Hello Kittyが世界でバズり続けるワケ

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ある朝、いつものように近所のカフェに行くと友人が突然こう話かけてきた。 7歳になる娘を持つ、トリニダード・トバゴ共和国からの移民である彼女。娘がこの事実を受け止めきれずにいると、おもしろおかしく訴えてきた。
“Do you know that Hello Kitty is a little girl? NOT A CAT, Not even Japanese. She is a fxxxing British girl. Can you believe it? ”

KITTY IS NOT A CAT, THEN WHO IS SHE?「ハローキティは猫ではありません」

 8月28日朝、米国メディアの見出しは「ハローキティは猫ではありません」という文言で埋め尽くされた。「でもネコ耳あるよ?」、「ヒゲあるよ?」と腑に落ちない点を挙げたら切りがなく、インターネット上でのキティ論争は大いに盛り上がった。この事実が世界中でバズ(BUZZ)となった発端は、ハワイ大学の文化人類学者、クリスティン・R・ヤノ氏が「ハローキティは猫ではないということを発見しました」と、ロサンゼルス・タイムズに語ったこと。長年、“ハローキ ティ”というキャラクターについて研究してきた彼女は、ハローキティ生誕 40周年の展示会『ハロー!ハローキティのスーパーキュートな世界への体験』のキュレーター(学芸員)も務めている。展示会発表前のプレスリリースでキティを「猫」と表現していたところ、サンリオ本社から「ハローキティは猫ではありません。彼女はアニメのキャラクターで、人間の女の子です」 と、連絡を受けたというのだ。これがバズの“種”になった。
 しかしなぜ、このことが世界中でバズとなったのか。SNSでシェアされたりメディアに取り上げられたり、人々が顕著な反応をみせたのは 、キティがグローバルなアイコンであるからに他ならない。2014年現在、世界約110の国と地域で年間約5万種類の商品が販売されている。まさにハローキティは、日本のポップカルチャーの代表的な存在だ。

KITTY IS A CELEBRITY  / キティはセレブリティ

「永遠の小学3年生」の“彼女”だが、生まれは1974年11月1日。酸いも甘いも経験してきた立派な“アラフォー”である。 ハローキティが米国に上陸したのは76年のこと。よく、販売する国が変わるとそのブランドのポジショニングも変わるといわれるが、当時、米国では値段が高く設定されていたゆえにプレミア化され、ちょっとした高級ブランドだと認知されていた。そんな背景もあり2000年頃より、何百万円もするキティのジュエリーが作られたり、セレブリティがこぞって身につけだした。こうしてキティは日本のように子ども向けのイメージではなく、“セレブも 身に付けるファッショナブルなアイテム”として浸透していった。

 そんな中、ビジネス面において特筆すべきは、08年よりサンリオが海外のライセンスビジネスに大きくかじを切ったことだろう。事業転換の立役者 は、同社常務取締役の鳩山玲人氏である。同氏が入社した同年から、サンリオは「物販ビジネスからライセンス」への積極的な戦略シフトを行った。 自ら物販するのではなく、ライセンスを供与してパートナーに売ってもらうスタイルだ。つまり、他業界とのコラボレーションにより、キティ商品をより効果的に増やし、ライセンス料で儲けるモデルへと転換した。同社の営業利益は10年より右肩上がりに増え続け、14年3月期の営業利益は過去最高の、210億円を記録。国内外でのハローキティをはじめとしたキャラクターの使用料で稼いできた功績が大きい。

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SHE CAN BE ANYONE OR ANYTHING/ キティは仕事を選ばない

 また、ライセンスの使用基準をぐっと緩めたことがグローバル化を後押ししたといえるだろう。これまであった、キャラクターのデザインを変えることに対する厳しい規定を考えると、サンリオの試みは実に革新的だった。 ライセンスを供与されるパートナー側に、ある程度のデザインの変更を認めたことが、より現地のニーズに合うデザインを可能にした。その結果、女性だけでなく、男性をもターゲットに組み込むことができたのだ。 日本発の世界的人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』や『ONE PEACE』などのキャラクターから、ハード系ロックバンド「KISS」、ストリートファッションの世界的アイコンでもある「New Era(ニューエラ)」、NFLやMLBなどスポーツ業界とのコラボレーションまで、キティは様々なコスチュームをまとい、バラエティに溢れる“七変化”をみせてきた。もはやその活躍は「キティは仕事を選ばない」といわれるほど。海外では経済誌『フォーブス』からも、「テレビコマーシャル、映画などの宣伝なしに、ここまでの人気を博し、年間70億円規模を実現したキャラクター・ライセンス・ビジネスは前例がない」と評価されている。

 一方で、「ある程度自由にキャラクターを変えられる」ということは、キャラクターのイメージがブレて、ブランドの価値が失われるリスクを常にはらんでいる。だが、キティはそれを恐れない。なぜなら、彼女はすでに、シンプルなフォルムデザインで誰にでもキティと分かってもらえる、「絶対的なキャラ」を確立しているから。“ぱちもん”(不法の商品)が出回ろうと、デザイン を一般公募する参加型イベントが行われようと、本家本元のハローキティは不動だ。ニセモノ・キティに“貢いで”しまった消費者も、本当のファンで あれば「いずれ本物にたどり着く」と、真の人気者は懐深くドーンと構えてきた。まるでインターネット社会におけるバズをはじめとするSNSの影響を推察していたかのような“振る舞い”だ。キティは知っていたのだ、キャラで世界を“バズらせる方法”を。

Writer: Chiyo Yamauchi
Issue 21 掲載

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