2009年、希望と期待を一身に背負ってアメリカのトップに立った男といえば。そう、オバマ大統領。
ついに来年1月、8年間の任期を終える彼は、先月30日、任期中最後となるホワイトハウス記者晩餐会に出席した。
政界やセレブリティ、報道関係者が集まったその一夜、ドナルド・トランプを槍玉に挙げた辛辣ジョークや自分が年取ったことをネタにした自虐ジョークをぶっ放し、抱腹絶倒の30分にもおよぶスピーチを披露した。
そして、いま話題の、自身の辞任についての締めくくり。
「最後に二言だけ」と前置きして言い放った、「オバマ・アウト」。その言葉と同時にマイク落とし(Mic Drop。パフォーマンスを完璧にできたときにラッパーがする仕草)をしてみせ、演説台を離れたのだ。スタンディーグオベーションの大団円で晩餐会は終わった。
(その模様はYoutubeで見られるので、ぜひチェックしてみて欲しい。最後の30秒くらい)。
当選困難だったオバマ候補。彼を勝利に導いた動画と、影の立役者
バラク・オバマ。1961年、ケニア出身の留学生だった黒人の父とカンザス州出身の白人の母の元にハワイ州ホノルルで生まれた。
ジョン・F・ケネディやジョージ・ブッシュ元大統領のような白人の政治家一家出身でもない彼が初の黒人大統領として当選するのは決して容易ではなかった。
白人保守層からの根強い反発や「反イスラエル的な政策を掲げている」というユダヤ系からの反発、また「オバマ候補はイスラム教信者!」だという誹謗中傷キャンペーンなど、彼を大統領とさせないような負の要素だらけ。
Photo by Justin Sloan
そんな中、8年前ある広告クリエーティブエージェンシーが作った“アイデア勝ちな動画”が、彼を救ったのだ。
それは、『THE GREAT SCHLEP(ザ・グレート・シュレップ、偉大なる旅)』という題名のキャンペーン動画。オバマ候補を大統領に当選させるべく、ユダヤ系の若者層に向けて、「フロリダ州に住む彼らの祖父母のもとを訪れ、オバマ候補に投票するよう説得しよう」と呼びかけるもの。
大統領選での大票田であり、当時勝敗の肝と言われていたフロリダ州。定年退職した高齢の白人ユダヤ系が多く住む州で、保守的な住民も多かったという。そこでイスラエル人の女性コメディアンSarah Silverman (サラ・シルバーマン)を起用した動画を制作。頑固な老人たちも、「愛する孫が言うことなら…」と、耳を傾けるだろうとの目論見だった。
この動画はネットで公開され話題を呼び、公開2週間で700万を超えるビュー数を獲得、見事、オバマ候補をフロリダ州での勝利に導いた。
白人と黒人のハーフの青年が一国の大統領になったこの背景で支えたこの動画。制作、つまり影の立役者は広告クリエーティブエージェンシー、「Droga5」。型破りなアイデアで「面白い広告」をとことん追求する彼らとは? HEAPSは過去に彼らを取材していた。
▶︎【再掲載】「つまらない広告なんていらない」。世界一強い広告をつくる男たち、Droga5