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  • Jan 10, 2016
いま、「ヨガとビール」の相性、急上昇中。
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人は何をしにクラフト・ビールの醸造所に行くのか。もちろん、出来立ての美味しいビールを味わうためである。では、そのビールをより美味しく頂くためにはどうすればよいか。
答えは「飲む前にヨガ」らしい。

ほのかに鼻をかすめるホップと麦芽の香り…。ヴォーーーーンという低音に、ポコポコと弾けるような軽快音。そこに「ナマステー」の声が重奏する。

「行く行く詐欺」の友達も、ご褒美に惹かれてヨガの世界へ

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 近年、米国では「ヨガとビール」の関係が、ちょっと面白いことになっている。「#BeerYogi」のハッシュタグも盛りあがりをみせている。だが、もともとは対極の星に生息していたはずの「ヨガ」と「ビール」。一体、いつから「コラボ」する仲になったのだろうか。

 調べてみると、このムーブメントの火付け役といわれている一人のヨガ講師が見つかった。彼女の名はBeth Cosi(ベス・コーシー)。ことの始まりは2011年の10月に遡る。
 きっかけは、「地元のビール醸造所でヨガクラスをやれば、普段ヨガクラスに誘っても来てくれない友人(特に“男友達”)にヨガを経験してもらえるんじゃないか」というヒラメキ。ちょうど、地元サウスカロライナ州のチャールストン地区のビール醸造所「Holy City Brewery」で友人の一人が働いていたため、彼に話しを持ちかけたところ、直ぐに実現につながったという。
 それまで「今度は必ず(クラスに)行くよ!」と言いつつ、一度もヨガスタジオに現れたことのなかった友人たちも、「ブリュワリー」には現れた。ベスの期待通りだった。ヨガクラスの後は、できたて美味しいビールを飲みながらみんなで談笑。
「ビールがいつもより美味しく感じる。ヨガのお陰かな!」と大好評。

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フタを開けてみると「プラスしかない」

 そんな「ブリュワリーでヨガ」の噂は口コミであっという間に広がった。いち早く盛り上がりをみせたのは、米国西海岸、もともと“クラフト”ビールと“ヨガ”の両方のカルチャーが根付いていたエリアだ。
 というのも、「コミュニティ」「つながり」「クオリティ」「創造性」を大切にするライフスタイルを持つことに積極的、且つ、「自分のお金は自分が属するコミュニティの中で使う」ことにプラスアルファの価値を求める考え方を持った人たちが多いエリアにフィットしたのは、偶然ではなく必然だったといえる。

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「ヨガとビール」のコラボレーションは、ベスのようないちヨガ講師とっても、地元の小規模ブリュワリーにとっても、プラス要素が大きかった。たとえば、コラボレーション前のベスの顧客は、ヨガスタジオに通う「健康意識の高い人たちで、女性が多かった」。一方で、ブリュアリーは、どちらかというと男性客が多数を占めていた。よって、双方の既存の顧客ベースの外にも訴求できるという意味で、二重にプラスだったのだ。
 思えば、2015年の夏、あの超人気ヨガウエアブランドのルルレモンが「クラフト・ビールを発売する」という目を疑うような出来事もあったが、それも男性顧客を増やすための戦略であり、「ヨガとビール」の流れにちゃっかり乗っかっていたというわけだ。

ビールが呼んだ、男女比5:5の奇跡

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 ベスは「ビールというご褒美がなければ、ヨガを敬遠していた友人たちにヨガを体験してもらうことはほぼ不可能だったと思う」と冗談まじりに話す。それまで、ヨガスタジオでのクラスでの参加者の男女比は「女性が7-8割、男性2-3割」だったが、場所をブリュワリーに変えただけで「男女比は5:5に!」。この比率は、米国のヨガクラスでは非常に珍しいケースなのだそうだ。

 また、参加者の多くはヨガ未経験者。ヨガには興味あったが、ヨガスタジオって、なんだか(健康)意識が高くないと入りにくい雰囲気で…、と距離を置いてきた人たちだ。「でもブリュワリーなら、他の参加者とも仲良くなれそうで参加しました」という声の多さには、ベスも「ヨガスタジオってそんな風にみられていたんですね…」と一驚。

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 それまで、パートナーや奥さんに、半ば強引に“連れてこられて”ヨガクラスにきていた男性は、「せっかくクラスにきても、自分のためではなくパートナーのためにヨガしているという感じなのが残念でした。けれど、ブリュワリーでは、誰かのためではなく『自分のために』ヨガをおこなってくれているのが嬉しい」とのこと。

“生真面目ヨギー”に叩かれた過去

 2014年頃にはメディアに取り上げられることも増え、気付けば「Detox & Retox(デトックス & リトックス)」という「ムダなものを体外に出して、美味しくビールを飲んじゃいましょー!」と、なんだか楽しそうな謳い文句まで生まれていた。

 ベスは「あくまでも私が伝えたかったのは、ヨガにも“クラフト”ビールにも共通する、”Bringing people together(人と人をつなぐ)” というカルチャー」であり、だからこそ、メディア取材にも応じてきた。だが、皮肉にもムーブメントの火付け役として「Beth Cosi」の名前が紹介されればされるほど、ベスの元には批判的なコメントが寄せられるようになった。ニューヨークタイムズ誌(ウェブサイト)で取り上げられた際も、コメント欄には「ヨガという神聖なものへの冒涜行為だ」「どうせ、ただの金儲け目的」「善人の皮をかぶった拝金主義者だ」といった辛辣な言葉が書き込まれた。

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「いつの時代も、前例にない新しいことをした人は、叩かれるもの。『気にしない方がいい』と自分に言い聞かせてはみましたが、さすがに気分は沈みましたね」と振り返る。それでも辞めなかったのは、参加者たちの励ましがあったから。
「あなたの『ヨガ×ビール』のクラスのお陰で、今まで出会わなかった人たちと知り合うことができました」という参加者たちの声に「支えられた」。
「実際、私自身も、より多くの人に出会う機会が増えたことを一番嬉しく思っています。クラフトマンシップの素晴らしさを分かち合い、地元の人たちとサポートし合える良好な関係を築けたことは、なによりの財産ですね」と、なんだかビール醸成所にはポジティブなエネルギーがみなぎっている。殺風景だったビール醸成所に、カラフルなヨガマットが鎮座。そんなコントラストも意外と悪くない。

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Photos Via Beth Cosi
Writer: Chiyo Yamauchi

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