ドラッグ&ドロップだけで有名になったアーティストは、「鏡に取り憑かれた男」
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ネット上の写真を、ただドラックしてドロップし、並べただけのTumblrがアートシーンを騒がしているのはご存知だろうか。何日も何ヶ月も(あるいは何年も)ただひたすらの制作を横目に、ポップアートの本家、“コピペ”のアンディ・ウォーホルもびっくり、ペッとそのままにドラッグ&ドロップ。ただし、一つこだわりがあり、すべて「鏡」の写真だ。
「“鏡”に取り憑かれたのさ」。男の名は、Eric Oglander(エリック・オグランダー)。

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 アメリカの都市では誰もがご用達の「クレイグスリスト」。どんなものかというと、物販、求人、不動産が主要な最大手クラシファイドコミュニティサイトだ。個人がモノを売りに出し、何でも手に入る(ペットや売春まであったり…。と幅がものすごく広い)。

 その売買目的でポストされる超大量な“鏡の写真”から気に入ったものを選出、自分のタンブラーやインスタブラムへとポストしていくだけのプロジェクトが、“鏡に取り憑かれた男”、エリックによる、話題沸騰の「Craigslistmirrors(クレイグスリストミラーズ)」だ。

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 ドラッグ&ドロップしただけ。ただし、そのスタイルだけで注目を浴びているわけではない。

「鏡にはあらゆる“意外性”が映り込むんだ。映り込んでしまった、というのが正しいかも。

クレイグスリストのは特に、売買目的だから面白い。売ろうと思ってスマホやらなんやらで写真を取るだろう?そこに人が映り込んだり、家の中が映り込んだり。撮った本人が気づいていないところで、プライバシーが暴露されてるなんてこともある。偶然美しいものが映り込んでいることもある。

適当に鏡を置いてただ商品として撮っているのだろうけれど、鏡だからね、そこには“コントロール外”のものが映り込んでいるんだ。

それが面白く、美しい」と、鏡だけを選び、並べる意図が潜む。

『Craigslistmirrors』より
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 このプロジェクトはまさに手先の単純な運動のみによって制作されているが、侮るなかれ。アーティストとしてのバックグラウンドは生粋だ。テネシー州、ナッシュビル生まれ。郊外にある森の中に、両親自らで5年という歳月をかけ、建て上げたアトリエ兼住居にて家族4人で暮らす。父・母・兄ともにアーティストで、幼い頃より創作活動に勤しんできた。

「『craigslistmirrors』を始めたきっかけ?事故みたいなものだよ。アーティスト活動をしようとNew Yorkにきて、制作活動もしていたんだけど、クレイグスリストを見てたまたま鏡のセクションを見たら、ハマっちゃったんだ。いまは、一日中クレイグスリストの鏡を睨めっこだよ。時間を無駄にしてると思うことが何度もあった。でも、ただの“鏡”の画像を並べたものが突如として多くの人の目を引いたんだ。あんなに時間をかけてた彫刻を置いといて、だよ。ある種の皮肉だろ?」
と笑う。

エリックの自宅の鏡。

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 注目されるきっかけとなったのは、芸術評論家 Jerry Saltz(ジェリー・サルツ)のたった一つのツイートだった。

You wanna see a great artist? 100 new possible genres. I give you Mr. Craig S Liszt: http://bit.ly/1hy0ghY (ht G. Garcia-Fenech.)
素晴らしいアーティストを知りたいって?私が紹介するのは、「Mr. Craig S Listzt」だ。

 一夜にして、“craigslistmirrors”はアートワールドにセンセーションを巻き起こした。しかし、当の本人はどこか冷静に繰り返す。

「本当に事故みたいなもの。craigslistで“Shit(クソみたいな)”なものに時間を浪費した結果だよ。アイデアはただただシンプルだった。何日も費やし創り上げる“アート”と呼ばれるものが埋もれていく一方で、ただコピー&ペーストし並べたものにこれほどまでに反響を得られたのは興味深いよ」

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「2,000〜3,000枚あるイメージの中から、1枚使えるものがあればいいくらい。でもまだパソコンには1,000枚ほどのストックがある」。一体どれほどの時間を“Shit”に費やしてきたのか。

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昨年にはニューヨークZINEカルチャーの動脈、レレ率いる8ball zinesよりTri-Mirrorを出版し、今年3月には某大手出版社より、写真集の出版を控える。また、2月末よりロンドンはsoho revue galleryにてエキシビションも開催予定だ。

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Tri-mirror。開くとミラーコート紙、予期せぬものが映り込むようになっている。

「予期せぬ・意図せぬ・偶発的に現れるモノこそが”アート”だと思う。言い換えれば、”アート”を作ろうと意図されていないモノこそ、面白いんだ。たとえばアートバックグラウンドのない人がたまたま作るオブジェクトだったり、道端に落ちてるモノだったり。

“inadvertent beauty(意図せぬ美しさ)”に立ち会う瞬間を追い求めているんだ。そして、それをどんな方法でも発信する。それが、人間の手の及ばないアートを、世に見せる一つの方法だと思う」と話す。

 craigslistmirrorsに並ぶ鏡の向こう側には“意図せぬ”モノがひしめく。念のためもう一度言うと、これら写真はあくまで販売目的で撮影された数々で、芸術的に意図した写真でない。

 いまはアートスタジオに行き製作活動に勤しむことよりも、路上で見つける意図せぬ美しさに重きを置いているという。

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“middle-finger to MFA programs”(アート学位なんてくそくらえ、さ)
 しっかりとしたアートバックグラウンドを持ち、ハンサムで物腰柔らかい彼からの“予期せぬ”言葉に驚いた。その表情は、なんとも清々しかった。

Eric Oglander
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Interview Photos by Kohei Kawashima
Text by HEAPS, editorial assistant : Shimpei Nakagawa

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