「礼拝は“義務”ではなく“神と会話できる機会”」インドネシアから独に渡ったムスリム、異国の地で再確認した神への愛

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世界のムスリム人口は約18億人。イスラム教といえば中東のイメージが強いが、実はムスリム(イスラム教信者)が人口の過半数を占める世界最大の国は、インドネシアだ。さまざまな宗教が入り混じるなか、イスラム教を信仰する国民は約8〜9割にも及ぶといわれている。

首都ジャカルタやリゾート地バリ島からそれぞれ飛行機で1時間ほど、ジャワ島中部にジョグジャカルタという古都がある。インドネシアのイスラム教組織として二番目の規模を誇る「ムハマディヤ」が結成されたこの地で生まれ育ったのが、シンタ・クェー(22)。オンラインではヒジャブ姿の写真を投稿するインフルエンサーとして(料理用アカウントも運営中)、オフラインでは数学とピアノを教える教師として生活する若きムスリムだ。

8年前に世界最大のイスラム教国を去り、ヨーロッパでもムスリムが多く住む国ドイツに越してきた。ラマダン(ムスリムが断食をおこなう月)を終えたばかりの彼女に、ドイツに住むムスリムとしてのライフスタイルや宗教観を聞き、22歳のムスリムの実生活を探ってみる。

——「礼拝はストレスを和らげ、パワーを充電し、心をリフレッシュしてくれる気がするんです」イスラム教徒、シンタ・クェー

HEAPS(以下、H):シンタさんこんにちは。シンタさんのヒジャブコーデは服やメイクとの相性が良く、洒落てます。

Shinta Kwee(以下、S):ありがとう、うれしい(照)。ヒジャブはとにかくたくさん持ってますね。親戚や友人からもらったものが多いかな。コーデは、TPOや着ている服の色や天候に合わせて選んでいます。

H:さて、先月1ヶ月間続いたラマダンが終了しました(取材はラマダン終了後の6月)。ラマダン期間中は日の出から日没まで断食・禁欲・禁煙し、イスラム教の聖典コーランを読むんですよね。この他におこなうべき義務や、守るべき禁止事項などはあったんでしょうか。

S:非ムスリムの一部の人は「イスラム教は義務や禁止事項から成り立つ宗教」だと考えているようですね。

H:(ドキッ)

S:でも、私はそうは思わないです。 イスラム教は心を清め生活を豊かなものにする、すばらしい宗教ですから。

H:とはいえ、イスラム教には毎日5回の礼拝といった義務や、豚肉を食べないといった禁止事項があるのも事実。

S:イスラム教の大前提として、神は私たちを愛していて、私たちも神を愛しています。なので私たちにとって毎日5回の礼拝とは、“義務”ではなく“神と会話できるすばらしい機会”なんです。愛する人と会話したいと思うのはごく自然なことで、これを義務とは感じませんよね。

H:たしかに。

S:そして個人的に、礼拝はストレスを和らげ、パワーを充電し、心をリフレッシュしてくれる気がするんです。他にも、イスラム教ではハラールフード(イスラム教の戒律によって食べることが許された食べ物)を推奨している。これは身体を健康に保ち、パフォーマンスの高さを維持してくれます。特に母国のインドネシアには、おいしくて栄養価の高いハラールフードがたくさんある。 カリスマ3つ星シェフのゴードン・ラムゼイは、ハラールフードでインドネシアの郷土料理「ルンダン※」の調理方法を学ぶため、わざわざインドネシアに足を運んだくらい。

※牛肉をココナッツミルクと香辛料で煮込んだ料理。CNNで「世界一おいしい料理」に輝いた。

H:食べてみたいです、ルンダン。えっと、幼少期はご両親にイスラム教徒として厳しく育てられたんです?

S:一般的なムスリム家庭に生まれ、一般的なムスリム同様にイスラム教を実践し育ちました。なので両親が特別厳しかったわけではないかな。宗教や人種、肌の色に関係なくいろんな友人と遊んでいましたし。あ、でも、遊びの最中でも礼拝の時間になれば中断し、聖地メッカに向かい祈りを捧げていましたね。

H:子どものころから“神と会話できる機会”が生活にあったんですね。現在はドイツのフランクフルト在住ですが、なんでまたドイツへ?

