今度の魔女会は、ブルックリンにて。

薄暗い。少々埃っぽいのか、窓ガラスから中を覗いてもよく見えない。ドアを開けるとまた一枚、黒幕が垂れている。それをくぐると、思ったよりも奥行きのある空間が広がった。

Catland(キャットランド)、2年前にブルックリンのブッシュウィック地区にできた本屋だ。ただし、売っているのはすべて「オカルト」もののみ。この店をはじめ、同エリアでは急激にオカルトが流行りを見せている。

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帰ってきた、オカルト

「1970年以来の、オカルトブームの再来だ」とオーナーのJoseph Petersen(ジョセフ・パターソン、以下ジョー)。薄明かりのせいかオカルトへの先観か、青白く見える顔で文字通り“ニヤリ”とした。

 開店当時にはたった10冊しかなかったという本棚には、いまやぎっしり、ありとあらゆるオカルト本が並んでいる。愛好家たちから直接「この本はこの店で保管してくれ」と送られてくることもしばしば。かなり早口で“レア本”の説明をするジョーの肩越しに人影がちらり。覗けば店の奥には作業場があり、一人の男性が眼鏡を鼻までずりおとして何やらせっせと製作している。本だけでなく、ドクロ、男女の生殖器や猫を型どったキャンドル、独自のブレンドのお茶やタロットカードなど、オカルトグッズが充実している。キャンドルが売れ筋で「オカルトのファーストステップ」らしい。

 そういえば、「オカルトショップ」と聞いて絵に描いたような魔女を想像していたが、オーナーは三人の若い男性。服装もカジュアルで、ニヒルな笑顔がなければ普通の店にいる店員と変わらない。しかし、一人はルーン文字も解読でき「リーダー(運命を読む人)」だというから、紛れもない本格派だ。

“NONES(何にも属さない)”  宗教はもういらない?

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「年齢層も人種も関係なく店に来る。でも、圧倒的に若者が多いよ」とジョー。若年層の間で「自分のやり方で信仰する」人が増えているという。その背景には、やはり近年注目を浴びてきた、アメリカにおける“NONES”(ノンズ)の急増がある。「どの宗教にも属さない」というグループで、カトリック派につぐ規模に成長(一説では超えたとのレポートもある)。さらにその差はたったの1%で、“NONES”がアメリカの主流の宗教観になるのは近いと見込まれている。現在では、30歳以下の3人に一人は“NONES”だ。

 “NONES”にも、「無神論者」「不可知論者」「信仰心はあるがどの宗教派にも属さない」「不明」と数タイプいる。教会のビジネス性や、教育面、政治観にも影響するがんじがらめ、プロテスタントの保守的な考え(同性愛を認めない、など)に疑問を持ち、離れていく若者(特に白人)が多い。
 教会に通う人も激減。宗教派から離れるわけではないが、自宅で祈りをするか、さらにはオンラインで動画を見て行う人も。カトリック教会にいたっては、クラブの入り口にパンフレットを置いたり、ミサのアフターパーティーをクラブで行うなどしてどうにか教会離れを食い止めようと必死の様子…。

instagramを賑わす“現代版オカルト”

「信仰心はあるけれど、どの宗教派にも属さない」層が、オカルト再来を後押ししているという。彼らは、自らを“宗教的”ではなく“スピリチュアル”とし、「信仰したい」「自分と似たスピリチュアルな人と繋がりたい」と求める。数年前のそのツールがヨガで、アメリカのヨガブームを後押ししたのも、宗教離れだったのではとの指摘も聞く。いま、そのニーズに応えるのが、Catland。オカルトイベントスペースという顔も持ち、タロットカードを読んだり、魔女の格好をして集まってはお香を炊いたりなど様々だ。
Facebookで告知し、instagramでその様子をポスト。その“現代感”が、コミュニティの広まりを加速させる。

「オカルトの敷居が低くなって、ブーム再来に火がついたね」。先人たちが微塵も思いよらなかった、“気軽にオカルト“の時代が来た。「自分で信仰して、自分を高める。なんのためかっていうと、“自分の選択に自信を持つため”なんだと思う。自己決定するために、その背中を押すのがD.I.Y.スピリチュアル。いまは、オカルトが一役買っている」と彼はいう。でもなんでオカルトなんだろう…とぼそっと漏らすと、「オカルトっぽいファッションが流行ったのも一因だね。魔女みたいなスタイルをよく見るようになったし。興味を持つ第一歩がファッションってよくあることだよね」。さらに、ブッシュウィックには白人の若者が多い。要因が重なったようだ。自分の決断のために自分で精神力を高める。“Do It Yourself”は、スピリチュアルの領域に深く踏み込んできた。「D.I.Y.のムーブメントのおかげで、何でもできるという精神が比較的当たり前になってきた感がある。信仰も自分でできるって考えるのも自然な流れさ」というジョーの顔色はやはり少々悪かったが、前向きな言葉での締めくくりだった。

Photographer: Kohei Kawashima  
Writer: Sako Hirano

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