離婚からはじまった、“とあるイラストレーターと愛犬”のシンデレラ・ストーリー
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「SNS名物犬」の誕生秘話

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31歳の誕生日、「僕は嫁に逃げられました」。「人生で最も悲しかった日」をそう振り返るのはブラジル人イラストレーターのRafael Mantesso(ラファエル・マンテッソ)。世間が「シンデレラボーイ」と騒ぎたてる、噂のインスタグラマーだ。

「すべてのはじまりは、離婚から」

 捨てる神あれば拾う神あり、ということか。離婚を機にはじめたインスタグラムに投稿していた作品が、世界的有名ファッションブランド「Jimmy Choo(ジミー・チュウ)」のクリエイティブディレクターの目に止まってコラボレーションが実現、なんてミラクルが起きることだってあるのだから…。
 2015年5月、ジミー・チュウ(JIMMY CHOO)からデビューした犬とイラストのポップなデザインが可愛いスペシャルコレクション「CHOO HOUND」。起用されたブラジル人イラストレーターは、それまでまったくの無名。Instagramから発掘されたSNSドリーマーのはじまりは彼にとって人生最大の「悲劇」からだった。

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 31歳の誕生日、嫁に逃げらた日。自宅の家具やインテリア、壁にあった絵や写真…、彼女は家にあった全てを持って「去った」。だが、一つだけ、残してくれたものがあった。愛犬「(Jimmy Choo)ジミー・チュウ」だ。
「前妻は、大好きな靴デザイナーにちなんで、イングリッシュ・ブルテリアの彼(犬)を『ジミー・チュウ』と名付けたんです」。 
 すっからかんになった自宅の白い壁は、より一層、ラファエルの孤独を駆り立てた。
「僕もすぐに引っ越そうと思っていたので、新しい家具は買わずにいました。けれど、真っ白な壁の無言の圧迫に耐えられず、次第に壁に自分で絵を描いて気を紛らわすようなったんです」。ラファエルが絵を描いている間、愛犬ジミーはいつも彼のすぐ側にいた。「座っていたり、ゴロンと寝そべっていたり…。ある日、床に寝そべっているジミーの周りにイラスト描いてみた」。すべてはここからはじまったという。

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カウンセリングに行くと「アスペルガー症候群」と診断される

「いま思えば、僕が自宅で創作活動をしているとき、ジミーはいつも僕のそばにいたので、このコラボレーションは必然だったというか、自然な流れだったというか…」。ただ、妻に去られ、家がすっからかんにならなければ、決して思いつかなかっただろう、と振り返る。

 ライン・ドローイングに愛犬のポートレートを組み合わせた作品の可愛らしさに説明は不要。それでいて、クスっと笑顔を誘うユーモアもある。悲しみのどん底から生まれた作品だったとはとても信じ難い。
「対人関係を築くのが苦手で内向的なのは昔から。けれど、離婚の衝撃は別物で、ひどく落ち込みました。それでカウンセリングに行ってみたところ、アスペルガー症候群だと診断されました。『ドローイングが良いリハビリになるのでは』とのことだったので、家に隠って絵は描き続けていました。当時の僕には、ジミーすべて。僕のベストフレンドであり、最大の理解者でした」。そんな、独り身になってからひとしおに感じた愛犬への想いを「描く」ことで、気持ちも浄化されていったという。「不思議だった。どんなに僕の気持ちが塞ぎ込んでいても、ジミーを軸に創作すると作品は遊び心いっぱいになるんだ」

Instagramのフォロワー5倍、本家「Jimmy Choo」からオファー

 インスタグラムへの最初の投稿は2014年初旬。そして同年8月、ビッグウェブサイト「バズフィード(Buzzfeed)」「ボードパンダ(Boredpanda)」「ヤフー(Yahoo)」などに続々と掲載されたことがターニングポイントになった。「それまで僕たちのフォロワーは2万人(20K)程でしたが、それがあっという間に5倍、10万人(100K)を超えました」。

 可愛い犬の写真やイラストの投稿ならいくらでもあるが、「犬写真とイラスト」を組み合わせたアイデアは新しかった。すぐさま国境を越えて話題に。世界中のインスタグラマーたちを虜にした。その中には、あのJimmy ChooのクリエイティブディレクターSandra Choi(サンドラ・チョイ)も。直ぐさま大ファンになった彼女はラファエルに直接アプローチをはかった。「是非、あなたとコラボレーションがしたい」。
 ラファエルは「夢の様な出来事で、感謝の気持ちでいっぱいです」としつつ、「すべては、これまで(イラストレーターとして)培ってきた努力と継続あってこそだと思っています。それをなくして、突然朝起きたら、素晴らしいアイデアがひらめく、なんてことは無いですから」と話す。離婚直後は、悲しすぎて、働く気になどなれなかったという。だが「それでも私は、創作活動を辞めなかった。どんなに辛くても仕事から逃げたことはありません」。

 15年9月には、遂に書籍化(題:『A Dog Named Jimmy』)もされ、さらなる注目が集まっている。現在は「シェルターにいる捨てられた犬たちを救うプロジェクトに注力している」そうだ。

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他作品は、ラファエロのInstagram:@rafaelmantessoから。

website:
jimmythebull.com

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All image via Rafael Mantesso
Writer: Chiyo Yamauchi

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