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  • Apr 9, 2018

トミーガンにトドメの出刃包丁。マフィア映画のドンパチはウソ?ギャングと武器にも相性がある—米国Gの黒雑学

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「友は近くに置け、敵はもっと近くに置け」
(映画『ゴッドファーザー』から)

「友情がすべて」のマフィオーソの道。しかし、
昨晩、盃を交わした友が敵になる。信頼の友の手で葬られる。
“友と敵の境界線は曖昧”でまかり通るワイズガイのしたたかな世界では、
敵を友より近くに置き、敵の弱みを握り、自分の利益にするのが賢い。

ジェットブラックのようにドス黒く、朱肉のように真っ赤なギャングスターの世界。
呂律のまわらないゴッドファーザーのドン・コルレオーネ、
マシンガンぶっ放つパチーノのトニー・モンタナ、
ギャング・オブ・ニューヨークのディカプリオ。
映画に登場する不埒な罪人たちに血を騒がせるのもいいが、
暗黒街を闊歩し殺し殺されたギャングたちの飯、身なり、女、表向きの仕事…
本物のギャングの雑学、知りたくないか?

重要参考人は、アメリカン・ギャングスター・ミュージアムの館長。
縦横無尽の斬り口で亜米利加ギャングの仮面をぺりぺり剥がす連載、七話目。

***

前回は、密輸酒ビジネスを操った女やウォール街の大金を集めた女など、華麗でキケンな「女ギャングたち」について暴いた。今回は、ギャングが肌身離さず携えている「武器」について映画のようなドンパチって実際あるの? ナイフは使ったりしないの? ギャングスターミュージアムの館長に聞いてみる。

※このコンテンツは、少々過激なイメージ・内容を含んでいます。

▶︎1話目から読む

#007「ドンパチは映画のなかだけ?ギャングが愛したトミーガンに『グッドフェローズ』の包丁」

シカゴマフィアが愛した「トミーガン」

第一次世界大戦後の英バーミンガムに実在した悪名高きギャング集団が主人公のBBCテレビドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』。アイルランドを誇る碧眼端正色気俳優キリアン・マーフィー演ずるギャングのボス、トーマス・シェルビーの静かで妖艶な狂気(シンメトリーな刈り上げもニクい)と、重厚で憂鬱なイギリスの空に暗黒街の埃っぽさと煙たさにむせかえりそうになる異色作だ(挿入歌も渋い。主題歌はニック・ケイヴというロック好きには垂唾もの)。このピーキー・ブラインダーズという奴らは、ハンチング帽のつばにカミソリの刃を隠し、いざというとき敵の目を斬りつけることから「peaky(peaked cap=ハンチング帽で)+blinders(相手を盲目にする)」と呼ばれていた。

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 帽子に“小型”を潜ませるギャングもいれば、大型を堂々担ぐギャングもいる。禁酒法時代、スーツにコート、ハットを着こなし、デカい銃をぶっ放していたギャングスターたち。彼らが愛したのが「トンプソン・サブマシンガン」、通称「トミーガン」である。発射音が「パパパパパパパパ」という軽い音であることから「シカゴ・タイプライター」という妙なニックネームもつけられ、シカゴマフィアたちに愛用されてもいた。

トミーガンがギャングスターに愛された理由ですか。それは、見た目にもとても美しいですし、シンプルかつ頼りになる銃でしたから」と館長は言う。トミーガンと聞くと「ト〜ミガ〜ン♪」とはじまるザ・クラッシュのあの曲が頭に流れるパンクっ子も多いと思うが、トミーガンについて少し説明しよう。この短機関銃(一人で操縦できる銃)は、第一次世界大戦中、米陸軍大佐のジョン・T・トンプソンが設計した。およそ4.5キロの重さで弾倉(補充用の弾丸を保管しておく部分)は20-30発箱形弾倉、あるいは50発用ドラム弾倉。アイルランド系移民の独立運動やゲリラ軍が使用するようになり陸軍や海軍でも評価は高かった。
 その短機関銃に「トミーガン=マフィアの銃」の方程式がつくりあげられたのは、禁酒法時代のシカゴにて。アル・カポネを黒幕に地元ギャング間で起こった抗争(ノースサイド・ギャング v.s. サウスサイド・ギャング)でトミーガンが使用され、無抵抗の7人のギャングの命を木っ端微塵にしたのだ。この抗争は「聖バレンタインデーの虐殺」として映画にもなっている。その後、警察やFBIもトミーガンを使用するようになり、1940年代後半に自動小銃「カラシニコフ(AK47)」が出まわるまでは「トミーガンは無敵だったといいます」。また西部劇によく出てくる老舗米銃器メーカー、コルト社の拳銃もギャングたちに多用された。数年前、アル・カポネが実際に使用したコルト社の回転式拳銃が、オークションで約870万円で落札されたそうだ。

