起業家、異色のファッションクリエイター
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次々に斬新なデザインを提供し、アパレル業界をあっと驚かせてきた革新者がいる。ニューヨークを拠点に、パターンの外注代行、デザインコンサルティング、縫製、テキスタイル販売、エージェント業務などを手がける「oomaru seisakusho 2」の代表、大丸隆平。顧客にはジェイソンウー、スノ、オープニングセレモニーなど有名ブランドが名を列ねる。ミシェル・オバマ大統領夫人が着用していたことで話題になった、トムブラウンのコレクションも大丸が手がけている。世界に通用する高いクリエイションと斬新なアイデアはどこから生まれるのだろうか。大丸の“ものづくり”の哲学に触れる。

大学は将来に繋がるのか 福岡県で生まれ育った大丸。祖父の時代から続いている木工家具屋「大丸製作所」の長男として生まれた。10代後半の多感な時期に、大丸は自身の将来について考えはじめたという。高校へ進学したあと、入学したばかりだというのに、周囲から聞くのは、「どこの大学に行くか」という話。大学への進学が自身の将来にどう繋がるのか、それが本当に良いことなのか、疑問を覚えた。「当時、私なりに将来のことを真剣に考えたんです。人生の中で不要なものを省いていった結果、高校には行かなくなりました」。長男である大丸には高校、大学を卒業し、家業を継いで欲しいと両親は考えていたが、当の息子は高校中退を本格的に考えはじめていた。家族と話し合う度に非難されたが、大丸は周囲の意見を押し切って高校を中退をした。「家業を継ぐことの重要性が理解できていなかったんですね」と大丸は振り返る。

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祖父が残したもの、ものづくりの原点に気づく 中退後は、アルバイトに明け暮れる日々を過ごした。当時バイト先の周辺には古着屋が多くあり、その店主や客と情報を交換するうちに、徐々に服に興味を持ちはじめた。ちょうど同じ頃、“ものづくり”の意味をはじめて考えさせられるできごとがあった。それは祖父の死だった。当時18歳の大丸が、ふと祖父の仏壇の下に置かれた小さな台を見ていると、家族から「それは、おじいちゃんが職人としてはじめてつくったもの」と聞かされた。この時、「作者が亡き後も作品は残る」という事実に、大丸の心が震えた。「“ものづくり”には真実がある」。祖父から受け継いだ“ものづくりDNA”が大丸の中で目覚めた。

 そして大丸に、「自分で洋服をつくってみたい」という思いが芽生えた。周囲に自身の服づくりへの憧れをもらすと、杉野先生という女性が開いている洋裁教室に通うことを勧められた。生徒は主婦がほとんどで、若い男性は大丸一人だったという。「かわいがってもらいましたね。男が一人でやってきて、服をつくるのに夢中になっている姿が珍しかったんだと思うんです」。高校を中退したことで周囲と対立していた大丸を認め、褒めてくれる唯一の存在だった杉野先生。彼女からは洋裁以上に大切なものを教わった。当時、大丸にとって彼女は「たった一人の信じられる大人」で、その存在は、凍っていた彼の心を次第に温め溶かしていった。その後、本格的に洋服づくりを学ぶため東京の服飾専門学校「文化服装学院」に進学した。

 同学院アパレルデザイン科へ入学し、服の構造を知り、デザインを描いて、パターンをつくる。これらのすべてを知って、自由な服づくりができると考える大丸。「デザイナーやパタンナーなど服づくりを部分的に担う職業にこだわるのではなく、ただ純粋に(すべての行程に携わって)“服”をつくりたかった」。卒業間近になり、就職活動をはじめようとするが、学歴も当てもなく、今一歩踏み出せなかった時期に、胸のうちを杉野先生に相談した。「独立するにしても、一度プロとして企業に所属して働いた方がいい。1社だけでも自分が信じた企業を受けてみたら?」とアドバイスをもらった。大丸は迷わず、パリコレクションでラインを発表している、有名メゾンを志望した。見事、希望通りの企業に入り、大丸はパタンナーとして約6年間務め退職した。

ビザなし無職。それでも日本には帰らない その後、日本で約1年間フリーランスで活動していた頃、デル・バンコ一族が持つオリジナルランジェリーブランド、PHIの誘いを受ける。当時、斬新な試みを求めるPHIは世界中のクリエイティビティの高いデザイナーやパタンナーに声をかけていた。新進気鋭なクリエイターたちと新しい挑戦ができることに「面白そう!絶好のチャンスを逃すまい」と二つ返事で承諾し渡米を決めた。しかし、人生はそう甘くなかった。渡米後に弁護士から「就労ビザが取れない」との報告を受けた。就労ビザなしでは米国では働けないため、誘いを受けたPHIには就職できず、いきなり無職になった。大丸の人生は一転した。しかし、日本へ帰る選択肢は彼の中にはなかった。大丸が掲げるポリシーの一つに「恐怖心を克服する」がある。「来米当時の私にとって米国は未知の世界で、“怖い”存在だったんです」。だからこそあえて、大丸は日本には帰らず米国に残って挑戦すると決めた。「弱い自分に打ち勝ち、前へ進みたい。そして新しい世界を見たい」

