脳より「カラダが覚えてる」。思い出のつまった体の一部、ボディパーツを贈ってみませんか?
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脳より体が覚えている。時々、そんなことはないだろうか。
あの思い出は、小指に。あの瞬間は、この鼻が覚えている。あの人を思い出させてくれるのはこの唇。

そんな“人生の何分の一かの思い出”を閉じ込めるあなたの体の一部、「ボディーパーツ」を、ちょっとシュールでポップ、ファンキーなアート作品/アクセサリーにしてくれるアーティストが中国にいる。

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 彼女は北京出身のアーティスト、Yi Zhou(イ・ジョウ)。ロンドンのアートスクールでインダストリアルデザインを学んだ彼女は故郷に戻り、2014年からプロジェクト「BodyMemory(ボディーメモリー)」をスタートした。

 ポップアップショップ「BodyMemory Mobile Clinic(ボディー・メモリー・モバイル・クリニック)」とともにこれまで中国の各都市や香港、台湾、ニューヨークを周り、170人以上の“患者”さん(お客さん)を診察・治療(彼らがリクエストしたボディーパーツを作る)してきた、白衣を纏うジョウ“先生”。

 どのボディパーツが人気なの?患者さんの体には、どんなストーリーが?教えて、ジョウ先生。

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HEAPS(以下、H):まずボディーメモリーのコンセプトについて教えてください。

Yi(以下、Y):“思い出を保管できる場所、それは脳だけでなく体にもある”という仮説に基づいています。
私たちの体が覚えている記憶というのは、必ずしも聴覚や嗅覚、触覚など“自覚できるもの”ではなく、“無意識の記憶”というものは私たちの体の中、細胞レベルまで刻み込まれているのです。
皮膚や筋肉、腱、神経などが、日常生活に直結した経験、習慣、感覚などの“情報”を集めている。
たとえば、握手するとき。「右手か左手」「手のひらの温度」「握力」「アイコンタクト」などの小さな印象が私たちの記憶を作っていきます。

H:どんなことがきっかけでこのプロジェクトを?

Y:以前ロンドンを去るときに、友達に何か特別なプレゼントを渡したくて何となく体を形どったものがいいかなと思ったんです。結局その時は何もしなかったのですが、ずっとそのアイデアが心のどこかに引っ掛かっていて。ある時招待された展覧会で、自らのボディーパーツを形どったものを“BodyMemory(ボディメモリー)”と名付け出展したら評判が良かったのでそのまま続けています。

H:ポップアップショップのことを“クリニック”、お客さんのことを“患者さん”と呼んでいますね。

Y:(ボディーパーツの)型を取る材料は実際に歯医者さんが使っているもので、型を作る道具も医療目的で用いられているもの。またポップアップイベントなどでは予約なしで訪れることもできますし、プライベート予約をすることも可能です。クリニックのコンセプトにしっくりはまっているんです。

H:どのようなステップでアクセサリーを作るのでしょう。

Y:まずは場所と日時を決めて予約を取ってください。当日は30分ほどで体のパーツの型を取って、7日以内に商品が完成し、手元に届きますよ。

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H:お値段の方は…?

Y:ボディーパーツによりますけど、唇のブローチや指のネックレスなど99ドル(約1万円)くらいです。

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H:先生はこれをアート作品あるいは、アクセサリー、どちらだと捉えていますか。

Y:私にとっては“アート作品”ですね。患者さんにとっては、アートプロジェクトに参加しつつアーティスティックなアクセサリーを手に入れられるような”サービス”じゃないでしょうか。

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アクセサリーとしてはじまったボディーメモリー、引き続き患者さんの思い出のパーツを作っていきますが、一方でBodyMemory STORIES(ボティーメモリーストーリーズ)として、一般公募で集めた体のパーツにまつわるお話から印象的なものを選び、そのお話を提供してくれた人にこちらから連絡を取って作品を手掛けたりもします。
その作品とお話を展示するので、そういった意味ではアート作品かもしれません。

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H:一番リクエストの多いパーツはどこですか?

