アンティークの挿絵を蘇らせる「デコパージュのガラス皿」専門店
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D.I.Y.が流行をみせてから、特に女性に人気の「デコパージュ」。手芸の一種で、紙に描かれた絵を切り抜いて家具などに貼付けて上からニスを塗り、仕上げる(イタリアの職人が日本の漆工を真似て作ったのがはじまりらしい)。
ニューヨークの街角にも、デコパージュを施す店がある。Kaas Glass Works、「アンティークを蘇らせるデコパージュの店」と呼ばれる、小さなデコパージュ専門店だ。

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スキャナとフォトショップでデコパージュ

 ガラスにアンティークの切り絵を挟み込んだデコパージュをつくる、という発想を生んだCarol Kaas(カロル・カース)と、その夫、Chris Kaas(クリス・カース)。二人の店を訪れた人は必ずこう言う—、”Full of Wonder(不思議がいっぱ い)”。マンハッタン、ダウンタウンのペリーストリートという通りに、Kaas Glassworksはある。大きな窓ガラスから中をのぞくと、かわいくてどこか少し奇妙なガラス皿が、小さなものから大きなものまで店中にあふれている。まるで異世界のようなその空間へ繋がる、鈴の鳴るドアを開ける。

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 オープンしたのは10年前。カロルとクリスは、店の向かいに小さな部屋を借り、2枚のガラスの板にデコパージュを挟み、いそいそと絵皿をつくっている。すべての過程が手作業だ。ガラスの間に挟むデコパージュには、すべてアンティークやヴィンテージのイラストを使用。
 オリジナルのイラストはかなり古いので、汚れていたり破けていたりと非常に脆い。くわえて、色が褪せていることがほとんどだ。そのため、ガラスに挟み込む過程に耐えられず、色 鮮やかな美しいガラス皿をつくることができないのだが。
 そこで活躍するのがスキャナとフォトショップ゙。スキャナでイラストをスキャンして取り込み、カロルがフォトショップで色を再現する。時々、彼女のセンスでイラストの配所をがらりと変えることも。

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 そうして“魔法”をかけられて 生まれ変わったイラストテを印刷し、丁寧にガラスに閉じ込める。「一枚の皿をつくるのに、数日はかかるわよ」。 イラストに傷をつけないように、慎重につくっていく。カース夫婦によって、一度ガラスに閉じ込められたデコパージュは、永遠に色褪せることはない。

かわいいだけじゃ物足りない?

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 きのこ、骸骨、ちょっと変な貴族。 Kaas Glassworksのガラス皿は、ただかわいいのではなく、イラストに潜む奇妙さがスパイスを効かせている。
「昔から奇妙なものが好きなの。少し欠けているものに人が惹かれるように、この奇妙さがクセになるのよね」と、カロル。小さな違和感を潜ませるイラストを選ぶカロルのセンス が、人々を飽きさせない。店のあらゆる場所に置かれ積まれた皿に、同じイラストはほとんどなく、重ねられたガラス皿を慎重に一枚ずつどけていく度に、新しい皿に巡り合い、小さな宝探しに夢中になる。

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思い出のラブレターも閉じ込める

 カスタムメイドも可能で、それぞれの「大切にとっておきたいもの」で、オリジナルのガラス皿の制作依頼も受けつけている。たとえば、ウェディングの写真、大切な人からの手紙やカード。それらをガラスに挟みこんでガラス皿をつくるのだ。メッセージボードとして利用する人も多いという。
 デコパージュイラストのデザインのみも受けつけており、これまでに ウォール・ストリート・ジャーナル、ケイト・スペードなどに提供し、大きな話題を呼んできた。

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“Carol Kaas”。カロル自身が、ガラス皿の“完成”の印として、すべての皿に手書きで記している

 このガラス皿のアイデアは、昔の切り絵遊びから着想を得たという。
「10代の頃、周りがライブに行ったり、かわいい服を買いにいってる傍ら、私はひたすらアンティーク集めに夢中だった。暇さえあれば、童話の挿絵や古いインテリア雑誌を眺めふけって」。その頃の挿絵をためしにガラスに閉じ込めてみたらその美しさに「魔法を感じたの」とカロル。

 思いつきからはじまったガラス皿の店だが、いまは注文が絶えずビジネスは大きくなっているものの「ガラス皿をつくる作業は、自分と夫とで続けて行くつもり」と決めているそうだ。
 古くて美しいアンティークの挿絵を色鮮やかに蘇らせ、ガラス皿に永遠に閉じ込める。夫婦の魔法は、これからも訪れる人を魅了していくだろう。

Kaas Glassworks
kaas.com

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Photos by Kuo-Heng Huang

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