大の大人が大泣き!? アルコールよりも、さらけ出させる食は「カカオ」
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グアテマラ小島で、カカオスピリチュアル体験記

近年、スーパーフードとして持ち上げられている「カカオ」。ミネラル成分を豊富に含むだけでなく、強い抗酸化能力があり、アンチエイジングにも最適!なのだが、ここではカカオを用いた聖なる儀式『カカオセレモニー』のお話をしたい。

 カカオは、幸福感をもたらす神経伝達物質「アナンダミド」を含有する唯一の食材だといわれている。人間に本来備わっている善良性、そしてその神秘と歓びに触れるための薬用食材として、古代マヤの時代からシャーマンにより用いられてきた。そんな過去を信じ、再びカカオに救いを求める現代人が後を絶たないという…。

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スピリチュアルピーポーのメッカ「瞑想の村」へ

 筆者がカカオセレモ二ーに参加することになったのは、まったくの偶然だった。そもそも、この儀式があったのは、グアテマラのアティトラン湖のほとりにある小島「サン・マルコス・ラ・ラグーナ」という場所なのだが、ここに行き着いたのも偶然の賜物。
 メキシコからグアテマラへと移動するバスで知り合った日本人のバックパッカーに「案内するよ!明日はサン・マルコスで正午に待ち合わせよう」といわれたので、やって来た。しかし、ヤツはいない。いや、そもそもこの島のどこで待ち合わせるって話だったんだ?と自問自答。もう、一生会える気がしなかった。

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 その島は、どうやら世界中のスピリチュアルピーポーを惹き付る「瞑想の村」として知られる場所。島にはもちろん現地のグアテマラ人もいるのだが、圧倒的に西洋のボヘミアンが幅を利かせている。彼らが経営する近代都市でみるような「お洒落カフェ」もあり、英語も通じる。
 スペイン語はまったくな筆者、英語が話せそうなヒッピーたちに「この島の見所はどこ?」などと的外れな質問を投げる。そもそも「瞑想の村」なので、見所なんてないって話で…。しばらく歩いていると、人が良さそうな白人のオジさんを発見。「どこに向かっているの?」と話しかけてみた。すると「今日はカカオセレモニーがあるから、一緒に行くかい?」とお誘い。「カカオ」ときいて勝手に、コーヒー豆のカッピング(テイスティング)みたいなものを想像していた。グアテマラだし美味いコーヒー飲めるんじゃないか。これがきっかけだ。

現れたのは、カカオの聖人「チョコレート・シャーマン」

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 草むらの中をグイグイ進んでいくオジさん。何を頼りに向かっているのかと聞いたら、「耳を澄ましてごらん。人が太鼓を奏でる音がかすかに聞こえるでしょ?」。なるほど。

 オジさんは正しかった。道なき道を10分ほど進むと小屋を発見!そこでは、世間一般的にいわれる「スピリチュアル、ニューエイジ系」のど真ん中を行く風貌の人々が、和やかに自己紹介などをしていた。年齢は見た感じ、20代~50代と幅広い。男女ともに石など天然素材のアクセサリーを好んで身につけ、化粧っ気がなく乾燥肌。基本的にみな、人当たりがよくひと安心。どうやら、セレモニーが「これからはじまる」という丁度いい時間に到着したようだ。

 気持ちのいい風が頬をなでる。結構、島の上まで登ってきたんだな。見晴らしがいい。ざっと10人くらいの参加者が、何となくその場で輪を作る。すると、その真ん中に、主催者の女性の一人が茶色の液体が入った銅鍋を運んできた。「今朝採れたてのカカオ豆を挽いたモノとお湯、少量の蜂蜜とカイエンペッパー」が入っているという。女性は一人ひとりのコップに注いで手渡してくれる。

 準備が整ったかな、というタイミングで、「My name is…」と自己紹介とカカオと出会った経緯などを語りはじめた男。彼こそは、カカオの聖人だった。ケイス・ウィルソンというこの中年の青白い男性は、自らを「チョコレート・シャーマン」と名乗る。彼のガイダンスに従って、グアテマラの熱帯雨林で採れた最高品質の「マヤ・カカオ」、聖なるカカオを摂取すれば、日常生活で使用する五感を超越した感覚を体験できるのだそうだ。

「それでは、飲んでみましょう」と、特製のカカオドリンクをみんなでトライ。飲めなくはないが、味は砂糖と七味が入った苦温いお湯、それ以上でも以下でもない。「カカオはサイケデリックではありません。が、効果が強いので、少しずつ飲みましょう」。ふむ、このカップを飲み干したところで、幻覚がみえる、ということはないようだ。

