ブルックリンの兄弟、抹茶の新時代をNYCで開拓!

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「抹茶のチカラでコミュニティーの活力をアップ」。ブルックリン、ウィリアムズバーグの抹茶専門カフェ「MatchaBar」のオーナー兄弟は、「抹茶のチカラ」を信じている。生まれも育ちもマンハッタンのフォートギャング兄弟が発信する、抹茶の新しいカタチと可能性。オープンしたばかりのカフェを訪れ、彼らのビジネスビジョンを聞いた。

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抹茶“狂”は、元コーヒージャンキー。

 店に入りあいさつを交わした途端、堰を切ったようなマシンガントークの嵐。オーナーのFortgang(フォートギャング)兄弟、Max(マックス、24)とGraham(グラハム、22)には、Enthusiastic(熱狂的)という言葉がぴったりだ。ただ単に抹茶というプロダクトに熱狂しているだけではない。若き二人には、経験に裏打ちされた知識と戦略がある。二人は学生のころから、イベンターや不動産エージェント、バリスタとして常に「仕事人」だった。とにかく忙しい。

「クラブのイベントが終わるのは朝方4時、8時から授業。そんな生活だから、コーヒーが欠かせなかった」。自他ともに認める「コーヒージャンキー」だった二人。「とにかく中毒性が高いし、やたらイライラする。生活もめちゃめちゃだから免疫力も落ちまくって風邪ばっかり引いていた」

 そんな生活を省みた二人は3年ほど前、コーヒーに代わる副作用のないエネルギードリンク、「Clean Fuel」への転換を決意。「いろんなエナジードリンクを試したよ。でもどれも疲労感が伴うものばかりで、コーヒーみたいに“負”の作用があった」そんなとき、二人はイーストビレッジで「抹茶」に出会う。抹茶は、ボロボロだった二人の心身に染み入ったようだ。「とにかくすぐに効果のようなものを感じた。体が軽くなると心も軽くなるだろう?まさに『Uplift』、心身を高めてくれる飲み物だった」。抹茶とのめぐり合わせには、不思議な縁があった。

 実はマックスは高校生のころに日本を訪れており、京都で抹茶を“経験済み”だった。「抹茶を飲んだ瞬間、記憶のスイッチが入ったというか、そういえば!って。それから市内の店にある抹茶の缶を買って、インターネットで取り寄せて、飲みまくったんだ」。そうしているうちに、自らの体調の変化はもちろん、気分、気持ちが明るくなっていることを自覚した兄弟。「ニューヨークって街は、せわしなくてストレスフルだ。それは変えられない。だけど毎日抹茶を飲むことで自分を癒せるんだ。僕らが体験した心身を高めてくれる抹茶をニューヨーカーに提供したい」。そんな思いと使命から、MatchaBarは生まれた。グラハムは続ける。「朝起きて、茶を点てる時間は、ある意味『禅』のようでメディテーションのような時間でもある。そういう時間って本当に大切なんだ」。いちいち茶を点てるのか!抹茶の粉ってダマになるし、そもそもおいしいのか…。日本人でさえ「ちょっと面倒そうだな」と腰が引ける。しかし、MatchaBarで抹茶を味わうと、その固定概念が180度覆る。

「抹茶×キュウリ」「抹茶×スイカ」

 抹茶バーで提供しているのは、日本人に馴染みのマシンを使って挽き湧かし点てた抹茶のラテやエスプレッソだけではない。水だし抹茶をキュウリやスイカジュースでシェイクした冷たい抹茶のスペシャルメニューもある。目が覚めるような清涼感と爽快感のあとに、抹茶の甘みとほどよい苦みがふわりと香る1杯。日本人や「抹茶は苦い」と避けてきた者、健康志向でも抹茶をどうやって楽しめばいいか分からなかった者にとっては「目から鱗」。さらに抹茶初体験というニューヨーカーに新しいドリンク文化を開いた。

 メニューの発案はマックス。シェフになるための特別な勉強はしていない。レシピの発想の源については、この4、5年、シティでブームのジュース店だという。健康志向がライフスタイルのニューヨークでは、近年、Organic Avenue、Liquiteriaといったジュース専門店が飛ぶ鳥を落とす勢い。「何か特別なことを!」と気張り過ぎず、プロダクトそのものの品質を信じ、すでにある「いいもの」から学ぶマックスの姿勢は、気取りのない親しみやすい店の雰囲気にも表れている。

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興味をそそらせるスタンスで顧客開拓

 実際、店内には「抹茶」を掲げた高級感や敷居の高さはまったくない。メニューにも「コーヒー」を入れている。なぜなら、抹茶を前面に押し過ぎて、ポテンシャル抹茶ファンの芽を摘み取ってしまいたくないから。「たとえば3人で来たグループで、二人は抹茶を頼んでも『いやオレはコーヒーで』っていう人だっていると思うんだ。そういう人を置いてけぼりにしたくない。でもね、面白いことに、そういう人でも次にくるときは抹茶を頼んでくれるんだよ」。押し過ぎず引き過ぎず。MatchaBarのそんなスタンスは、自己主張の激しいニューヨーカーの心にもすっと染み入るのだろう。