S:2012年に進学のため越してきました。いまは数学とピアノの教師として働いています。

H:あら、料理専用のインスタアカウントがあるので、てっきり料理の仕事をしているもんだと思っていました。

S:あはは、でも料理は大好きですよ。日本の文化に興味があり、「マヨ明太」を作ったこともあります。

(ここで「マヨ明太」のインスタ埋め込み)

H:マヨ明太ソースがいい具合に照ってます。インドネシアにいたときとドイツに住むいまで、自身の宗教に対する変化はありましたか? たとえばインドネシアにいたときの方が熱心だったとか、ドイツに来たことで客観的に見れるようになったとか。

S:実はイスラム教を集中的に学びはじめたのは、ドイツに来てからなんです。というのも、インドネシアでは国民の約9割がムスリムなこともあり、イスラム教がいたるところに存在していた。けれどドイツではそうではない。そんな生活のなかで、神との距離を感じるようになってしまって。幸運なことに、ドイツでもインドネシア人の友人がたくさんでき、宗教観を共有できたこともきっかけのひとつでした。

H:ドイツはフランスに次いで、ヨーロッパで二番目に多くムスリム人口を有する国。さすが移民大国ドイツです。また自らの意思でイスラム教に改宗する人が増えているとも聞きました。シンタさんの周りでも、イスラム教に改宗した人がいたり?

S:イスラム教に改宗した友人は、5人以上います。みんな口を揃えて「はるかに気分が良くなった」と言っていますね。気の持ちようもあるとは思いますが、そういう話を聞くとやはりムスリムとしてはうれしくなる。もちろん、違う宗教の友人のことも尊重しています。

H:一口にイスラム教と言っても、信仰度の違いにより保守派や進歩派などあらゆるタイプのムスリムがいますよね。

S:私は、自分には自分の信仰度を判断する権利はないと思っています。 私にとってイスラム教を実践することは生活の一部であり、それ以上でも以下でもない。

H:いまの世代のムスリムと、昔の世代のムスリムとでは、ライフスタイル上での相違や信仰上での違い、イスラム教徒としてのしきたりへの思いにギャップはあると感じますか?

S:もちろん感じます。宗教に関わらず、いまの世代はググればなんでも分かると思っている。でも実際は、ネットで拾いきれない情報もたくさんある。たとえばインドネシアでのイスラム教に対する宗教観や、古い文化に伝統。私はこれらを両親から学んでいます。昔ながらの良い伝統を継承しつつ、そこにいまの宗教観やライフスタイルを組み合わせることができたらなぁ、なんて思ってます。

H:シンタさんがイスラム教から学んだことを教えてください。

S:イスラム教とは、心を清め生活を豊かなものにする、うつしくてすばらしい宗教だということを学びました。とはいえ、まだまだ学びの最中。学ぶほどに好きになるので、もっともっと知りたい。この学びは、生涯続きそうです。

H:現代人にとってイスラム教を信仰することのメリットってなんだと思います?

S:信仰することで、満たされた気分になることですね。

H:シンタさんのインスタグラムを機に、イスラム教を知った人や興味を持ち信仰しようと思った若者もいるかと思う。そういった人に伝えたいイスラム教の魅力とは?

S:イスラム教の魅力は、そのうつくしさ。神は美を愛するゆえ、私たちは常に美しい心を保とうと努力を怠らない。私たちを宗教的に導くことができるのは神のみです。神に比べると、私なんてほんのわずかな塵ですよ。

H:(謙虚だなぁ)最後の質問です。シンタさんにとってイスラム教とは?

S:私は生活の一部としてイスラム教を実践しています。なので、イスラム教のない人生は考えられません。

Interview with Shinta Kwee

Images via Shinta Kwee
Text by HEAPS
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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