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  • Jun 24, 2017
「新しい服を作るのに、新しい生地は要らない」。古着ジーンズだけで服を生むNOORISMが引き出すジーンズ・真の可能性
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「新しい服を作るのに、新しい生地は必要ない」。環境を汚染し労働力を搾取し、粗悪でも売れるものを大量生産する。その業界に辟易して、ファッション大学を卒業し順風満帆に歩を進めていた彼女は盤上から降りた。「二度と戻らないと決めていたんだけれど」。もう一度、この業界に足を踏み入れる彼女が手にしたのは、古着のジーンズだった。

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使用する生地は「古着のジーンズだけ」

 ノア・ザッカ(Noor Zakka)の手によってジャケットに姿を変えたジーンズたちの名残は、ディテールから見て取れる。たとえば、ジャケットの肩部分に目をやれば、ジーンズのポケットが使われていたり、裾がそのままジャケットの裾になっていたり。
 彼女がデザイナーを務めるブランドNOORISM(ノーリズム)のプロダクトは、帽子もバッグもすべてオールド・ジーンズ(古着のジーンズ)から生まれている。古着ジーンズを大量に仕入れて“生地にする”ところからはじまるため、新しい生地のように一度に30枚重ねて裁断、というわけにはいかない。

「商品として生産できる適切な素材を見つけるのが大変。ジーンズ1着ずつ確認して、染みがないかなども吟味しながら選ばないといけません。古いジーンズはサイズや風合いが違うため、ひとつづつ、調整しながら裁断していきます」

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オフィス兼スタジオは、ブルックリンのシェアビルディング内に。

 新しい生地は使わず、捨てられるか発展途上国に輸出されるジーンズ、あるいは生産過程で出る布の切れ端も使うため、彼女の服作りは、バラバラにしたオールド・ジーンズの生地をパズルのように組み立てていく、という表現がしっくりくる。最初からかっちりとしたデザインは行わず、スケッチもほとんどしない。「生地の上でレイアウトするという方法ですね。ジーンズをバラバラにしてできたデニム素材を、製作過程でどのようにプロダクトに変えていくのかを導き出していきます」。その、いわば制限だらけの製作が醍醐味、と言う。

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NOORISM。新しさを生むために、他のデザイナーとのコラボレーションも積極的に行う。

順風満帆のさなかで去ったファッション業界   

 ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でデザインを学び、マーク・ジェイコブスでのインターンシップにザック・ポーゼンではデザイナーとして働いたが、「さまざまな生産過程において環境に悪影響を与えるような業界の一部になりたくないと思った」。一度辞めるも、業界の問題を少しでも解決する糸口がないか、とサステイナブルな素材を探している時に出会ったのが古いジーンズだった。

 古着のジーンズを使うことで、新しい生地を使う必要がないこと、また、最後まで売れ残った“輸出予定”のジーンズを使用することにも言及する。「この国で行き場のなくなったジーンズは発展途上国に輸出される。その輸出された服が多く出まわる程、その地域の経済に悪影響をあたえます」。たとえば、服が多く輸出されたケニアでは、1980年代には織物工業では50万人の雇用があったが2万人にまで減少した。発展途上国でも大量に輸入されて行き場のなくなった先進国の服が、ゴミ山のように押しやられている光景も珍しくはない。

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NOORISMの服を購入すると、一着ごとに5ドルがチャリティ・ウォーター(Charity Water)に寄付される。

ジーンズの醍醐味は「着古されてから」

 とはいえ、善意だけの服作りではない。サステナブルを根本に据えるが、ノーリズムのプロダクトはそういった、いわば作り手の背景を無視したとしても人を惹きつける。ジーンズにはサステナブル以前の魅力があるからだ。

デニムはどの年代にも好かれる生地ですね。さらに、年間を通して着られる生地です。それに、分厚く高品質なものの多い古いジーンズは、ストレッチがなくてとても縫いやすい。生地として再利用するには最適なんですよ。また解体することで、影の違いや色の変化に気づき美しさを感じます」。サステナブルであり、同時にデザイナーである自分を刺激しおもしろがらせる素材であったから“惚れ込んだ”わけだ。履き古されたジーンズには、新品当時にはなかった「一本一本の違い」があり、濃淡の千差万別を持ったオールド・ジーンズは、正直に、真っ当に服を生み出したい一人のデザイナーをファッション業界に引き戻した。

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 青・藍の濃淡のみのたった一種の生地で、毎シーズン、新しさと発見をプロダクトに落とし込んでいくのには「やっぱり苦労します」。特に、冬のシーズンはデニム生地一枚では(寒くて)着られないから難しいそうだ。それでも、「新しい服を着ては捨てる現代に、オールド・ジーンズのこの服で、長く着る、という美学を伝えたい」とノア。トレンドでありながらクラシック、すべての年代に訴求できるジーンズの髄を伝える試みだ。

Interview with Noor Zakka from NOORISM

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NOORISM
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Photos by Sako Hirano
Text by Akihiko Hirata
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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