【Editor’s Pick】被写体を探すは必要ない。ただストリートに行けばいい Interview with Phil Knott

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スタジオなんていらない 惚れ込んだニューヨークのストリート

「どうだい、Very New Yorkerだろ」
 次々に出てくるオリジナルの写真作品。黒い古い画板の間から、湧き出るようにコラージュ作品が現れる。「キンコーズで何日も自分の作品をコピーばかりして、それから(輪郭に沿って)ひたすらカット。人と話しているときも、食べているときもカット、カット」

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 7、8年前のことだ。ヒントはストリートに貼られたポスターだった。切り抜いた人物を、デザインブックからコピーしたバラの絵、文字、波や線の模様と組み合わせ、白い紙に貼り、独特の「コラージュ」に仕上げる。切り抜かれた映像は、壁のポスターのように飛び出て見える。配置の見事さで、人物が浮かび上がり、走ったり叫んだりしてみえる。波や線も渦を巻いたりしているかのような「動」が生まれる。
 フィルにしかできないアートだ。「映像が切り抜かれていることで、ポスターが貼られたばかり、みたいな機敏さが生まれる。いつみても、『ストリート!』だろう」。トレードマークの黒いTシャツにジーンズで、ひらりと仕事部屋の別のコーナーに行く。スケートボーダーのように、フットワークが軽い。

「新しいことを始めたんだ」。1.2メートル四方の白いベニヤ板に、巨大な人物写真のコピー。その上に文字のコピーや種、花やポスターを引きちぎったものを張り付けていく。厚さが3センチぐらいになるまで貼ったり、ちぎったりを続ける。

「どうなるか分からない。道端のポスターが重ねて貼られたり、はがされたりしているのを見て、ヒントを得たんだ。でも、どうなってもニューヨークのストリートそのものだろう?」

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 デペッシュ・モード、ジャスティン・ティンバーレイクなど、ミュージシャンにインスパイアされアーティストを多く撮影してきた。しかし、ミュージックは過去形になった。今はニューヨークのストリートに惚れ込んでいる。お気に入りの有名人の名前を言わせようとして、こう聞いた。「今まで撮った中で、どの人が好き?」

「ある日、彼がゴスペルが聞こえる教会の前に座っていたんだ。ネクタイにスーツ、カウボーイ・ハット。黒人で年老いている。そして美しい面立ち。ああ、彼こそ、“Mr. Cool”だ。名前?知らないよ。どこかに写真があるな。品があって、個性があって、美しい」
 その黒人には、夏の日、カメラをかついで自転車で走り回っていて遭遇した。「スタジオなんていらない。That’s the only way to go! (それっきゃない!)」

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