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 銃だけじゃないぞ、ギャングの武器といったらもう一つ、ナイフである。「隠し持ちやすいから重宝された」というポケットサイズの折りたたみ式ジャックナイフや、マフィア映画の金字塔『グッド・フェローズ』で刑務所にぶち込まれたマフィアのポーリーがにんにくを刻むのに使ったカミソリの刃。19世紀イギリスで起こった怪事件の“ジャック・ザ・リッパー”こと切り裂きジャックや、ストリートギャング(たとえば、1950年代ロンドンの元祖不良テッズたちが携帯していた)もナイフ使いたちだ。しかしギャングのナイフといったら、『グッド・フェローズ』でマフィアのトミーが大人の息子にも過保護なイタリアンママ(演じているのは、監督スコセッシの実母)に「お母ちゃん、ちょっと包丁貸してくれる?」と家から持ち出し、敵のトドメをさすのに使った出刃包丁だろう。

映画のドンパチはウソ?真のギャングの戦さ

 ギャング通の館長に好きなギャングのドンパチ映画はなにかを聞いてみると、意外な答えが返ってきた。「テレビドラマの『ザ・ソプラノズ』ですね。観たことがない人は、2、3週間仕事を休んで、ジントニックを片手に一気に観るべきです。このテレビで描かれるギャングの世界はかなり現実に忠実です。それゆえ、ドンパチシーンなんてほとんどないのです。『グッド・フェローズ』然り」。本当のギャングスターはドンパチなしということなのか?「特に禁酒法時代以降のギャングの殺し方は、実際こんな感じだったと思います。ターゲットとともに車に乗り込み、人気のない場所まで車を走らせ、後ろから頭を撃ち抜く。だから、ドンパチシーンの多い映画『アンタッチャブル』なんかは完全なフィクションだと思いますよ」。だそうだ。

 しかし、映画にはなっていないが「映画にしてほしいくらいです」と館長が希望する実際に起こった大ドンパチがある。20世紀初頭、ニューヨークのローワーイーストサイドにあるクリスティ街で実際に勃発した、イタリア系ギャングとユダヤ系ギャングの抗争「クリスティーストリートの戦い」である。

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「ユダヤ系ギャングの方を束ねていたモンク・イーストマンは、第一次世界大戦では兵役につきフランスのソンムの戦いに参加したこともあります。そんな彼がこう言ったそうです。『クリスティーの戦いに比べたら、ソンムの戦いは屁の河童だった』と」。よっぽどド派手な抗争だったであろうクリスティーストリートの戦いでは、途中でアイルランド系ギャングが仲介役として間にはいり、イタリア系ギャングとユダヤ系ギャング双方に向かって銃をぶっ放したらしい。これが効果的だったかは、…想像に任せるとしよう。

 次回は、ギャングのニックネームについて。“ラッキー(幸運)”・ルチアーノ、トニー・“ビッグ・ツナ(デカい鮪)”・アッカルドなど、あだ名をつけられたギャングスターや、アイルランド系の名前にあえて改名したイタリア系ギャングなど、Gたちの名前のあれこれを探ってみようと思う。

▶︎▶︎#008「バナナにエッグ。もはやギャグなあだ名に、アイリッシュ系の偽名。ギャングネームのあれこれ」

Interview with Lorcan Otway

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重要参考人
ローカン・オトウェイ/Lorcan Otway

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1955年ニューヨーク生まれ。アイルランド系クエーカー教徒の家庭で育つ。劇作家で俳優だった父が購入した劇場とパブの経営を引き継ぎ、2010年に現アメリカン・ギャングスター・ミュージアム(Museum of the American Gangster)を開館。写真家でもあるほか、船の模型を自作したり、歴史を語り出すと止まらない(特に禁酒法時代の話)博学者でもある。いつもシャツにベストのダンディルックな男。

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Text by Risa Akita
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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