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カカオ試飲後の、瞑想タイムがヤバい

 ほどなくして瞑想タイム開始。「呼吸に集中して。リラックス」と、大体はヨガ教室で習ったことと同じ。だが、しばらくすると、誰かの呼吸が荒くなっていくのを感じた。そして、すすり泣く音。そっと薄目をあけてみると、斜め前の男性が顔を真っ赤にし、歯を食いしばりながら大粒の涙を流していたのである。歩みよるチョコレート・シャーマン。そっと男の喉元、胸元に手をあて数分。最後は男の手を握る。男のすすり泣きが「大泣き」に変わった。

「大のオトナが、人前でこんなにワンワン泣くなんて…」。面食らってしまった。自分の瞑想どころではない。さっきまで、みんなに笑顔を振り向いて美味しそうにカカオを飲んでいたではないか。一体何があった?

 この大泣き男につられてか、参加者たちが、徐々に感情的、そして解放的になっていく。持参の太鼓や笛を奏でだす者、それに合わせてチャントを唱えだす者、踊る者。ヘッドスタンド(ヨガの逆立ちのようなポーズ)になりだす者。

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 先ほどカカオを注いでくれた、ベテラン級のニューエイジ感を漂わす女性も大泣き男に歩みより「あなたの痛みはどこ?」と問いかける。男は「ここ」と肩を指す。女性はゆっくりと男の肩を摩りマッサージ。気持ち良さそうに身を委ねる姿を見て、「あれ?確信犯か?」とも思ったが、男の泣き具合も「すすり」に落ち着きを取り戻したから不思議だ。

 そんな様子を筆者は一体どんな顔をしてみていたのだろうか。「大丈夫?リラックス」と、近寄ってきたのは、半裸の笛吹き男。そして「手が冷たいね」と筆者の手を取り、瞑想を開始…。「いや、平気っす!ただの末端冷え性っす!」ともいえず、再び目を閉じるほかなかった。

現代病、「穏やかなパニック状態」

 もう一人、大泣き男と同じくらい印象的だったのが、ドレッド頭の無気力ヒッピー少女だ。「アタシ、興味ないし」とは言葉にしないが、態度がそういっている。この少女、セレモニー序盤のカカオを飲んだ後からずっとゴロンと横になっていた。瞑想というより、どうみても昼寝。チョコレート・シャーマンの話もまったく聞いている様子はない。

 だが、筆者が大泣き男や笛吹き男に気を取られている間に、ちゃんと瞑想座りで参加していた。そして、頬に涙をつたわせていたのである。シャーマンに手を取られ、嗚咽する。「君は大きな痛みを抱えているね。けれど、こういやっていま、君はそれが何かに気づくことができた。それは前進への大きなステップだ」とチョコレート・シャーマン。

 すると少女は、やっと少女らしい表情で「ありがとう」と微笑し、素性を喋りだした。

「私、出身はサンフランシスコの小さな町なんだけれど、小さい頃から引っ越しばっかりで、『定住』ってしたことがないんだ。ママの家だったり、パパの家。おばさんの家や知り合いの家。いまもこうやって放浪しているし、どの場所とも人とも深い繋がりを感じたことがない。繋がりなんて自分には必要ないって思ってきたけれど…」

 心の内をさらけ出す彼女に、「Can I give you a hug? (ハグしましょうか?)」と歩みよるほかのメンバーたち。終盤は「セレモニー」というより、「リハビリ(更正)プログラムか?」という空気になっていたが、救われた人がいたなら何よりだ。

 さて、当の筆者はというと、正直、目の前で起こる非日常的な出来事に気を取られ過ぎて、自分の内側と向き合うには至らず。覚えている限り、ちょっとお腹がグルっとしただけであとは平常心。最後もちゃんと“頃合い”を見計らって「さようなら」を伝えた。

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 なんでも「練習が必要」というように、カカオセレモニーも練習が必要なのだろう。またいつか試してみるかはわからないが、カカオが本当の意味でスーパーフードであることを確認した。
「知的で理性的でいろ」と飼いならされてきた現代人。上述の大泣き男もヒッピー少女も、カカオの効能で、本能的な感覚が研ぎ澄まされたのかもしれない。そして自分の「痛み」に気づいたのだ。痛いから赤子のように泣く。素晴らしいことだ。自分自身の感覚で内側に秘める体感と素直に向き合えたのだから。
 チョコレート・シャーマン曰く、不安を抑制して過剰に冷静でいようと統制されている状態も「パニック状態」なのだそうだ。そんな「穏やかなパニック」を抑制し続けるのは危険だという精神科医も多い。自分を解放するために、アルコールや脱法ハーブに身を寄せている方、身体も精神も癒す「カカオの世界」へ足を踏み入れてみてはどうだろうか。

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Illustrator: Mikiko Yamabarashi
Writer: Chiyo Yamauchi

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