テレビにCMにアプリに、猫の姿を見ない日はない。
去年は神保町の小さな潰れかけの本屋が『猫の専門本屋』に転身して売り上げを伸ばしているとか聞いたっけ。猫にまつわるあらゆる経済効果で「ネコノミクス」なんて言葉も流行り、救世主?な存在の、猫。
2月、愛猫家フォトグラファーが一冊の写真集を出版。可愛い猫ちゃんの姿でほっこり…と思いきやタイトルは『Men with Cats』、猫と男。猫とちょいイカつめ男子の、愛のポートレイト集だった。
その猫写真集、男性は必要だったのか?
動物嫌いの祖母のせいか、生まれてこの方ペットを買う機会に恵まれなかった筆者。「動物欲しいなぁ」なんて思い続け、気付けば三十路だ。
せめてネット上では、と"ネコンテンツ"を漁り中に目に留まった「男性と猫のみにフォーカスした写真集」の記事。気持ちがいい程の単純明快なコンセプトに興味を引かれたと同時に、気になった。男性は果たして必要だったのか?気になるので、本人に聞いてみた。
※彼がデイビッドではありません。
HEAPS(以下、H):愛猫家フォトグラファーさん、自己紹介をお願いします。
David Williams(以下、D):デヴィッド・ウィリアムズ、27歳。フォトグラファー。コロラド州にある写真学校に通ってたんだけど、今はブルックリンのサンセットパークで、フィアンセと、猫のマーゴとタックスと暮らしてる。動物の肉を食べなくなったよ。
H:猫、好きですね?
D:はは、愚問だよ。大好きさ。ちなみに猫ちゃん同様、犬も好き。でも、犬に比べて世話が比較的簡単だし、飼い主への選り好みもしないし飼いやすいと思う。
H:猫と良い関係を築く方法ってありますか?
D:一番大事なのは、その猫ちゃんにポジションを決定させることだと思うんだ。君が愛と餌を与える限り、彼らは君を愛し続けると思うよ。
H:猫によって望んでいる距離感、違いますもんね。では本題。男性と猫を撮り始めたキッカケを教えてください。
D:『Men With Cats』のアイデアが浮かんだのは2009年のこと。当時、食料雑貨店で働いてたんだけど、そこのボスがまたゴリゴリのメタルを聞いてる筋肉質のでっかい男でさ。でもギャップでね、ペットの猫ちゃんを何よりも愛してたんだ。それにやられちゃったんだよね。
それから周りの友だちとその飼い猫を撮るっていう、身内なプロジェクトとしてはじめたんだ。
ポートレート写真家として、男性とその飼い猫の関係性を捉えるのに興味があったし、何よりいち愛猫家として、たくさんの猫たちと遊ぶためのいい口実だったんだ(笑)
H:元々身内だけのカジュアルなプロジェクトが、出版に至ったまでの経緯とは?
D:2015年、アメリカのハフィントン・ポストやコスモポリタンといったウェブサイト上でバズッたのがキッカケ。で、知名度がグンと上がったから、今年になって出版社を見つけようと決心したんだ。
オンライン上で流行り出した当時、実は15枚のポートレートしか持ってなかった(笑)。だから必死に数を増やしたよ。
カリフォルニア、コロラド、ジョージア、ニューヨークと、色んな州の男性とその飼い猫に出演してもらったよ。
H:写真集では75枚のポートレートが掲載されていますもんね。こんなに多くの「男性&猫ちゃん」、どうやって探し出したのですか?
D:半分は僕の友だち。か、友だちの友だち。あとの半分は嬉しいことに、SNSで僕のことを探し出して、コンタクトを送ってくれた人たちなんだ。
H:おおー。撮影で出会った男性の中で、猫と抜群の関係性を築いてる方っていましたか?
D:写真集に載ってる男性全員だね。猫ちゃんと、素晴らしい関係を築いてるよ。でも、カップルごとに違うストーリーがある。
ただ世話をしているだけの人もいれば、猫ちゃんにとって住みやすい環境を最優先している人もいる。
たとえば跳び上がるのが大好きな猫ちゃんだったら、落下しやすい物は置かない。運動不足解消のために、ロッカーなどを重ねて段差をつける。
人生の大半を眠って過ごすから、静かで薄暗くて暖かい場所にベットをおくとかね。
共通して言えることは、彼らは自分の時間とお金を、限られた環境の中で惜しみなく猫ちゃんに捧げているってことさ。
H:ところで、猫って自由で気分屋なイメージ。撮影、スムーズに進みましたか?
D:基本的に動物の写真を撮るのって難しいし、猫ちゃんも例外じゃない。大事なのは猫ちゃんも僕もお互いリラックスすることかな。
撮影時はいつも、猫ちゃんのテリトリーに馴染めるようゆっくり時間をかける。飼い主が最高のショットが撮れるように協力、工夫してくれる。
ちなみに埒が明かないときの最終手段は、大好物のおやつ。これにはいつも助けられてるよ(笑)
H:出版から2ヶ月。アマゾンの“Best Books of the Month”に輝いていましたね!今の心境は?
D:信じられないくらい最高の気分さ。サポートしてくれた出版社の人たち、『Men with Cats』に興味を持って、さらに購入して楽しんでくれた愛猫家の読者さんたちには頭が上がらない。
それに、書店での販売イベントには、僕の大好きなセレブキャットの「Sunglasscat(インスタグラムで3万人を超えるフォロワーをもつ超有名猫ちゃん)」も飛び込み出演してくれて、もう感無量さ。
H:大盛況で何よりです。最後に、こんなこと聞くのも何なんですが、男性は絶対必要だったのでしょうか?女性じゃダメだったんですか?ヴィジュアル的にそっちの方がウケるのかなぁと思ったり…。
D:あはは、良い質問だね。きっかけが筋肉質男と猫ちゃんのギャップにビビッときたっていうのもあるけど、もう一つ。
アメリカの文化には、色や車、おもちゃといったほとんどすべてのものに、性別を割り当てる習慣があるんだ。たとえば男の子は青で、女の子はピンク。動物もそうで、「猫は女の子、犬は男の子」。
H:確かに。小型の可愛い犬を連れてる女性は多く見ますが、大型犬になると男性が多いですよね。
D:そう。エネルギッシュで独立したイメージの犬は「男性的」で、受け身がちで内向的なイメージの猫は「女性的」と見られてるんだろうね。
でも、この固定概念って動物好きにはまったく無意味。筋肉ムキムキの男性が子猫を飼ったっていいじゃない、華奢な女性がピットブルを散歩してたっていいじゃない。そういうことを主張したかったんだ。
H:ということは、続編「女性と犬」も期待しちゃっていいんですか?
D:この話の流れでいくと、僕の次のプロジェクトは「Women with Dogs」になりそうだね(笑)
もっと写真が見たい方は、コチラ
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All Photos Via David Williams
Text by Yu Takamichi, edited by HEAPS