流行中。知らない家で「赤の他人と晩ご飯」
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素人シェフを生む、Feastly。 このご時世、シェフに資格は不要?

 世の中には、ざっくり分けて二つのタイプが存在する。ホームパーティーやイベントを企画して「おもてなし」をしたいホスト側の人と、もっぱらゲスト側の人。押しも押されもせぬ後者である筆者は、ホスピタリティ精神あふれる「おもてなし」に感服し、「美味しい」と残さず食べてお返しをする。

 さて、そんなホスト側とゲスト側、双方にとって興味深いFeastly(フィーストリー)というウェブサービス。Airbnbの「食事版」と注目を集めている。創設は2013年、ワシントンD.C.ではじまった同サービスは、現在、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコを加えた全米4都市で稼動中だ。

サービス開始直後から、「旅行客と地元民を繋げ、従来の旅スタイルに一石を投じる」と、ビジネスとしての評価は高かった。事実、Feastlyの創始者ノア・カレッシュは、グアテマラを旅していた際、路上にいたアボカドの売り子に「リアルな家庭の味が楽しめるレストランを教えて」と聞いたところ、その人の実家に連れていかれ「母の手料理」を振る舞われたことから、このビジネスを思いついたそう。そのFeastlyのシステムはこうだ。まず、ウェブサイトに登録したFeastlyシェフたちが「○月△日、ブルックリンの◇◇エリアにある自宅で、こんなFeastlyを開催します」とサイトで告知をする。
 すると、会員メンバーたちは、そのFeastlyの内容、つまり、シェフのプロフィール、コース内容、値段などを閲覧することができ、リストの中から気になる会食に参加するという仕組み。

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 旅行者だけでなく、大都市ニューヨークには、ビジネス出張や転勤などいつでもこの街とは無縁の“新参者”がいる。Feastlyは、そんな人たちと住み慣れたローカルの人々を繋ぐ「ソーシャルの場」として機能しているのではないか、と予想していた。しかし、実際にニューヨークのFeastly、五つ程に参加してみたところ、参加者は旅行者よりも、圧倒的に地元のニューヨーカーが多かった。

「いつもと違う外食を楽しみたくて」と口を揃える参加者たち。どうやらサービス利用者からは、レストラン以外の「外食の新たな選択肢」として、注目を集めている模様。

“知らない家で知らない人と食べる”がミソ

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 ニューヨークには星の数ほどレストランが存在する。だが、それでも人々は「もっと新しい体験を求めている」のが面白い。考えてみれば、“初めての店”を訪ねてみても、席に案内されて、メニューを開き、オーダーして食事、そして会計して帰る、というレストランで体験するプロセスそのものは、ハイエンド、カジュアル問わず、ある意味どこに行っても同じだ。ひょっとすると、どこかそんな予定調和に飽きているのかもしれない。

 一方、Feastlyの場合、まず行き先が「誰かの自宅」(もしくは、イベント会場の場合も)というプライベート感覚がワクワク感をそそる。しかも、見知らぬ人と一緒に食卓を囲むというのも新鮮だ。となると、「どんな人が来るのか」も気になる。ホームパーティと似ているようにも感じるが、最も大きな違いは、それが遠かれ近かれ「共通の知人の集まりではない」ということ。よって、妙に話題に気を使う必要もない。実際に参加してみたところ、年齢層はアラサーからアラフォーがコア。お一人様から、友人や恋人連れ、夫婦で、と参加スタイルは様々だった。

 出会い、繋がり、新鮮な会話…。集まる唯一にして最大の目的は「食事」なのだが、結局、利用者の心に響いているのは、この「料理+α」のエンタメ性ではないだろうか。もちろん、シェフの過去のレビューや写真をみて「美味しそうだから」参加を決めたというが、みんなが食通かというと、そうでもない。財布のヒモは固いけれど、「ワクワクするモノやコトにはお金をだしてもいい」。そんな現代人の心理にも呼応しているように思えてくる。

年収700万円稼ぐ「自宅シェフ」

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 サービス利用者が、新しい体験に期待を寄せる一方、食事会の主催者であるシェフ側にはどんな期待があるのだろう。Feastlyの登録シェフは、素人から高級レストランのシェフまで、そのキャリアは様々。プロフィールを見ても、輝かしいシェフ歴をアピールするものもいれば、「本業はフォトグラファーです。料理の資格はありませんが情熱はあります。みんなで食事を楽しみましょう」とカジュアルなものまで幅広い。そして、メニューの内容、金額、開催日など、決定権はすべてシェフ本人に委ねられる。金額設定の下限も上限もなく、無料から250ドル(約3万円)を超えるものまで存在する。

 こんな自由が、レストランのキッチンの世界にありうるだろうか?非常に濃厚な師弟関係が予想され、厳しい世界だと聞く。「三年経っても包丁すら握らせてもらえない」。そんな料理人が、Feastlyの話しを聞いたらどう思うだろう。ちなみにFeastly情報によると、なかにはFeastly一本で生計を立てているシェフも存在し、年収にして6万ドル(約720万円)クラスの者もいるという。もちろん「あくまで趣味」として楽しみ、副収入目的ではない者も多い。そのほか、ケータリングビジネスの宣伝のためや、将来は自分の店をオープンしたいと、利用用途にも自由がある。

 などなど、心躍る「可能性」を挙げたら切りがないFeastlyだが、十分な参加者を集められるか、リピーターを掴めるかもホストであるシェフ次第であることを忘れてはならない。ウェブサイトを見ても、開催日の約一週間前から「SOLD OUT」になっている人気シェフもいれば、人数が集まらずあえなくキャンセルせざるを得ないシェフがいるのも事実だ。自由にはいつも責任が伴うものである。

見知らぬ人だらけの会食

「自宅に見ず知らずの他人を招くというのには、やや抵抗がありました」と話すシェフは、マンハッタンのマンションで一人暮らしをするミッシェル。昨年のサンクスギビングに初めてFeastlyを開催した彼女。動機は、「きっとマンハッタンには、仕事の都合などで帰郷できず、一人でサンクスギビングを過ごさなければならない人も多いのではないかと思って」という。結果、12畳ほどのワンルームの部屋に15人もの人が集まった。だが、人が集まるにつれ、一抹の不安も。
「そういえば、バスルームに化粧品や香水など置きっぱなしだ。盗られたりしないだろうか」。だが、幸いそんなことは杞憂に終わったという。以降、月1、2回ペースで開催しているそうだ。「参加者は、良識あるオトナの人はかりなので、いまのところトラブルはありません」と話す。

さて、実際に、Feastlyシェフたちは、どんなことをモチベーションに楽しんでいるのだろうか。

それぞれのフルコースを堪能しながら聞いてみた。

記事、いまどき、男もフルコース

Wrier: Chiyo Yamauchi

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