Y:指が多いですね。指でいろいろなジェスチャーができるから。中指と人さし指をクロスしたり(幸運を祈る意味)、3本指を揃えたり(誓いのジェスチャー)。

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H:患者さんのボディパーツに隠された思い出たち、少し教えてくれませんか。

Y:皆さんいろいろ面白いエピソードをお持ちですよ。患者さんたちは皆診察前に、なぜそのボディーパーツをリクエストしたのか各々の理由を書きます。

ある患者さんのは、おへそ。
「私の“お尻見たいなおへそ”をお願いします。真ん中にひだが入っているのでお尻のように見えるのです。前はそのことを恥かしく思っていたけど、今はこの風変わりなな特徴、だんだん好きになってきています」

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また別のお客さんは、乳首。
「10歳の時、田舎にあったお家の外で木を切っていました。私の家族はあけっぴろげでして、夏の暑い日は家族皆んな裸同然でした。横たわっていた大きな木の根っこがあって、その間を裸で駆け回っていたのですが、(根っこを燃すために起こした火の)残り火が私の左乳首に燃え移り、真っ二つになってしまいました!」

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左耳をオーダーした患者さん。
「アートスクール時代、鋳型の耳を詳細に模写するという課題がありました。教授が私のところに周ってきたとき、彼は絵を差し置いて、私の耳に魅了されてしまって。彼はおもむろに私の鉛筆を取り、私の耳の模写を描いたのです」

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H:皆さん、濃ゆいエピソードをお持ちで。そのリクエストの中でも特に一番思い出に残っているボディパーツは?。

Y:ある日、5歳の娘の歯を型にしてほしいとリクエストしたお母さんがいまして。その子に口を開けると、下顎の前歯が小さく小さくニョキっと新しく生えてきてたんです!

H:なんと可愛いらしい。成長の証としてきっと一生の宝物になりますね。あと、一番衝撃的だったのは?

Y:ペニスの先とお尻の穴です。ニューヨークでのポップアップイベント中に立ち上げたバレンタインデーの特別企画「hate series(憎しみシリーズ)」に寄せられた二人の患者の要望でした。

 ペニスをリクエストした彼はこう理由を綴っていました。「数年前のバレンタインデーにこう思った。なんで愛し合っている人同士でしかプレゼント交換しないんだろうって。嫌いなやつに何か贈り物してもいいんじゃないか?俺の人生にいる“dickhead”(亀頭のこと。英語では転じて、嫌な奴のことを指す)たちへ。俺はすごいものを贈るぜ」。

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H:ぶっ飛んだ発想…。製作工程で一番難しいのはどこですか。

Y:固まった石膏のボディパーツを型から取り出す時です。石膏が壊れないように、息を止めながら取り出します。

H:先生は、参加者が自分の指を作ることができるD.I.Y.キットのワークショップも開いているそうで。みんなの反応はどうでしょう。

Y:みんな科学の実験クラスを思い出すって口にしています。指をの型を作り、その中に液体の石膏を流し込み、固まった“指”を取り出す瞬間はみんな恐る恐るといった感じですが…。そのあとは写真を撮ったりして楽しんでいますよ。

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 この夏にはデトロイトに期間限定ショップを立ち上げる先生。世界中の人のボディーパーツから世界に一つだけの物語がどんどん語られていく。

 日本に先生が来るとき、あなたはどこのボディパーツをお願いしますか?

***

 ちなみにボディーパーツだけでなく、故郷北京の旧城内に残る昔ながらの路地「胡同(フートン)」や建築をモチーフにした消しゴム(“Hutong Eraser”)や、

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思わず食べたくなってしまうようなガラス製の中国のお菓子たち(“Box of Chinese Pastry”)

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など、中国らしさが滲み出る作品も。

BodyMemory

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All images via Yi Zhou
Text by Risa Akita

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