自らにシャッターを切り続ける「奇妙なカップル」、愛の探求プロジェクト

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欠けていたら補い合う。ファインダー越しに覗く美しくも奇妙な愛のカ

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「可愛い」。一目で虜になった。雑誌に引っ張りだこの一風変わったセルフポートレートシリーズを発信しているのは、マルチデザイナーでありアートディレクターのレタ・ソバイアイスキ(上写真左)と、デザイナーでありアートディレクターのウェイド・ジェフェリー(右)だ。

「Complements(コンプリメンツ)」”補い合うものたち”とでも訳そうか、このプロジェクトでは2014年4月から現在に至るまで50を超える作品のために、シャッターを「自分たちに向けて」切ってきた。
「愛のカタチを表現する」ためにはじめられたというが、”普遍的な愛”を二人のクリエイターが表現しようとするのではない。これは”二人の愛”の表現を追求したもの。彼らは、正真正銘のカップルだ。そんな二人の素顔を覗きに、日々、愛のポートレイトが生まれている彼らの自宅へ向かう。

 さて、“一風変わった”と前述したが、筆者がああだこうだ並べるより、ご覧頂いた方が早い。

「二人のキッカケ?出会い系サイトだよ」

 お互いグラフィックデザイナーだがそれまで一緒に仕事をする機会はまったくなかったという二人。それで、「『お互いがお互いを必要とする』個人的なプロジェクトをはじめよう」ということになったのがはじまりだという。

「僕が裸で朝食を作りながらうろうろしているときに、そんな話になったんだ(笑)」

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 現在はフリーランスとして働くレタ。昨年、アメリカのデザイン誌プリントマガジンにて、30歳未満の国際的デザイナー20人に選ばれた。クライアントにはGoogleやIBMといったビッグネームが名を連ねる。

 一方、オーストラリアはメルボルン出身のウェイド、現在マンハッタンにある広告代理店に勤務。プライベートでは、7月にニューヨークの「+81 Gallery」にて自身初となる個展を開催。開催期間が延長された程の人気ぶりだった。

 そんなクリエイティブな二人が出会うのはごく自然な流れかと思いきや、意外にも「オンラインデーティングサイト」がキッカケ。

「プロフィールにね、”Grid Systems”の愛読者のみメッセージして!って条件を書いたの」。説明しよう、”Grid Systems”とはスイスのグラフィックデザイナー、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンの名著で、グラフィックデザイナーしか読まないであろうマニアックな一冊。そこにウェイドがメッセージを送ったというわけだ。共通点が多かった2人が付き合うまで、時間はかからなかった。

「付き合って二年半。こんなに長く続いたのは初めてよ」。そう顔をほころばせる。

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泥酔、爆睡、おかまい無し。アイデアは常に共有

「一緒に住んでるからこそ出来るプロジェクト」と二人は話す。お互いフルタイムで働いていることと、職業柄フレキシブルなスケジュールを持てないため、同居前にそれに時間を費やすのは難しかったそう。ただ昔からアイデアが浮かべばその都度メモを取り、シェアすることは欠かさない。

「僕は、レタが眠ってる早朝でも、べろべろに酔っぱらってる夜中でも、ひらめいたらとにかくアイデアを伝えるんだ。ヘタクソな下書きでこれでもかってプレゼンするんだよ」

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Tumblrのデザイナーとだってコラボしちゃう“カップルセルフィー”

 彼らに取材したのは、蒸し暑い日が続いていた8月中旬だったのだが、最新作として更新されていたのは初となる「他のアーティスト」とのコラボレーション作品。
 1年前に仕事を通じて出会い、「いい友人関係」というその相手とは、スキップ・ハラッシュ氏、日本でももうすっかり浸透しているブログ型SNS、Tumblrのデザイナーだ。

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「僕らの仕事の進め方はとってもシンプル」で、まずスキップが提案したイメージをレタとウェイドに共有し、次に二人がスキップにフィードバック。仲介を挟むことなく、友人関係にあるからこそ出来る、”気軽にダイレクトに意見を交わす”ことで、いいモノを創るベストウェイが生まれるとのこと。今後はこういった横の繋がりのコラボレーションの機会を増やし、よりスケールの大きな活動をしたいという。

地球上で一番好きな場所は「エヴァンゲリオンワールド」

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「これまでの特に思い出深い作品は」と聞いて挙がったのは、なんと日本の日の丸国旗を顔面にペイントしたもの。
「これはね、日本旅行の1週間前に撮影したの。この時の私たちの興奮具合ったら!」と、超がつく程日本が大好きな二人。特に漫画に目がない彼らのお気に入りスポットは富士急ハイランドにある「エヴァンゲリオンワールド」。
「Complements」に綾波レイと碇シンジが登場する日も遠くなさそうだ。

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ユーモアとロマンスが最大の武器

 撮影用のネタやアイデアがたっぷり詰まったオフィスを指差し、レタは話す。「ウェイドが来る前はね、ここが私のプライベートルーム兼オフィスだったの。それまではベットから飛び起きて、クルクル回転しながらデスクに座って、仕事開始!っていう生活だったわ」

 旅行好きだったルームメイトが部屋を出たタイミングで、運良く転がり込んだというウェイド。生活を共にすることで同じ時間を共有し、カップルであるという強みと互いのユーモアを最大限に活かしたのが、「Complements」だ。

 タイトルに「奇妙」と表記したが、彼らが「奇妙」を意識しているわけではなく、互いの職業柄に持つユニークなアイデアやパーソナリティが、作品の方向性をそうさせる。そうした個々の才能を強調し、補い合いながら、二人の関係性を探求しているわけだ。風変わりな美学と歯切れの良いセンス、これからどれだけユニークな「愛の記念写真」が生まれるのか楽しみだ。

Screen Shot 2015-10-05 at 7.17.39 PM

Photographer: Kohei Kawashima

Writer: Yu Takamichi

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