「ルーツ」が教えてくれる 海外志向より大切なもの

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「Deep Further、日本を日本たらしめる文化や歴史に深く潜り込む。そうすると、『もっと知りたい』が加速して、何もかもが日本とつながりを持つようになる。そしてそれを、他者に知ってもらいたくなるんです」 そう話すのは、ニューヨークで行われる日本のイベントやビジネスサービスを紹介するブログサイト「JapanCulture・NYC」を主宰するスーザン・ハマカー。

日本を知らないニューヨーカーへの情報バンクとしてだけではなく、日本好きやニューヨークに暮らす日本人のコミュニティ強化にも一役買っている。彼女を訪ね話を聞いていると、「日本人として、まずは日本のことをもっと知らねば」と強く感じる。「個」を武器に海外を目指したとしても、他者はまず、「日本人」としての私たちを見る。だからこそ知っておきたい。いま、ニューヨーカーは日本の何に注目しているのか。ネタあってこそのコミュニケーション。いざ、スーザンと一緒に日本解体。

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胃袋を制すもの、ニューヨーカーを制す。

すし、ラーメン、日本酒。さて、その次は? 2013年、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。ニューヨークでは40年以上も前から、すしをはじめ、天ぷらや蕎麦がニューヨークの食文化に彩りを添えてきた。これからは「日本食はレストランで楽しむもの、ではなく、カレーのように家庭でも普通に調理されるものになる」と読むスーザン。

市内には、創業107年の老舗「片桐商会」をはじめ、日本食材のスーパーマーケットが年々、店舗を拡大。さらには、これまで「日本食=ハイエンド」であったが、居酒屋スタイルの大衆料理が台頭し、「ニッポンの味」になる日の近い? 伝統を守るために変化を恐れない Made in Japanがまだ、強いワケ 「伝統を重んじることと、変化と向き合うことは表裏一体」とスーザン。

伝統は常に新しい、とはいったもの。恐れずに現状と対するからこそ、打破のために精進し、それが技術革新につながる。そのループが、「Made in Japan=高品質」という式を生む。米国では、1980年代から貿易摩擦を発端にしたJapan bashing(日本叩き)から、Japan passing(日本軽視)、Japan nothing(日本無視)までネガティブな風潮があった。しかし、失われた20年を克服するかのように、米国内でも近年、新幹線技術をはじめとした「新生・Made in Japan」があらたに頭角を表しはじめている。

「和の精神」だけじゃない新しい価値観に「MOTTAINAI」

2005年、ノーベル平和賞をアフリカ人女性として初めて受賞したワンガリ・マータイさんが提唱した「MOTTAINAIキャンペーン」。環境問題への取り組みに積極的な国や地域では馴染み深いニッポンの智見だ。Reduce(ゴミの削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)という環境活動「3R」に、地球資源に対するRespect(尊敬の念)を込めた「もったいない」の精神。

侘び寂びや和といった美徳だけでなく、エコフレンドリーな街を目指すニューヨークにとって、「今後、広がっていく感覚や価値観だと思う」とスーザン。自然に対する畏怖感性と観察眼が生んだ言語の可能性 勉強するたびに、「日本語の奥深さに感動する」とスーザン。たとえば「木漏れ日」。木々の葉の間から優しく降り注ぐ太陽の光を指す言葉が、ドンピシャで存在する。雨が降る様子を表す、「しとしと」「ざあざあ」「ぽつぽつ」などの擬音語は、情景を浮かばせてくれる。「自然や四季の変化を敏感に感じ取る感性や観察眼があるからこそ、言語としての表現の幅が、こうも広いのだと思います」。

言語は文化そのもの。いま一度、何げなく使っている日本語の妙について、考えると「クールジャパン」が見えてくるはずだ。

japanculture-nyc.com
Photographer: Tomoko Suzuki
Writer: Kei Itaya

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