広告のなかの“私たち”を新しく。ナイキ、リーバイスも参加〈女性クリエイター×ブランド〉を進める#GirlGaze

フォトグラファー、ビデオグラファー、プロデューサー、イラストレーター…。世界中の“女性の視線(GirlGaze)”、集まれ。
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MeToo時代、女性関連の広告やプロジェクトを積極的に手がける大手ブランドや大企業は急速に増えている。そして当然のことながら、使用される写真や動画のなかの“女性像”を描くのは、企業側が雇用したクリエイターだ。
「でも、それって本当の女性の姿?」。いまだ男性社会だという広告・クリエイティブ業界。新たに、現代の、本当の女性像を描きだすために、〈世界の女性クリエイターと世界的ブランドを繋ぐウェブコミュニティ〉がスタート。

女性ファッション誌の表紙撮影も男性。クリエイティブ界に残るジェンダー格差

 職場における男女平等やジェンダーフリーは、企業の条件として必要不可欠になりつつある。スターバックスやアップルは、すべてのジェンダーへの平等な賃金支払いや働きやすい職場づくりを積極的に取り組んでいると公表。従業員の73パーセントが女性だというGAP(ギャップ)も、そのうちの69パーセントが店舗マネージャーであるように、職場やキャリアにおける男女平等は着実に進んでいるようにみえる。
 その一方でまだまだジェンダー格差が残るのが、雑誌、広告などのクリエイティブ業界だ。2017年の調査によると、ヴォーグやハーパーズ・バザーなど米ファッション誌10社における153の雑誌表紙のほとんどが男性フォトグラファーによる撮影で、女性フォトグラファーによるものはわずか約13.7パーセントだったという結果が。さらにフランスを代表するファッション誌マリ・クレールは、女性誌にも関わらず1年のあいだ一度も女性フォトグラファーを雇わずに表紙撮影を敢行していたという。広告業界のジェンダー格差も深刻で、調べによると、大手写真専門誌や写真受賞団体の広告カテゴリーに属するフォトグラファーの89パーセントから96パーセントが男性だとか(2013年から17年)。大企業・大手ブランドと女性クリエイターのタッグは、男性に比べ、まだまだ弱い。

「私たちのミッションは、女性やノンバイナリー*のクリエイターとブランドを結び、ジェンダーギャップを埋めることです」。そう話すのは女性クリエイターと世界的ブランドを繋ぐウェブコミュニティGirlGaze Network(ガールゲイズ・ネットワーク)の創立者、アマンダ・デ・カディネット氏。作家、テレビ司会者、そしてフォトグラファーとしても活動する彼女は、その昔、女性フォトグラファーとしてなかなか有給の仕事をもらえず、業界での生きづらさを経験した一人。「女性クリエイターの視点がないがしろにされ、過小評価されている」。この状況をなんとか打開しようと、アマンダ氏は女性クリエイター仲間に呼びかけ、彼女たちの作品をハッシュタグ「#girlgaze(#女性の視線)」インスタグラム上にシェアしてもらうことに。約3日間で1,000件を超える作品が拡散され、ウェブコミュニティのスタートに繋がった。

*女性、もしくは男性どちらにも分類されないジェンダーのこと。


(出典:Girlgaze Official Website

ナイキ、リーバイス、グーグルも利用。“Girlgaze(女性の視線)”なプロジェクト

 世界62ヶ国から20万人を超える女性、ノンバイナリー、トランスジェンダー女性のクリエイターが登録するガールゲイズ。サービス開始から3年間で、586もの仕事を繋げてきた。個々のクリエイターとブランドがどのように連携したのか、サイトの使い方を見てみよう。

1、クリエイターは、無料で登録。自分のポートフォリオやウェブサイト、インスタグラム、ツイッターなどのSNSアカウントも連携可。他のクリエイターと繋がることもできる。

2、企業・ブランドは、有料で登録。登録クリエイターたちのポートフォリオが閲覧できる。気になったクリエイターをスカウトし、直接コンタクトも可。

3、企業・ブランドは、プロジェクト参加者を募集(例「新しいビデオプロジェクトのディレクター募集!」)。募集時点で報酬の見積もりを企業側は開示、公正な報酬額がクリエイターたちに支払われる。

4、企業の募集に、クリエイターが応募。人選の際には、応募者の人種やジェンダーなど個人的な情報を非表示にできるオプション機能がある。ポートフォリオに書かれたスキルや経験だけを閲覧し、企業側が無意識に偏見の目を持たないようにするのが目的だ




Photo by Girlgaze

 登録企業に名を連ねるのは、ナイキ、アドビ、リーバイス、グーグル、グッチ、テスラといった大企業から、女性起業家が立ち上げたデートアプリのバンブルに、米アパレルメーカーのアーバン・アウトフィッターズ、老舗時計メーカーのシノラなど若者世代に人気のブランドまで。

 プロジェクトの例も見てみよう。たとえば、リーバイス。個々の分野で活躍する女性たち4人に焦点をあてたショートフィルムシリーズ「#IShapeMyWorld」では、ガールゲイズ・コミュニティから4人のディレクターを抜擢し、#MeToo運動創始者のドキュメンタリーなど4本の作品を制作した。

 また、今年3月には、ダヴと大手ストックフォト会社ゲッティ・イメージズがガールゲイズと提携し、プロジェクト「#ShowUs(#美しさって?)」を実施。広告やメディアにこびりつく“美の基準”を払拭するため、世界各国から選ばれた人種も体型もさまざまな被写体の写真を集め新たなフォトライブラリーを作成、「美」の再定義をおこなった。同プロジェクトに参加した400人のフォトグラファーは全員ガールゲイズからの採用だ。


筆者もガールゲイズ・ユーザーなのだが、他のありきたりなキャリアネットワークサイトとは違い、ガールゲイズのポップでカラフルな仕様には気分も上がる。
仕事探しをしていることを忘れてしまうほどたのしい。

 大手企業や有名ブランドがコストをかけてまでガールゲイズに登録している理由には、昨今の企業において、女性に焦点を当てた広告やプロジェクト、プロダクトが急増している背景がある。ナイキはアスリート用のスポーツブラやイスラム教徒のプロ女性アスリート向けのヒジャブなど、女性に特化した商品開発に注力。さらにゲッティ・イメージズは、パワフルな女性たちの写真イメージをストックするコレクションを立ち上げた。女性をターゲットにした商品やプロジェクトがいままでになく溢れる現代社会だが、依然として「約7割の女性がメディアや広告が描く“女性像”に違和感を感じている」。

 女性による女性像を、あらためて世に打ち出したい。社会、社会を動かす企業、企業のブランドイメージを作り出すクリエイター、そして企業を支える顧客のニーズが合致したいま、「Representation Matters(表現・描写は超重要だから)」と叫ぶガールゲイズの“女性の視点”は必要不可欠なのだ。


Photo by Girlgaze

Eye Catch image via Girlgaze Official Website
Text by Haruka Shibata
Content Direction & Edit: HEAPS Magazine

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