「何で体にいいの?」「家ではどうやって飲めばいいの?」——そういった質問にフランクかつ丁寧に応えることに重きを置いているのは、抹茶のことを正しく知ってもらいたいという思いがあるから。マンツーマンだけではなく、店には「Brewing instructions」(抹茶の入れ方) というパンフレットを置き、新しいもの好きのニューヨーカーの好奇心だけではなく、探究心にもしっかり応えている。ちなみにコーヒー豆は近所のインディペンデントコーヒー店のもので、サスティナビリティや地元のビジネスを盛り上げる姿勢を徹底している。

新しいものを生み出すのに必要な「敬意」

 MatchaBarの抹茶は、愛知県西尾市で5代続く茶農家と独自契約したもの。今年5月に現地を訪れた兄弟は新茶の摘み取りにも参加し、一家と交流を深めた。フォートギャング家も5代続く宝石商。店の壁に飾った、茶畑や茶葉をひく石臼、茶摘み道具などの写真を見つめながら、「5代同士、これも不思議な縁だよね」とグラハム。丁寧に作られた茶葉、ビジネスを支えてきた職人の思い。兄弟はその伝統をアメリカでも「昇華」させるために、カフェの要素を取り入れ、抹茶をプレゼンテーションしている。さらに、「茶室」をイメージした空間を、カフェ内にイベントで設ける計画も。「カタチを変えても伝統が生きるように、抹茶についての正しい知識とその文化を伝えていきたい」。若き兄弟は伝統へのリスペクトが新しい価値やスタイルを生み出す鍵であることを知っている。

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個の得意を生かした経営

 アイデアと情熱を伝えるコミュニケーション能力を持つ兄弟のビジネスマインドを強化したのは、共同経営者のEli Libman(イーライ・リブマン)だ。グラハムがミュージックイベントで意気投合した友人であり、NYUで経営学を専攻。「数字に強いイーライ」「アイデアマンのマックス」「PRに長けたグラハム」は、“東方の三賢者”。「それぞれの得意な部分を生かした経営の利点は、それぞれが情熱と責任をもって仕事できるところにある」とグラハム。「兄弟で友人、チームの気心が知れているのもビジネスをする上で僕らには英断だった。何を考えているのか気兼ねなくテーブルの上に出してとことん話すことは、ブランディングにも経営にも大切なこと。僕とグラハムだけじゃ、兄弟だし終わらない議論になってしまうことも多々あったけど、イーライがバランサーになって、かつ『数字』で示してくれるのがありがたい」とマックス。

 さらに“三賢者”は、2階にギャラリースペースを設け、地元のアーティストに展示の機会を無料で提供。「表現できる場所がないクリエイターやアーティストがここにはたくさんいる。コミュニティーの活性は彼らが元気に活動しているかにもかかってる。アートを見にきがてら抹茶を飲むっていうような、デスティネーションカフェでもありたい」。再開発でにぎわうウィリアムズバーグの中でも、イーストリバー沿いでその波がやや発展途上なエリアにわざわざ店を構えたのも「ここなら、ビルを丸ごと使って、僕らのコンセプトである『コミュニティを抹茶のチカラで活性化する』ってことを発信できるから」。不動産エージェントだったこともあるグラハムが、ビルの賃貸契約を10年にしたのも「先見の明」。MatchaBarの周辺は2、3年後、ますますにぎやかになるのは明らかだ。「エリアの活性をエリアに暮らす人々と一緒に」。その思いに共感する住人は多く、さっそく毎日店を訪れるファンもいる。

「住人だけじゃなく、近くで働いている人も来てくれる。オンラインビジネスのVICEやAmazonといった企業が近所に進出してるんだ」。グーグルがチェルシーにオフィス進出したのは2010年。あれから4年足らずでエリアは大いに活性化し、ギャラリー以外にも人々が訪れる場所が多く増えた。「チェルシーで起こったことが、ここでも起こる」。そして、MatchaBarは間違いなく、エリアの発展を牽引するスポットになる。エリアとそこに関わる人で「つながる」ビジネスを実践しようとしている。「さらにね」とマックスが付け加える。「週末になると、観光客や市内の別のエリアからのお客が来てくれる。平日と週末で違った層のお客が来ることは、僕らにとっていろいろな市場を開拓できるチャンスなんだ」

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すでにLA進出に投資家がバックアップ

 ただ抹茶を販売するなら、Eコマースでいい。マックスとグラハムが「カフェ」というフィジカルな空間にこだわったのは、顔が見える、温度が感じられるビジネスを大切にしたいから。「だってここ(店)で起こっているこのバイブは、ここにいなきゃ分からない!どんなに技術が発達しても、これからどんな風にこのビジネスが発展しても、そのことは忘れないでいたい」とグラハムは熱っぽく語った。

 オープンして1ヶ月も経っていないが、すでに缶での抹茶ドリンクの開発を開始。「抹茶って高いよね。品質を考えれば当然のことだけど、抹茶を楽しむ人の裾を広げたい。そのために、缶での販売をいち早く開始したい」とマックス。さらに、開店から話題を呼んでいるため、すでに投資家からラブコールがあり、ロサンゼルスで店舗を構える話も出ているという。「ニューヨークとロスじゃ気候も違うし、また新しいプレゼンテーションの仕方やカルチャーを生み出せると思うんだ」。古くからある抹茶に改めて価値を見い出したフォートギャング兄弟。伝統とニューヨークの若者の最強タッグが、抹茶の新しい時代を切り開いていく。

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MatchaBar

93 Wythe Ave, Brooklyn

TEL: 718-599-0015

掲載 Issue 20 (November 2014)

 

 

 

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