“テクギーク”は、「人声」まで作る!?【SXSW2016 大予想】
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大予測!来年はこいつらが来る! sxsw 2016

2007年にはツイッターを世に出し、2009 年にはフォースクエアを生み出したSXSW Interactiveは、いまや「近未来予想イベント」「最新技術の登竜門」と化し、片時も目が離せない。今年2015年には、スマホ用のライブストリーミング・アプリ「ミーアキャット」がSXSWで発表されるや、わずか10日で全世界に拡散。久々の大ヒットプロダクトとなった。さて、来年は何が飛び出すのか?早くもSXSWは2016年に向けて始動している。

ギーク×医療は「人声」すら作れる

ギークx医療P2

 来年のパネルセッション提案応募は去る7月24日に締め切り、Interactive部門は4,000件の申し込みが殺到した。主催者側では、8月10日から9月4日までの26日間で、これを1一般投票2諮問委員会(IT業界の専門家で構成)による審査3経験豊かな大会スタッフによる審査の3選考プロセスにかけて参加提案を決定する。つまり、この難関を突破してSXSWの出展資格を獲得すれば、既に業界から相当な「お墨付き」を得たことになり、成功への切符を手にしたも同然なのだ。

いい換えるとSXSW Interactiveの動向を見れば、最新テクノロジーやそれらを活用した新しいビジネスアイデアが一目瞭然。未来をいち早く見たい人々や未来に投資したい人々の関心は自然とSXSW2016がどうなるのか?に集中する。本誌HEAPSがSXSW Interactive事務局長のヒュー・フォレストから入手した先取り情報を元に2016の輪郭を探ってみる。

「いまの段階で2016の予想を立てるのはとても難しいが」と前置きしたヒューだが、「勢いのある部門はある」という。たとえば、Helath & Med-Techsつまり「健康と医療技術」部門だ。今年から新しく立ち上がったジャンルだが、イベント最大の目玉の一つでプロダクトのコンペでもあるInteractive Innovation Award同部門ではVocaliDという合成音声のプラットフォームが受賞して話題をさらった。声帯切除などで声を失った人が使う「合成音声」に個性を与えるのが目的で、患者が持っていた声のピッチや大きさを正確に計測し、そこに世界中から集めた「声のコレクション」を混ぜることで、その人らしい声を作るという素晴らしいプロジェクトだ。「ギークたちのノウハウが医療技術に導入される傾向は来年もさらに強まると思う」とヒュー。これに呼応する形で、地元テキサス大学オースティン校にはITと医学の融合を目指す新しい医学部が今秋から新設される。

次世代、司令塔は「メガネ」

司令塔はメガネ

 また、「仮想現実」と「拡張現実」の部門は、来年、爆発的に盛り上がるとの予想がある。ゲームや次世代映像エンターテイメントの中核となってきた両者には、イベント後半に2日を割いて発表 機会を与えるそうだ。アップルウォッチで一般社会にもすっかり浸透した感のあるウェアラブル・デバイスの部門も相変わらず成長率がいい。今年のInteractive Innovation Awardのファイナリストでは、瞳の動きで司令を飛ばせるメガネ、サーファーがベストの波をとらえるための装着アプリ、バスケットボー ルのシュートを記録する腕時計型デバイスなどスポーツ・健康関連のウェアラブルが目を引いた。

「優秀賞に輝いたプロダクトは、フィットネス中に便利な耳掛け型ワイヤレスヘッドホーンでした。スマホのアプリと連動し、音楽だけでなく心拍数や運動量なども音声通知する機能が搭載されているんだ。わずらわしいコードから解放された上にパーソナルトレーナーが耳元で指導してくれる感覚はクールだよね」とヒュー。この分野でも、医療機器とのコラボ、あるいは障害者に優しいプロダクトが注目されているそうだ。

首相、元大統領、議員がこぞって参加する祭典

首相元大統領P2_1

 モノのインターネット(Internet of Things=IoT)は、ブロードバンド普及の追い風を受けて、いよいよ本格的に実用化が進んでいる。大手自動車メーカーなども本腰を入れて取り組み始めた。SXSW2015のInteractive and Innovation Awardの同部門では、オーストラリアのイノベーターが出展した「サメの接近を探知/報告するブイ」が受賞している。単一の海水浴場のサメ被害防止はもとより、全豪州の海岸からインド洋の海岸まで地球規模でサメたちの動きを把握できるダイナミックな発想が評価されたようだ。ありとあらゆる生活用具が自ら情報を発信する時代が近づく中、「SXSWでは、この技術の進歩にともなって今後発生すると思われるプライバシー保護とセキュリティーの問題にも関心を寄せています」とヒューは話した。

 実は2015年のSXSWには、アイルランド共和国のケニー首相やメキシコの元大統領そして30人以上の米国下院議員が参加している。つまり、政治や行政の世界でも放っておけないイベントとなっているのだ。特に、都市生活ではますますITが不可欠となり、しかもエネルギー消費の節約や環境に優しいテクノロジーが求められている状況の中で、SXSWの出展プロダクトのなかにも都市公共交通の情報アプリやスマートグリッドのような個人ベースでエネルギーの選択・管理を可能にするデバイスが増えつつある。

2016年、機械の人間化へ

機械の人間化P2_1

 また、参加者の国際化は2016年にはさらに進むとの予想だ。日本からの出展は、決して多いとはいえないが、東京大学の在校生/卒業生で構成するTodai to Texasのグループが、質の高い出展で評判を呼んでいる。たとえば、自律飛行機能を備えたドローン、スマホと3Dプリンターを活用して制作コストを2万円台まで下げたハイテク義手。地面に刺すだけで土の水分状況や雨量を計測できる農業用のセンサー。超音波スピーカーで小さな粒を空中に浮かべて映像を作る立体ディスプレイ技術など優れたハードウェアの提案が多く、これはソフトウェアが多数派を占めるSXSWでは歓迎すべき傾向。「さすが、もの作り日本」と主催者も来年への期待を募らせている。

 音楽フェスから始まり、いまや世界最大のITフェスに成長したSXSWは「テクノロジーのパリコレ」と謳われているそうだ。確かに流行という点では表面的にはファッションに似ていなくもない。ただ、つぶさに観察すると、そこには単に目先の新しさを誇示するだけではなく、不可能なことを可能にしようとする人類普遍のロマンの存在がある。イベントに参加する数万人のギークたちが目指すのは、売れる商品を開発することよりももっと大きな夢、世界のあり方を変えることなのだろう。Interactive and Innovation Awardも今年で18回を数えるという。授賞式がアカデミー賞なみに定着してきた成熟期を迎え、いま緩やかに起こっている医療技術との連携、健康維持用のウェアラブル・デバイス提案、都市生活のサポートアプリなどに共通するのは、生活密着型かつ人間回帰型の発想である。最新技術で世界が一つにつながり自由な交信を喜び合う時代はとうに終わっている。いまは、その技術をいかに日々の生活に活かし、機械を人間化し、ひいては人間的な人生をどうやって回復するかを考えるときなのだ。そういう意味で2016年のSXSWでは、さらに弱者や困窮者に優しいプロダクトが出展されるのではないかと期待してやまない。

Writer: Hideo Nakamura

 

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