それが人間業じゃないことはわかる。ベース、キーボードともに“難しいこと”をやってのけているらしく、観客は唖然。詳しいことはわからないが各パートの前には恐らくその道のプロやらアマやらが、つんのめりながらその“技”をどうにか捉えようとしているのだから、彼らが高度なことをしてのけているのは間違いないだろう(どれだけ凄いのかは、ぜひ動画を見て欲しい)。彼ら、とはジョジョ・メイヤー率いるバンド「NERVE」。ジャンルはエレクトロ二カ。厳密にいえば、“人力”エレクトロ二カだ。

「人間以上に完璧な電子の“打ち込み”を、人間の手で再現してやったらどうだ」。2歳でドラムをはじめ、1991年にニューヨークへ渡り18歳からプロのドラマーとして名をあげ続けてきたジョジョ・メイヤーという男が、“取り憑かれた”、と表現する思いつきだった。

「元々、エレクトロ二カというジャンルはそんなに面白いジャンルではなかった。ビートは人間が叩くドラムのフェイク止まりでさ」。だが「2000年以降のデジタル世代で“人間”を超越した」と。
 ソフトウェアとハードウェアの発達により、制作されるドラムのビートはスピードと複雑さが増し、“人間には叩けない”電子音が特徴となった。ドラムサンプルを分解してスネアやハイハット、キックなどそれぞれのパーツでリズムをつくってパソコンで組み合わせるわけで、人間業ではないのは想像に難くない。

「だからそれを“リバース・エンジニア(分解して分析すること)”してやろうと思ったんだ。もう一度、今度は人間がそのビートを分解して、“再現”してやろうと思ってね」。そこからその“再現”に没頭。一日のほとんどをドラムの前で過ごした。

IMG_4000

曲作りに熟考なし。即興しかやらない。

「ドラムは2歳から。音楽はすぐに」。父親がジャズ・ミュージシャンだったため、ジョジョは生まれてすぐに音楽に囲まれた。ジャズが早くから最も親しんでものかといえばそうではなく、「ツェッペリン、ビートルズ、レイ・チャールズ、ローリング・ストーンズ。とにかくなんでも聴いたね」。故郷のチューリッヒではとにかくドラムと触れ合う時間が長かったという。ちなみにどこにも通わず、すべて独学。だからなのか、彼のドラムのリズムフレーズは、圧倒的に自由な発想力と賞賛される。

 そんな2歳で父親にドラムスティックを渡されるという状況下に生まれた幸運なのか。「人力ドラムンベース」「変態ドラマー」の異名をとるだけの再現に成功してみせた。それから「Prohibited Beats」、メンバーを変えて夜な夜なセッションをするイベントを自らはじめ、NERVEの現メンバー、John Davis(ジョン・デイビス), キーボードのJacob Bergson(ジェイコブ・バーグソン)、サウンドのAaron Nevezie(アーロン・ネベジー)と出会った。そして、ドラムだけで再現するのではなく、バンドユニットで「“人力”、クラフト・エレクトロ二カ」を披露。反響は凄まじかった。

IMG_4047

「エレクトロ二カであることに加えて、僕たちの特徴は、作曲がすべて即興なんだ」。繰り返しになるが、シロウトの耳で聞いているということを差し引いてもかなり複雑なリズムとフレーズ。であるにも関わらず「計画的な曲作りはまったくやらない」というから驚いた。
 ジャズのセッションのようなものなのか、と聞けばそれとも違うようで「ジャズはどちらかというとパズルの組み合わせのようなもの。“こういうベースライン”とか伝統的な決まりみたいなものも多い。一定のベースの上で組み合わせていく、というようなものなんだが、NERVEの音楽はルールもパート上のヒエラルキーも一切なしのゼロからの即興だから」。
 一曲を作るのには“たった一つのグッド・アイデア”があればいいという。それは、ドラムでもベースでもキーボードからでも何でもいい、と。

IMG_3980

 ブレイクビーツ、ドラムンベースを再現したから気づいたのだが、と前置きして、何ゆえ機械でできる音楽を“人力”でやるのかについてをジョジョは話す。
「正確さも再現できてまるで機械のように叩いて思う。ライブの高揚感、そのときの感情で生まれる“ニュアンス”こそ、人間業なんだ。イエスとノーの間、ゼロと1の間こそ、コンピュータの計算で表現できないものだ。それから、たとえば僕は人の生き方に影響を受けるんだけれど、他の“何ものか”からインスパイアを受けてそれを“音楽”として昇華させるのも人間業なんだ。だからこそ、ニュアンスは生きる」。そして、その人間の強みを最大限に生かした作曲は「追いつめられて本能と経験が反射的にひねり出すフレーズ」によってこそ。そう考えるから、即興のスタイルを貫く。

 電子を要としていた音楽に、それと遜色ない技術で生の人間の“熱量”が加わったエレクトロ二カ。似たような音楽が作られてはなくなっていくこのご時世に、たった一つを自分の技量で追求し、圧倒的な“熱量”を届けるバンドがNERVEなのだ。「デジタル世代に、デジタルベースの音楽の“ライブ”がどれだけ面白いのか見せたいね」と話すメンバーたち。突き抜けたエネルギーに気圧されにライブに足を運んではどうだろうか。今月(というか明日から)来日ライブを行う。


12/1〜12/3
@COTTON CLUB (東京都)
チケット情報

Videographer: Sharan Kukreja
Photographer: Kohei Kawashima
Writer: Sako Hirano

Pocket

IMG_4181
この記事が気にいったら
いいね!しよう
HEAPS Magazineの最新情報をお届けします

You may also like...