 しばらく合法的に米国に滞在するために、学生ビザを取得し語学学校に通いながら、時々友人に頼まれては服をつくる日々を送った。そんな折、人づてで偶然にも、大丸の名がニューヨークを代表するブランド、ダナキャランニューヨークのデザイナー陣の耳に入り、オファーの声がかかった。英語での面接には苦労したが、「とにかく洋服を3着つくってきてください」と指示を受け、慌てて100ドルでミシンを購入し、こつこつと仕上げた。1週間後、「『英語を理解していないけれど、服はつくれる』と分かってもらえて」採用された。渡米してから1年、遂に米国で働けることになった。「結果がすべて」。厳しい世界だが、実力のある者はきちんと認められる米国社会。世界に通用する腕を大丸はその手にしっかりと持っていた。

 2年後、日本と海外での就職を経て、生活も落ち着きはじめた頃、大丸に日本人としての意識が強まりはじめた。そして、何のために“ものづくり”をしているか、改めて考えるときをも迎えた。日本人は高い技術で、基本に忠実な“キレイ”なものをつくることができる。しかし、その先のクリエイティブさやアイデア、遊びが足りない。「世界で活躍する日本人デザイナーが開拓していった日本人のクリエイションの幅を、次世代の私たちが引き継いでいかなければならない」。大丸は、日本の“ものづくり”の精神を継承し発展させ、世界に広めていく使命感を覚え、2008年「oomaru seisakusho 2」を創業をした。「日本人が世界を舞台に“ものづくり”を通して社会貢献できる環境をつくりたかった」。ただの企画ではなく、パターン、デザイン、縫製なども担い、総合的なプロデュース力で世界と勝負できる場所を大丸は求めた。10代後半の頃、家業を継ぐことを理解できず反発した大丸が、迷わず選んだ社名は、祖父と父から受け継ぐべき「大丸製作所」だった。

 立ち上げ当初は彼の腕を活かせる仕事はもらえず経営には苦労した。銀行から資金を借りることもできず、従業員への給料や経費はすべて自身の貯金から支払う状態で、経営破綻の危機が常に目の前にあった。広告の効果も乏しい。大丸が背負ったものは大きかった。しかし、大丸の行動力はここでもいかんなく発揮された。ニューヨーク中の縫製工場へ通い、パターンも考え方とつくり方次第で製造効率も上がり、服の仕上がりも大きく変わることを直接伝えて回った。「面白い日本人がいる、腕は確かだ」と縫製工場からデザイナーなどファッション業界の人々へ伝わり、大丸の元に徐々に仕事が舞い込むようになった。

目指すは、幻想的なポジション  創業してから6年、高い技術と創造力で、今では多くのデザイナーから厚い信頼を得て、次々に新しいクリエイションを生み出している。約15人、すべてのスタッフが日本人で成り立つクリエイター集団「oomaru seisakusho 2」は、まさに“日本のチカラ”で世界を切り開いている。「変幻自在でニュートラルな状態が弊社の目指すものです。『私たちの色はこれ』と独自のセンスを強く持つデザイナーと私たちは異なります」。新しいものを生み出すために、ある時はパタンナーになり、またある時はデザイナーと企業を繋ぐディレクターになったり、「常に柔軟に七変化する会社でありたいですね」と語った。祖父と父の「大丸製作所」は木工家具づくりから服づくりへと変化を遂げ、ニューヨークで「oomaru seisakusho 2」として“ものづくりの精神”を継承している。

 ニューヨーク・ファッションウィークでお披露目となる各ブランドのリゾートコレクション。大丸は今大注目のニューヨークブランド、パブリックスクールにコンサルティングからパターン、サンプル、量産などすべてのプロセスを任されている。「一人でできることには限界があるけれど、力を合わせることで想像を遥かに超えた新しいものを生み出せる。これからも刺激し合えるクリエイターの仲間をどんどん増やしていきたいですね」。洋服のライン、前衛的なデザイン、絶妙なカッティング、構築的な仕立て。魂を揺さぶられるような芸術作品ともいえる。「誰もまだ見ぬ、新しいものをつくりたい」と、純粋な思いがこれからも大丸を突き動かしていく。

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oomaru seisakusho 2, inc
oomaruseisakusho2.com

Photo by Kuo-Heng Huang
Writer: Elie Inoue

掲載 Isseu 15

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302 Responses

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